財利におぼれたる心より見る事きく事につけて
はやかく費の方に心のつく事色に迷ふもおなじ
欲心ながらかの男のいひけるやうに身のかざりに
若干の財をついやすは誠に無用の費なりむかし
もろこしに高官の人のむすめかんざしの見事にた
くみなるが価七十万銭なるありといはれければ
父聞て七十万銭はわが高禄の中より出す事
何よりやすき事にてこそのためにいかでおしか
らん然れどもかんざし一の価七十万銭なるは世
にあやしき妖物なりとて買あたへざりける其