PCR法

 PCR法は、耐熱性DNAポリメラーゼを用いてDNA合成反応を連続的に行い、莫大な数のDNA分子を得る方法で、特定の遺伝子の単離を効率よく行うことができる。方法としては、まず、鋳型となるDNA分子を加熱変成し、一本鎖にする(denature)。次に増幅したい特定部位のDNA鎖の両端に相補的な2種類のオリゴヌクレオチド・プライマーを、反応系に過剰に加えた状態で温度を下げ、プライマーがDNA鎖の相補的な部位と2本鎖を形成する(annealing)。この状態でDNA合成基質のdNTPs(デオキシヌレオシド三リン酸)と耐熱性DNAポリメラーゼを作用させると、ポリメラーゼはプライマー部位からDNA相補鎖を合成していく(extension)。この反応を30サイクル繰り返し行えば、230のDNA分子を得ることができる。ごく微量のDNAがあれば、遺伝子の検出が行えることから、犯罪捜査や親子鑑定などにも利用されている。
PCR実験の指針
通常のDNAの増幅には、TOYOBOのKOD-DASH(反応温度74℃)を用いる。
Long PCRにはTAKARAのExTaq(反応温度72℃)を使用する。
以下には、幅広い用途に使用できるTOYOBOのBlend Taq (反応温度72℃)を例に示している。
*形質転換体のチェックやコロニーPCRの場合には、反応液の容量を10μlとして以下の要領により、コールドスタート法で行う。
  1. サンプル数分まとめて反応液を作成する。
    サンプル数が4本の場合:
    HPLC DW ------------- 23.5 μl
    10x Bufffer ---------- 4 μl
    10x dNTPs ----------- 4 μl
    Primer-1 -------------- 4 μl
    Primer-2 -------------- 4 μl
    Blend Taq ------------ 0.5 μl
  2. 氷中で十分に10分間冷やす。
  3. チューブに10μlずつ分注し、さらに氷中で十分に冷やす。
  4. 各チューブに希釈したDNA溶液を0.5μl加え、氷中に置く。
  5. PCRを以下の条件で行う。プライマーのアニーリング温度はTm-5℃を目安に設定する。
    94℃ --------------- 3分
    94℃ --------------- 30秒
    (Tm-5)℃ -------- 30秒
    72℃ --------------- 30秒〜3分(1kbあたり1分が目安)
  6. PCR装置のブロックが94℃になったらチューブをセットし、反応を続ける。
*使用する酵素量の目安は、
サンプル数が1〜4本の場合は、全体量(10 μl〜40 μl)に対し、酵素を0.5 μl使用。
サンプル数が5〜10本の場合は、全体量(50 μl〜100 μl)に対し、酵素を1.0 μl使用。
サンプル数が11〜16本の場合は、全体量(110 μl〜150 μl)に対し、酵素を2.0 μl使用。
サンプル数が16〜20本の場合は、全体量(160 μl〜200 μl)に対し、酵素を3.0 μl使用。
30μl 40μl 50μl 100μl 120μl 160μl 200μl
HPLC 17 23 28 58 70 93 117
10x Buffer 3 4 5 10 12 16 20
10x dNTP 3 4 5 10 12 16 20
Primer-1 3 4 5 10 12 16 20
Primer-2 3 4 5 10 12 16 20
Enzyme 0.5 0.5 1.0 2.0 2.0 3.0 3.0