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世 界 婦 女 往 来

翻刻文あり
  (翻刻文については、本学文学部言語文化学科日本アジア  
   言語文化学大学院生佐々木玲子さんの協力を得ました)  

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本  文
  解  説

 書名『世界婦女往来(せかいをんなわうらい)』。山本与助著。明治6(1873)年4月御免許,同年8月発兌。大阪・宝文堂(大野木市兵衛)刊。
冒頭に,色刷りの図2種(女性の労働する姿を描いた図および「世界婦女五人種の図」)と序文2種(明治6年5月の著者自序および宝文堂主人序)を置く。
本書は,近世の往来物の紙面構成の形式を踏襲して,紙面を上下に分割している。大字の下欄が本文,細字の上欄が付載記事である。この付載記事は,本書の場合,本文と密接に関わる内容をもっている。
 本書の主眼は,本文冒頭の一節からもうかがわれるように,文明開化の時代にふさわしい 新たな知識と 新たな規範を女性に向けて説くことにある。おおまかに言うなら, にあたるのは本文11丁オモテ以下の部分で,そこでは,世界各国の現状とそこでの女性のありさまが説かれている。この部分は,福沢諭吉の『世界国尽』(明治2〔1869〕年刊)などの場合と同じく,〈文明−野蛮〉という図式に立脚した19世紀西欧の世界観の直輸入であると言ってよい。また, にあたるのは本文の1丁から10丁にあたる部分であるが,そこでは,女性も新時代の学問と労働に積極的に取り組むべきことが説かれている。
 参考までに,付載記事の一覧を掲げておく。「 」内は本書中に見える標題,〔 〕内は解題者が仮につけた標題である。「勅諭之略」,「皇后の宮へ蚕桑の業を教へ奉りし上州の女子四人并に取締」,「大阪の授産所へ願ひ奉りて紡織の道を習ひ得たりし女子」,「御巡幸の節天覧に供へ奉り澳地利博覧会に差出候所木綿糸」,「京都女学生」,〔皇后から米国留学の女学生に渡された書付〕,「米国華盛頓府ランメン妻より津田氏妻へ来りし書 」,〔世界各国の国名・人口・首都名〕,「英語(いきりすことば)」,〔皇太后宮・皇后宮,黛・鉄漿の廃止を仰出〕,「五十韻」,〔京都女職引立会社〕,「改暦の大小を知る哥」,「御布令の文字の略解」,「蝦夷の土民,東京の風俗を見ならひに来る図」,「蝦夷地開拓」。この付載記事のなかには,岸田俊(=中島俊子)・山川(=大山)捨松・津田梅子といった名前が見えており,興味深い。なお,末尾には,本書を含む山本与助の著書の出版広告などが付されている。

         神戸大学国際文化学部講師 宇野田尚哉

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