鍾愛の孫女とは、 為家の女、 後堀河院民部卿典侍。 
  此人も歌人也。 又一本のおく書に、 
合多本、 所用捨也。 可備証本。 
近代以狩使事、 為端之本出来。 末代之人今案之。 
更不可用之。 此物語、 古人之説不同。 或称在中将之自書、 
或称伊勢之筆作。 就彼是、 有書落事等。 上古人、 
強不可尋其作者。 只可弄詞花言葉而已。 
    戸部尚書判

   右三本定家自筆の本之奥書也。 
  右三本を以て、 一つに集めたる本を三条西に有。 
  その本を以て、 代く講釈有也。 彼是書落事等
  有といふは、 業平自記にせん為に、 芹河の行幸
  除き、 また伊勢物語の道理に叶んか為に、 狩使の
  事を端にしたる本もあり。 是等の事成へし。 
  定家卿の心は、 量見したる事を被嫌也。 只可翫
  詞華言葉而已とかゝれたる事、 道の肝要也。 
  詞つくり様の面白心にかけて、 述作の便にもせよとの