女をみやす所と申也。 ○氏神とは、 大原野也。 則
  春日也。 藤氏梁の神也。 春日社は四所也。 一の殿は、 
  武タケ 雷イカツキノ 命、 二殿は、 斉イハイ 主ヌシノ命、 三殿は、 天津こやね命、 
  四殿、 姫大神ヒメヲヽカミ、 天照の事也。 神護慶雲二年
  に三笠山に跡をたれ給ふと也。 〈引歌に〉鹿嶋よりか
  せきにのりて春日成三笠の山のうき雲の宮
  ○このゑつかさ、 左近衛権少将。 官に、 右近衛左近衛有。 
  ○車よりたまはる、 ある説に、 車より自宜に承り、 后
  の不義と云説、 不用也。 子細は今以ある事也。 奏者
  の女中あるへし。 大原の行啓なれは旅也。 貴人の
  人に、 物を被遣に心次第なるへし。

大原やをしほの山もけふこそは神代のことも思ひ出らめ
  是は、 神代に天照と天つこやねと御契約の君臣
  ありし。 それより、 今に関白家の潅項はある事也。 然者、 
  小塩山は春日也。 藤の栄て、 大臣の子孫后に立
  を神もさそ歓給はんと也。 師云、 風の歌也。 業と后との義也。 
とて、 心にもかなしとや思ひけん、 いかゝ思ひけん、 しらすかし。 
  或説に、 此伊勢物語の作者詞也。 但業平の心の事也。 
七十七
むかし、 田村の御門と申すみかとおはしましけり。 其時の
女、 たかきこと申すみまそかりける。 それうせたまひて、 
安祥寺にて見わさしけり。 人々さゝけ物奉りけり。 たて
まつりあつめたる物、 ちさゝけはかりあり。 そこはくの