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繪 本 女 貞 木

本 文


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  解 説

 上方の代表的な浮世絵師西川祐信による教訓絵本。1745年刊記。
 書名は序に「絵本女貞 木」(えほんひめつばき)。表紙の題簽は剥落、所有者による書き入れ。半紙判 三巻 合一冊、上・中・下ともに11丁。丁付入。奥付に「花洛画工 文華堂 西川自得叟祐信 [印]/延享二年乙丑正月 吉日/京都書林 寺町松原下ル町菊屋嘉兵衛版」とある。
 叢書『絵本倭文庫(えほんやまとぶん こ)』二九冊のうちの一冊。序はふりがなが付けられた漢字混じりの草書体。一図に複 数の登場人物の姿とその背景を共に書くき、各図の上三分の一に物語文が添えらる形を とっている。本文のかなの文体は散らし書き、はねなどが多用されている。
 作者の西川祐信(にしかわすけのぶ、寛文11・1671〜寛延2・1750、没年は1750年説も あ り)は、西園寺家の家人をつとめ、狩野永納・土佐光祐に学び、鈴木春信の美人画に直 接影響を与えた。写実的で優美とされる肉筆美人画・風俗画を多く残した。特に衣裳図 案の描写力は評価が高く、古典に取材した作も多い。近世における古典の受容という視 点からも注目されている。書肆(版元・本屋)菊屋喜兵衛から は、計二十一点の絵本が刊行された(『近世京都出版文化の研究』宗政五十緒、同朋舎 出版、1983)。本書の裏表紙にも『絵本答話鑑(とうわかがみ)』三巻(享保14年・17 29)をはじめ『絵本喩草(たとえぐさ)』など祐信画による風俗絵本の広告が掲載され ている。
 序文によれば、本邦の史書に登場する女性の「貞義正しく徳容いみじかりし行状」を、 富貴貴賎を問わず絵本として紹介し、「幼女の目を悦ばし」、「昔を今にうつ」そうと いうもの。また女貞木とは「操」であるとする。
 取り上げられている女性は以下の通りである。仏教説話も多く参照され、「操」の内容 が、夫の身代わりとなって選ばれる死であるとともに、出家や仏教者への帰依として説 明される。但し、武家の妻であれば「勇」であったり、他、難関を切り抜ける「才知」 「頓知」も評価され、「貞木」の具体像は多岐にわたっている。
 選子内親王、橘媛(日本武尊)、阿波のつぼね(高倉天皇)、允恭天皇淡路行幸の時の 男狭磯の妻、有子、横笛(滝口入道時頼)、厳子、清少納言他の内侍、京極の御息所、 近衛の局、和泉式部、大和国ある人のむすめ、花山院左府兼将卿の北の政所、佐衛門佐 の局、奥州藤原忠衡妻、遊女を伴って帰京した殿上人の妻、高倉院小勢局、奥村右衛門 妻、清少納言、小宰相の局、和泉式部、比企能員の舞姫微妙、常陸国の地頭の女房、近 江国の女房、大磯の遊女(新田忠常)、山名禅高法院の女房、武田勝頼内室、龍造寺の 家臣の妻、大磯の虎、貧しき女房。
 なお、西川祐信絵本については、松平進『師宣祐信絵本書誌』(日本書誌学大系57)な どの解題に詳しい。

          立命館大学講師  長 志珠絵

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