も。おこたるまじきことなり
 公父文伯は。魯の君につかへて。大夫の官にのぼれりある時文伯朝庭より帰り。
母敬姜にまみへけるに。われ官につかへ禄をたまはりて。何のともしきこともさふら
はざるに。みづからををうみ。くろうしたまふ事。心得侍らずと申せば。母うちなげき
たるふぜいにて申されけるは。なんぢがごときものの。だうりをわきまへざるものを。
大夫のくはんにそなへをきたまふほどに。魯の国はまつりごとただしからずして。
やがてほろび侍りなん。いでいでわがつとめてををうみ。おこたらざるだうりを。かたり
てきかせ侍るべし。それこえたる地にすむたみは。才あらず。やせたる土をたがへす
たみは。義にむかふものなり。いかにとなれば。こえたる地は。耕作にさのみ力をいれ
ざれども。なりわいよくして。其たみつねにらくをす。らくなればかならず。おごり
のこころいできて。悪念きざすものなり。又やせたる地は。あさゆふたがやしくさぎる
に。ほねををらざれば。わずかのなりわひもえがたし。くろうをしるものは。物ごとに
思慮あるによりて。おごりのこころさらになくして。ぜんしんおのづからしやう
ずるものなり。そのうへかみてんしより。しもばんみんにいたるまで。いきとし
いけるもの。一人としてあくまでくらひあたたかにきて。むなしくその所作をつ