奈良女子大学学術情報センター
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續 人 名  

本 文
  解  説

 外題『続人名』。各巻巻頭巻末の書名も同じ。10巻1冊。写本。松宮観山(1686〜1780)の「続人名の奥に書付侍りける長歌并序」を付す。末尾には筆写者の識語が2種ある。それによると,この写本は,某氏の筆写した写本を光賀という人物がさらに筆写したものらしい。なお,次に紹介する版本との内容上の異同はないと言ってよいようである。
 本書には版本があるので(『続人名女中の巻』,10巻10冊,刊年不明。『江戸時代女性文庫』第98巻〔大空社,1998年〕に影印,増田淑美解題),それから知られることをまず記しておくと,著者は法忍(1733〜1759)。松宮観山に師事した僧侶で,わずか27歳で没した。版本見返しに記された一文によると,彼は,没するに際して遺稿の校正を観山に依頼し,また自らに帰依した人々に遺稿を漸次刊行するよう命じたらしい。そのようにして刊行されたものの1つが版本『続人名女中の巻』10巻10冊である。
 『続人名』の各巻は,いくつかの一つ書きと道歌とからなっている。そして,各巻の本文部分は,すべて「あなかしこ」と結ばれている。すなわち,『続人名』の各巻は,独立した一通の手紙という体裁をとっているのである。『続人名』は,若い女性(ないし若い娘をもつ親)に宛てられた10通の手紙という体裁をとる教訓書であると言ってよい。
 ところで,たとえば巻1に「上々様方へ御奉公に出られ候御娘方ハ,随分身を慎ミ,御簾中様・奥様(へ)誠を尽して,御勤いささかも勤に私なきやう物事大切ニ心かけ,御主人様御為にハ命もおしまづ,心をかたむけ宮づかへ致し」云々とあることからもうかがわれるように,この10通の手紙の宛先として想定されているのは,将来大名家などへも奉公に出ることが見込まれるようなクラスの若い女性(ないしその親)である。本書の説く教訓自体は決して目新しいものではないが,しかし当時そのような女性たちにはどのような規範や教養が期待されていたのかをうかがううえでは興味深い史料であると言えるかもしれない。

神戸大学国際文化学部講師 宇野田尚哉


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