命蓮上人像

朝護孫子寺所蔵
(奈良国立博物館寄託)

絹本著色
縦93.3cm×横38.1cm
室町時代(15世紀)

 命蓮は平安時代中期の僧で、信貴山の中興開山として知られる。『信貴山寺資財宝物帳』によれば、寛平年間(889–898)に幼くして信貴山に入り修行を重ね、六十歳を過ぎるまで山中に籠ったという。延長八年(930)には宮中で醍醐天皇の病気平癒を加持した事績が伝わり、飛倉をはじめとする奇跡譚を描く『信貴山縁起絵巻』でも広く知られる。
 本図の命蓮は、座具を敷いた礼盤上に右を向いて坐し、右手に水晶の数珠、左手に袈裟の端を握る姿で表される。画面左下には、多くの剣を鎧状に身にまとい右手に宝棒を持つ剣鎧童子が立ち、上方には龍が飛来する。剣鎧童子の造形が『信貴山縁起絵巻』とは大きく異なる点から、本作は諸書に伝わる命蓮伝を典拠としつつも、絵巻を直接の参照源とせずに成立したと考えられている。
 (参考|伊藤久美解説、『信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝』奈良国立博物館、2016)

命蓮上人像

命蓮上人像