形質転換法(塩化カルシウム)

 プラスミドDNAを細胞に導入することを形質転換といい、DNAを取り込み易くなった細胞をコンピテントセルという。大腸菌のコンピテントセルは対数増殖期の細胞を塩化カルシウム溶液で処理することによって得られる。さらにコンピテントセルをDNA存在下で熱処理するとDNAの取り込みが促進される。pUC等のプラスミドを取り込んだ大腸菌はアンピシリン耐性となりアンピシリンを含む寒天培地でコロニーを形成することができる。さらにDNA断片を組み込んだプラスミドを持つ大腸菌は、ガラクトシダーゼの発現を指標にコロニーの色で識別することができる。

準備:

LB液体培地
LB+アンピシリン平板寒天培地;50μg/mlの濃度のアンピシリンを含むLB培地。
50mM塩化カルシウム溶液;あらかじめ氷冷しておく。
X-gal (5-bromo-4-chloro-3-indory-D-galactoside)溶液:dimethylformamidoに20mg/mlの濃度で溶かし、遮光のためにアルミホイルで包んで-20℃で保存する。
IPTG ( isopropyl-1-thio-D-galactoside);2gを蒸留水8mlに溶かし、全量を10mlにメスアップして濾過滅菌し、1mlづつ分注して ー20℃で保存する。

プロトコール:

(1) 大腸菌転換受容菌単集落を1ー5mlのLBに移植し、37℃で一晩培養する。
(2) 三角コルベン(300 ー500ml容)に入った50mlのLBにこの培養液の1mlを混釈する。37℃で2ー3時間激しく振盪培養する。(後期対数増殖期を越えてはならない)直ちに氷冷する。(この後、菌は常に冷却されていなければならない!)
(3) 50mlポリプロピレン・チューブに移し、5分間遠心集菌する。(4℃、4000rpm、1600g)
(4) 上清を捨て、氷冷した10mlの塩化カルシウム溶液を加え懸濁する。
(5) 5分間遠心集菌する。(4℃、3000rpm、1100g)
(6) (4)と(5)を繰り返す。菌の沈渣に氷冷した2mlの塩化カルシウム溶液に懸濁する。(コンピテントセル)
(7) 得られた菌懸濁液の100μlを微量遠心チューブに移し、1ー2μlのプラスミドDNA溶液(0.1-100ng)を加える。対照としてDNAを含まないコンピテントセルのみのチューブも用意する。そして、それぞれを4℃、30分氷冷する。
(8) 熱処理を42℃、1分行う。
(9) 1mlのLB培地を加え、37℃で1時間培養する。
(10) これらの培養の10、100μlを選択培地上に塗抹する。(対照のものは200μlを選択培地上に塗抹する)