アルカリ-SDS法
形質転換大腸菌が目的とする組み換え体プラスミドを持つことを確かめるために少量の大腸菌から迅速にプラスミドを単離する方法が考案されている。信頼性が高く収率の良いアルカリ-SDS法およびボイリング法が一般的に用いられている。これらの方法によって得られたプラスミドDNAは、制限酵素による解析や次のステップへのクローニングにも用いることができる。通常1.5mlの培養から約5μgのプラスミドDNAが得ることができる。アルカリ-SDSは、大腸菌染色体DNAを細胞壁とともに除去するため、プラスミドDNAのみを得るのに信頼性の高い方法である。
準備:
LB液体培地
アンピシリン溶液(50mg/ml);100μl/100ml培地(終濃度50μg/ml)
溶液I(25mM Tris-HCl, pH8.0; 10mM EDTA; 50mM グルコース)
溶液 II(0.2M NaOH, 1% SDS);当日調整、作り置きはしない
溶液 III(7.5M酢酸アンモニウム溶液;pH7.6);氷冷しておく
2M酢酸アンモニウム溶液(pH7.6);氷冷しておく
イソプロパノール
70% エタノール
TE溶液(10mM Tris-HCl, pH8.0; 1mM EDTA, pH8.0)
リボヌクレアーゼA溶液(10mg/ml);DNaseを失活させるために10℃、10分間煮沸する。

方法:

  1. 大腸菌転換受容菌単集落を抗生物質の入った2 mlのTB(試験管)に移植し、37℃で一晩激しく振盪培養する。(撹拌が不十分なときはプラスミドの収量が悪くなる)
  2. 1.5 mlをエッペンドルフ・チューブに移し、10000 rpm、1分間遠心集菌する。
  3. 上清を捨て、100μlの溶液 Iを加えボルテックスで懸濁する。
  4. さらに200μlの溶液 IIを加え穏やかに混ぜ、氷中に5分間置く(この時激しく懸濁すると回収されるプラスミドDNAに大腸菌染色体DNAがコンタミする)。
  5. 氷冷した溶液 IIIを150μl加えボルテックスで懸濁し、氷中に5分間置く。そして15000rpm、10分間遠心。
  6. 上清を新しいエッペンドルフ・チューブに移し、270μlのイソプロパノールを加え懸濁し室温に10分間置く。そして15000rpm、10分間遠心。
  7. 上清を捨て、2M酢酸アンモニウム溶液(pH7.6)の50μlを加えボルテックスで懸濁し、氷中に5分間置く。そして15000rpm、10分間遠心。(DNAはこの溶液に溶けるがタンパク質は溶けずに残る。この処理によって除タンパクが行われる。)
  8. 上清をイエロー・チップで新しいエッペンドルフ・チューブに移し、50μlのイソプロパノールを加え懸濁し室温に10分間置く。(注意!! 上清にプラスミドDNAがある)そして15000rpm、10分間遠心。
  9. 沈殿を70%エタノールで洗浄し乾燥させ、25μlのTEを加え、懸濁する。
  10. 1μlのリボヌクレアーゼA溶液を加え、37℃で30分間反応させる。(RNAを分解する)
  11. 氷冷した溶液Vを12.5μl加えボルテックスで懸濁し、さらに37.5μlのイソプロパノールを加え懸濁、室温に10分間置く。そして15000rpm、10分間遠心。
  12. 沈殿を70%エタノールで洗浄し乾燥させ、25μlのTEを加える。