奈良女子大学学術情報センター
 所蔵資料電子画像集   伊勢物語関係 

伊勢物語闕疑抄

写本二冊。袋綴。28.3cm×19.7cm。墨付、上巻79丁、下巻79丁。
 小松草花帆懸け舟下絵白茶色紙表紙。墨・朱による書入れ(同筆)あり。
外題「伊勢物かたり注抄下」(下巻のみ、左肩、後題箋)。
扉題「闕疑抄 上(下)」。

  本 文  翻刻付

  細川幽斎(1534〜1610)が八条宮智仁親王への講釈に際し、文禄五年(1596)二月、『愚見抄』、実隆・公条・実枝の三条西家流の伊勢物語注釈を集大成したもの。論語の「多聞闕疑慎言其余則寡尤(多く聞きて疑はしきを闕(か)きて、慎んで其の余を言ふ事は、則ち尤(あやまち)寡(すくな)し)」から名付けられたという。旧注の総決算として後の研究の礎となるとともに、古活字版、整版と版を重ね、江戸期を通じて、最も流布した注釈書である。

 本書、上巻奥書に、
  此闕疑抄 上下 両冊被許書写之間則染愚筆可謂此物語之奥秘者也不可忽之猶注下巻畢
 下巻奥書に、
  此闕疑抄 上下 幽斎老新作之処也旨趣見奥書予亦被草之時侍几下仍被免許書写深秘凾底莫出窓外耳
  慶長第二孟冬十五夜終功訖  也足叟素然四十二歳
  同十八日午剋全部一校朱点等了
  此抄 正本之草 幽斎玄旨自筆
  中書 宗巴法師
  清書 村牛孝吉 奥書 玄旨自筆
  外題 素然書之 同加朱点了
とあり、素然、則ち、中院通勝による校訂本の江戸時代前期写本である。

 大津有一氏『伊勢物語古註釈の研究』によると、幽斎の増補書入のあるもの(桃園文庫蔵本、高松宮家蔵本、京都府立総合資料館所蔵の法眼祐孝筆本、九州大学図書館所蔵の宇土細川家旧蔵本等)と、ないものとに分けられる由である。奈良女子大本は「首書云」「玄旨自筆首書云」とする書き入れが存し、幽斎の書入のある写本のなかでも、京都府立総合資料館蔵の中院通勝校訂、法眼祐孝書写本と同系のものらしい。なお、下巻末尾には、別筆で「文政三庚辰年八月上旬買得之上下二冊 大喜院慧乗」とある。

(解説は文学部言語文化学科日本アジア言語文化学研究室のご協力を得ました)


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