とかきて、 (世本そこに三字アリ) いたづらに、 なりにけり
第二十六
昔、 おとこ、 ありけり、 あはじとも、 いはさりける、 女の、 
さすがなりけるが、 もとに、 いひやりける
 〈古今恋三〉秋の野の (世本に) [朱一本] さゝわけしあさの袖よりも
あはてぬる夜そひちまさりける
色このみな [朱りけ] る、 女、 返し
 〈古今恋三〉見るめなきわか身を [朱の] うら [朱し] としられ○ (世○本○ね) はや
かれなてあまのあしたゆくゝる
 [頭注 此間ニ此一条ナシ
むかし、 男、 五条わたりなりける、 
女を、 ええずなりにけることゝ、 
わびたりける、 人の、 返事に
おもほえす袖にみなとのさはく哉
もろこしふねのよりしはかりに] 

第二十七
むかし、 おとこ、 女○ [朱人のむすめ] のもとに、 ひと夜はかり (世本はかり三字ナシ) いきて、 またも
いかず、 なりにければ、 女のおやはらたちて (世本おやはらたちて七字ナシ)、 手あらふ
所に、 ぬきすをとりて (世本うちやりて)、 なげすてければ、 たらひの
水に、 なく (世本水になく五字ナシ) かげの (世本に)、 見えけるを、 みづから

  われはかり物おもふ人はまたも○あらし
  とおもへは水のしたにも○有けり
とよめりけるを (世本よむをこざりけるおとこ)、 このこざりける、 おとこ、 (世本たち二字アリ) きゝて
  みなくちにわれや見ゆらんかはつさへ
  水のしたにてもろこゑになく
第二十八
昔、 いろこのみ、 なりける女、 いでゝいにけれは、 いひかひ
なくて、 男 (いひかひなくて男 世本此十字ナシ) 
  なとてかくあふこかたみと (世本に) [朱かたみとも一本] なりぬらん (世本にけん) 
水もらさしとちきりし (イ○むすひし) [朱一本] ものを
第二十九
む○か○し○ [朱二条后の]、 春宮の (世本女御の) みやす所と、 申ける時の、 御かたの、 花の
宴 (世本賀) に、 めしあけられ (世本あづけられ) たりけるに、 (世本此下ノ文ナシ) 肥後のすけなり
ける、 人
 [頭注 世本傍注
貞観十一年二月、 貞明親王
為皇太子、 于時高子為女
御、 依春宮御母号也、 去
年十二月廿六日誕生、 高子〈年廿七〉]