思ひうたかひて、 せんさいの中にかくれゐて、 かうちへいぬ るかほにて見れは、 此女いとようけさうして、 うちな かめて、 ○ほいのことく、 如本意。 此心は大刺ソシル也。 ○親なく ―― 女の親卒したる也。 九ノ云、 あれ共 なきほとにおとらふなり。 ○もろともに、 闕云、 零落したるとて嫌にあ らす。 女を男のいたはりて也。 大和物語に云、 津の国 難波に夫婦有、 わかれ、 京に女の宮仕したる例の文 法あり。 今世にもある事也。 ○けさうし、 仮粧也。 身をたしなむ事也。 ○ほいのことく、 本意也。 師云、 夫婦かたらひ年 比へて也。 有常、 無出頭にてあり。 甲斐なき体也。 ○もろともに、 有常の所を、 業平憐愍の心なる へし。 立別ハカレて業も女ももろともによき体に 成へしと也。 かうち国とは、 たかやすのこほ り。 河内国也。 高安也。 風吹は沖つしら波立田山夜半にや君かひとりこゆらん 心甚やさしき歌也。 女の手本也。 三ノ云、 高安 郡は、 龍田よりあなたと思ひやりてよむ。 龍田は、 高安の郡より此方也。 女委敷不分体尤やさし きと也。 竜田山と云まては、 枕詞也。 題昨万 (作分か) 定↓ 家尤