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子孫繁昌手引草

本  文


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解 説

 外題「子孫繁昌手引草」。 5枚 ; 24cm 。万延元年。「施主 宇和島八幡浜 吉野屋弁治」。末尾の文章によれば、京八条の「喜大人」が広めた教えを吉野屋弁治(芳友堂邦憲)が板刻したとある。
 江戸時代に流布した間引き教諭書の中でもっとも著名。また文章だけでなく図像も注目されており、母親が赤子を圧殺しようとする姿を描いた図が鬼の姿として二重に描かれる様子など、視角に訴える啓蒙書としての性格も合わせ持つ。貧窮は子沢山が原因ではないこと、子供の多さは家の繁昌の基本であることといった道徳的な訓戒にとどまらず、養育によってその子供が栄達をすれば親が楽隠居ができることなども説いている。
 『江戸時代女性文庫 57』(大空社、1996)収録の印影本は、安政4年(1857)春刊・文久4年(1864)3月刊のもの。文章の内容としては文久4年版のものとほぼ同じであるが、かなり異動があり、猿田彦や弁慶の例を引いて「あやしき形の子うまれても殺すべからず」とする解釈などが加わっている。また図も江戸文庫版のものと異なり、本学所蔵の図は頁数を節約するためもあってか、女と鬼の2つの図が上下に配置されている他、赤子の顔がそのまま見える状態で首だけおさえつけた格好になっている。
 参考文献として、桜井由幾「堕胎と間引き」(林玲子編『日本の近世15 女性の近世』中央公論社、1993)、沢山美果子『出産と身体の近世』(頚草書房、1998)、また資料集として太田素子編『近世日本マビキ慣行史料集成』(刀水書房、1997)

          立命館大学講師  長 志珠絵

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