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真 字 伊 勢 物 語

 版本二冊。袋綴。26.8cm×17.8cm。墨付、上巻24丁、下巻32丁。
 白地に斜墨引き紙表紙。外題(刷、箋)。朱筆による校異あり。
 刊記「寛永廿癸未歳九月吉日/(二條通)沢田庄左衛門板行」。

 本文 

 いわゆる真名本(漢字ばかりで記された本)の代表的な存在である。主に「万葉集」「新撰万葉集」の万葉仮名に基づく。真名本には詩・聯句の語彙を提供する側面もあった。この本の刊行以後の伊勢物語の注釈書では、真名本といえば、この寛永二十年本から引用されている。契沖の『勢語臆断』では、本文校訂の一本として用いられ、今井似閑は『万葉緯』巻十三にこの本の注釈を書き入れ、賀茂真淵が『伊勢物語古意』において底本に採用するなど、真字伊勢物語は諸本中の重要な一本と認められるようになる。

 真名本の成立については、巻頭の「六条宮御撰」とあるのが、信じられてきたが、本居宣長が『玉勝間』で「六条宮御撰とはじめにあげたれば、その親王の御しわざかと見もてゆけばあらぬ偽にて後の物也。まづすべての字のあてざまいとつたなくして、しどけなく正しからず、心えぬことのみぞ多かる」と否定している。また品田太吉氏は『伊勢物語新考』において「仮名づかいを誤れる事は、本居翁の説の如し。鎌倉時代に書たるものなればなるべし」と述べている。

 鎌倉初期までの文献には伊勢物語真名本についての記述がみられないが、『河海抄』には多くの引用があり、真名本自体は南北朝以前の成立ではあると思われる。

(解説は文学部言語文化学科日本アジア言語文化学研究室のご協力を得ました)


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