兜跋毘沙門天王立像

朝護孫子寺所蔵
(奈良国立博物館寄託)

銅造 鍍金
像高 17.2cm
平安時代(10世紀)

 像高五寸余りの西域風の姿をした毘沙門天王像。伝来は不詳ではあるが、山崎長者の念持仏という寺伝がある。西域風の毘沙門天像は、四面宝冠をかぶり、裾の長い甲と海老籠手をつけ、二鬼(尼藍婆・毘藍婆)を従えた地点女が両足を捧げ持つ姿が一般的である。本像の両沓底には丸枘(ほぞ)を切り落とした痕があり、台座は後補のため、地天女と二邪鬼が附属していたかどうかは定かではない。
 本像は、頭頂から沓先までを一鋳とする。像内は空洞。腹部を斜めに渡る銅製の笄(こうがい)が残存する。頭頂および両脚間には開口部を設ける。両耳後ろと両掌に認められる小孔は、それぞれ垂髪(すいほつ)と宝塔をとりつけた痕跡とみられている。上背部の左右にも用途不詳の小孔がある。裾長の外套状の甲の小札文、腰当の宝相華文、尻当の鳳凰文などに毛彫りで各種文様があらわされている。
(参考|山口隆介解説、『信貴山縁起絵巻 朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝』奈良国立博物館、2016)

兜跋毘沙門天王立像

兜跋毘沙門天王立像