サザンハイブリダイゼーション法(DIG)

 ハイブリダイゼーション法は変成した一本鎖DNA同士が塩基配列の相同性に基づき、二本鎖DNAを形成することを利用している。検出に用いられる標識された一本鎖DNAをプローブと呼ぶ。検出法にはラジオアイソトープの放射線を用いるものと、ここに述べるような抗原抗体反応と化学発光を利用するものがある。DIG ーハイブリダイゼーション法ではジゴキシゲニン・ラベルされたd-UTPをプローブ中に取り込ませ、ハイブリダイゼーションを行う。そして、抗ジゴキシゲニン抗体でプローブのジゴキシゲニンを検出し、抗体に付けられたアルカリフォスファターゼにより化学発光を励起させ、X線フィルム上でシグナルを検出するという手順をとる。
準備:
Hexanucleotide mixture (ロッシュ社)
DNA-labeling mixture(ロッシュ社)
Klenow酵素
TE
ハイブリダイゼーション溶液(5×SSC、1%ブロッキング試薬、0.1%N-ラウロイルザルコシンナトリウム、0.02%SDS)
洗浄液T(2×SSC、0.1%SDS)
洗浄液U(0.5×SSC、0.1%SDS)
Buffer1(100mM Tris-HCl pH7.6, 150mM NaCl)
Buffer-2(Buffer1 + 5% Skim milk, 0.1% Tween-20)
Buffer3(100mM Tris-HCl pH9.5, 100mM NaCl, 50mM MgCl2 )
CDP-star(Alkaline phosphataseの発光基質)(ロッシュ社)
X線フィルム
<ジゴキシゲニンを用いたプローブDNAの標識>
*DNA断片をプラスミドから切り出したものを使用した方がバックグラウンドが低い。
  1. 回収したDNA断片を15μlのDWに溶かし、100℃で15分間 熱変性させる。
  2. すばやくNaClを混ぜた氷中に移し、急冷する(凍ってしまってもいい)。
  3. このDNA溶液に、2μlのHexanucleotide mixture と 2μlの DNA-labeling mixture、1μl Klenow酵素(2unit/μl)を加える。
  4. 37℃で一晩反応させる。
  5. 100μlのTEを加え、懸濁する。すぐに使用しない場合は-80℃で保存。
  6. 使用直前、100℃で10分間 熱変性させ、 NaClを混ぜた氷中に移し、急冷する。20mlのハイブリダイゼーション溶液に対して30-50μlを使用する。
<ハイブリダイゼーション>
*メンブレンは素手で絶対にさわらない。
  1. メンブレン100平方cmあたり20mlのハイブリダイゼーション溶液をハイブリバックに加え、65℃で2時間処理する(プレハイブリダイゼーション)。
  2. 直前に前述の方法で熱処理した標識済みのプローブDNAの50μlをハイブリダイゼーション・バックに加え、65℃で18時間処理する。泡は出来る限り取り除く。
    *尚、プローブの入っているハイブリ溶液は回収して、3回程度再利用することが可能。再利用の場合には、回収した溶液(50mlのチューブ)を煮沸し、65℃の湯浴に入れてから使う。
  3. 室温で、75mlの洗浄液Tを用いて5分間 、フィルターを洗浄する操作を2回繰り返す(冬場はSDSが析出するので、37℃のシェーカーの上で振る)。
  4. 続いて、洗浄液Uを用いて65℃で15分間洗浄する操作を2回繰り返す(ハイブリオーブン内)。

<ハイブリッドの免疫学的検出>

  1. 前述の洗浄後のメンブレンをBuffer-1で1分間処理する。
  2. メンブレンのバックグラウンドを低くするために、20mlのBuffer-2で90分間ブロッキング処理する。
  3. DIGアルカリフォスファターゼ標識抗体を2μl/10mlの割合で加え、30分間処理する。(抗体は氷に入れて、移動する。高価!)
  4. Buffer-1で15分間洗浄する操作を2回繰り返し、未反応標識抗体を取り除く。
  5. 20 mlのBuffer-3で5分間処理し、メンブレンを平衡化する(pHをアルカリ側にする)。
    *以下は暗室で行う。
  6. しわにならないように、サランラップを敷く(メンブレンを置く場所は素手でさわらない)。CDP-starを50〜100μlサランラップ上に滴下する。
  7. DNA面を下にしてメンブレンを滴下したCDP-starにのせる。CDP-starがメンブレン全体にいきわたるようにする(気泡が入らないように注意する)。5分間暗所下で反応させる。
  8. DNA面を接しないように、DNA面を上にしてペーパータオル上で余分な液をとる。半乾きのメンブレンをしわが寄らないように新しいサランラップで包み、フィルムカセットにテープで固定する。
  9. 暗室でセーフティライト(赤色光)下、X線フィルムを入れ、カセットをクリップでとめて黒いビニル袋でくるむ。(操作は暗室のカギを掛けてから行う。)
  10. 37℃で30分反応させ、暗室で現像をする。
    *現像(レンドール):像が現れるまで、停止(酢酸):30秒、定着(レンフィックス):フィルムが透明になるまで。
<メンブレンの再利用>
*メンブレンは3-5回再利用することができる。以下の処理は現像後すぐに行った方がいい。
 Probe-stripping溶液
  0.2M NaOH 20ml (4M NaOH)/ 400ml
  0.1% SDS 2ml (10% SDS) / 400ml
  1. サランラップからメンブレンを取り出し、蒸留水で洗う。
  2. メンブレンをProbe-stripping溶液に浸し、37℃で30分。
    (プローブをアルカリ溶液で変性させている。プローブが全てはがれているわけではない。)
  3. 2X SSCで5分間洗浄。これを2回繰り返す。