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分子細胞生物学大講座 分子生物学 鈴木 孝仁

酵母・菌類の変異と形態形成に関する研究
微生物汚染からの文化財保全に関する研究
 カビを含む真菌微生物界には、未知の研究分野が広がっています。人間の生活環境だけでなく、土壌などの自然環境に由来するカビに注目した研究は、例えば古墳壁画などの文化財を保全するためにも必要です。
 微生物の存在を検出するために、従来からの分離培養法やDNA塩基配列の相同性に基づく検索同定法に加えて、微生物が種特異的に産生する揮発性分子による同定法の開発に私たちは取り組んでいます。カビの揮発性分子に関するデータベースを構築し、さらにそれら分子が関わる生理的・生態的役割を明らかにすることで、カビそのものの生理学的知見だけでなく、カビを取り巻く小動物や細菌とが織りなすミクロの環境を明らかにすることができると私たちは考えています。またこうした研究から得られる成果は、カビを含む微生物の環境モニタリング技術の開発にも役立つことでしょう。


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分子細胞生物学大講座 分子生物学 岩口 伸一

菌類の染色体構造に関する分子生物学的研究
1. 石油資化酵母の二形性変換(酵母⇔菌糸)
 同一生物あるいは個体が2つの異なる形態をとることを一般に二形性 (dimorphism)と呼びます。菌類には生育環境により単細胞性の酵母型と多細胞性の菌糸型との増殖形態をとるものが知られ、この異なる形態を相互変換することから二形性変換 (dimorphic transition) と呼ばれています。不完全酵母Candida tropicalisは、土壌から分離される石油資化酵母で、生育環境を制御することにより、出芽による酵母型増殖と菌糸成長による菌糸型増殖の二つの異なる増殖形態をとります。この菌はグルコースを炭素源とした合成液体培地で培養すると、単細胞性の出芽増殖による酵母型を示しますが、グルコース合成培地にさらにエタノールを2.5%添加した培養では菌糸の成長が見られます。この酵母型から菌糸型への二形性変換のメカニズムを明らかにするために、細胞生物学的、分子生物学的手法を用いて研究を行っています。

2. 植物(花)から分離される真菌(カビ、酵母)の研究
 我たちの身の回りには非常に多くの真菌が生育していますが、食品や臨床的な面では研究が進んでいるのに比べ、野外環境に生育する真菌については知見が非常に乏しく、どういった場所にどういった種類の真菌が生息しているかについては詳しく分かっていません。環境真菌について理解するために、植物(花)から分離された真菌(カビ、酵母)について、DNAレベルの解析方法により同定し、研究を進めています。
(右図は、花酵母を分離するのに使われる天然記念物「奈良八重桜(ナラノヤエザクラ)」)

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分子細胞生物学大講座 細胞機構学 野口 哲子

植物細胞の小胞輸送機構に関する研究
I. 藻類・植物細胞のゴルジ体およびゴルジ体を中心とする細胞内小胞輸送系の研究

 ゴルジ体は細胞内小胞輸送系(小胞体・ゴルジ体・トランス-ゴルジ網 (TGN)・原形質膜または液胞)の中心となる細胞小器官です。私達は主に単細胞緑藻を用い、細胞周期を通して順次起こる、タンパク質(液胞タンパク質・膜タンパク質・分泌タンパク質)、多糖(細胞壁・粘液)及び脂質(炭化水素)の輸送おけるゴルジ体の構造変化・機能や小胞輸送を電子顕微鏡や生化学的手法を用いて解析しています。
 現在は、核分裂に伴うゴルジ体の複製に注目して研究を進めています。


II. 単細胞緑藻Botryococcus brauniiの炭化水素生成・分泌機構の細胞学的研究

 Botryococcus brauniiは、細胞乾燥重量の30〜60%もの多量の炭化水素(分子式は右図参照)を細胞外に蓄積します。そのため、石油に変わるエネルギー資源の開発との観点から注目されています。私達は、細胞分裂直後に多量の炭化水素生成が起こること、分裂していない細胞でも細胞壁を分解すると多量の炭化水素生成を誘導できることを明らかにし、炭化水素の生成機構を細胞レベルで解析しています。
 図説:右図のナイルレッド染色で、黄色く染まっているのが炭化水素です。




III. ラビリンチュラのDHAの生成機構の細胞学的研究

 ラビリンチュラ類は海洋の汽水域で分解・吸収栄養を行う単細胞生物です。Schizochytrium limacinum 21株は、細胞乾燥重量の50〜70%もの多量の脂肪酸を細胞内に蓄積し、なかでも高度不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)を多量に生成します。DHAは制癌、抗血栓等の作用を有し、視覚や学習能力に有効に働くため、医薬用の純度の高いDHAの供給源としてラビリンチュラ類が注目されています。私達はSR21株の生活史を通したDHAの消長を明らかにし、DHAの生成と消失機構を細胞学的に解析しています。II. のB. brauniiは炭化水素を細胞外に蓄積するのに対し、ラビリンチュラはDHAを細胞内に蓄積します(右図参照)。細胞内又は外に脂質を蓄積する機構にも注目し、その生物学的意味を考察しています。

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分子細胞生物学大講座 細胞機構学 鍵和田 聡

生体膜の構造と機能に関する分子生物学的研究
 生体膜は細胞や細胞小器官を他と区別するための障壁として働くばかりでなく、細胞の情報伝達・物質輸送・エネルギー生産の場として、またタンパク質などの生体分子の輸送・貯蔵・分解を行う特殊領域を作るために機能しています。

 生体膜はおもにタンパク質と脂質から成りますが、これまで脂質分子については単なる構造を作るための要素と考えられていました。しかし最近では、脂質分子が特定の生理機能に関係することが明らかになってきており、それらの機能の解明が進んできています。

 私たちは、生体膜の代表的な脂質であるリン脂質が、生体膜のどの部位でどのような生理現象に関係するか、リン脂質分子の局在や合成がどのように制御されているかを解明しようとしています。
生体膜のような多種類の分子集合体を、細胞から純粋に単離することは困難です。そこで、私たちは遺伝学的・分子生物学的な研究に適した出芽酵母(Saccharomyece cerevisiae)を用いて研究を行っています。


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分子細胞生物学大講座 細胞情報学 春本 晃江

繊毛虫の接合開始機構の研究及び翻訳終結因子eRF1の多様性の研究
 繊毛虫ブレファリズマの接合は、相補的な接合型の細胞の相互作用により開始される。接合では、小核の減数分裂、配偶核の交換、受精核の形成が起こり、新しい遺伝的組成をもった小核と大核が形成される。分裂を繰り返して老化した細胞も、接合により新しく生まれかわる。接合型 I 型とII 型の細胞はそれぞれガモン1、ガモン2という接合誘導物質を放出するが、これらのガモンの物質的な特徴を明らかにし、これらの発現がどのような環境要因により、どのような機構で調節されているのかを明らかにしようとしている。また、ブレファリズマの種が分岐してきた道筋を探ろうとしている。


 遺伝コドンは多くの生物において共通であるが、繊毛虫にはUAA,UAG,UGAという終止コドンの一部をアミノ酸のコドンとして翻訳する種が知られている。これは(1)翻訳終結因子eRF1が変異して、終止コドンを認識できなくなった、(2)終止コドンに対応するアンチセンスコドンをもつtRNAが生じたことによると考えられている。繊毛虫の種で、eRF1による終止コドンの認識のパターンは多様性に富んでいるが、これがeRF1とtRNAのどのような変異によるものであるか、また繊毛虫の系統で、これらがどのように生じてきたかを明らかにしようとしている

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分子細胞生物学大講座 細胞情報学 吉川 尚男

原生生物の分類・形態・分子系統に関する細胞生物学的、電子顕微鏡的研究
 本研究室では、 1912年に発見された動物の消化管内に生息している分類位置不明の嫌気性・単細胞性の真核微生物であるブラストシスチスについて研究している。我々は国内外と共同研究を行いつつ、この分野における世界トップレベルの研究を行っている。

 この微生物は、ヒトを含む哺乳類だけでなく、鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類という多様な動物種からも分離されており、同じ動物種から分離された株間でも種が異なるぐらいの遺伝子変異が生じている。しかし由来の異なる株を形態的に分類・区別することは困難であるため、分離株の命名などに混乱が生じている。本研究室では、多様な動物種から分離された株を簡便に区別・同定するPCRプライマーを開発しただけでなく、分子系統的関係や感染伝播の有無を明らかにしてきた。

 現在の研究テーマは、ブラストシスチスがどのようにして多様な動物種に適応して進化してきたのか?また、種が異なるほどの遺伝子変異がこの生物では見られるのに、なぜ形態的に同じなのか?この生物の不思議を解明したいと考えている。



[最近の発表論文]
  1. Terminology for Blastocystis subtypes - a consensus. Trends in Parasitology 23: 93-96 (2007)
  2. Ultrastructural and phylogenetic studies on Blastocystis isolates from cockroaches. Journal of Eukaryotic Microbiology 54: 33-37 (2007)
  3. Infectivity of different genotypes of human Blastocystis hominis isolates in chickens and rats. Parasitology International 56: 107-112 (2007)
  4. Molecular epidemiology of human Blastocystis in a village in Yunnan province, China.
    Parasitology International 56: 281-286 (2007)
  5. Cross-sectional surveys and subtype classification of human Blastocystis isolates from four epidemiological settings in China. Parasitology Research 102: 83-90 (2007)
  6. Infectivity of Blastocystis isolates from chickens, quails and geese in chickens. Parasitology Research 96:57-61 (2005)
  7. Problems in speciation in the genus Blastocystis. Trends in Parasitology 20: 251-255 (2004)
  8. A survey of Blastocystis infection in anuran and urodele amphibians. Veterinary Parasitology 122: 91-102 (2004)

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分子細胞生物学大講座 細胞調節学 佐伯 和彦

マメ科植物と根粒菌の相 互認識・共生と窒素固定系の遺伝生化学・ゲノム生物学
『窒素固定共生:根粒菌とマメ科植物の共生』のメカニズムを 分子やゲノムのレベルで明らかにする

 タンパク質や核酸は生き物を形づくり維持する上で無くてはならない成分です。これらの化合物には窒素原子(N)と炭素原子(C)が必ず含まれています。私たちのからだを構成する炭素原子は、植物が光エネルギーによって大気中の二酸化炭素(CO2)を固定したものに由来することはよく知られています。一方、窒素原子の方は主に、限られた種類の細菌によって大気中の窒素ガス(N2)から固定したものに由来しています。(『主に』と言っているの雷放電などによっても固定化窒素は発生するからです)
 このよう窒素原子は『窒素固定』反応をにより、大気中の窒素ガスからアンモニアを経て生体に利用され、『脱窒』反応で再び窒素ガスとなり地球上を巡っています。

 私たちは、マメ科植物とその根にコブ状の組織を形成して『窒素固定共生』を営む根粒菌の共生のメカニズムについて研究しています。中でも、マメ科植物と根粒菌の組合せ(種特異性)を決定する因子や窒素固定機能を維持する因子に注目して、分子・遺伝子レベルでの研究を行っています。

 現在の研究の主題は、(1)菌体表層物質とその合成酵素(菌体外多糖類の合成と宿主特異性)、(2)菌体外分泌装置と分泌タンパク質(TypeIII分泌系と呼ばれる分泌装置とそれにより分泌されるタンパク質)、(3)共生成立と維持に機能する抗酸化酵素(カタラーゼやSODとその制御系)、および、(4)新たな共生遺伝子を検出する方法の開発(RIVET, Recombinant In Vivo Expression Technologyの改良など)、などです。


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分子細胞生物学大講座 細胞調節学 坂口 修一

高等植物の組織・器官形成に関する研究
 高等植物を対象として、細胞や器官の形ができるしくみについて各種の顕微鏡や遺伝子組換え技術等を用いて研究しています。とくに細胞内の微細な管である微小管の役割に注目しています。また、園芸植物のバイオテクノロジーに関しても基礎的な研究をおこなっています。

研究テーマ
1.葉の付着パターン(葉序)の調節機構
2.細胞の分裂、成長における微小管の役割
3.微小管に存在するタンパク質の解明
4.コチョウランのクローン繁殖における培養変異


上段:シロイヌナズナ細胞の細胞板形成時における微小管の構造変化。
レーザ顕微鏡による生体観察。遺伝子組換え技術により細胞に発光クラゲの遺伝子が導入されているため微小管が輝いてみえる。
下段:培養変異によって生じたコチョウラン(中)と苗のクローン繁殖(右)。通常のコチョウランの花(左)が左右相称なのに対し、花が放射相称となっている。

傷害処理により葉序が変化したホルトソウ。
上段:葉序。下段:茎の先端部分の電子顕微鏡像。中央の平坦な部分が、分裂組織、周辺の隆起が葉の原基。

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個体集団生物学大講座 個体構造学 荒木 正介

脊椎動物神経系の発生と再生、特に視覚器の発生と網膜再生のメカニズムに関する研究
 脊椎動物神経系の発生と再生、とくに視覚器(眼)の発生、再生、進化の問題を扱っている。
(詳しくは、研究室HPを参照)
  1. 眼はどのようにしてできるのか:ニワトリ胚移植、器官培養、遺伝子強制発現などの手法を組合せ、発生初期の単純な原基から複雑な組織構築に至る過程ではたらく細胞間相互作用を解析している。特に背と腹の非対称的な発生パターンに注目している。

  2. 網膜・レンズの再生の仕組み:両生類イモリやカエル(ゼノパス)を用いて網膜やレンズが再生するメカニズムを器官培養、遺伝子発現パターン解析によって研究している。高等動物にも共通した再生機構があると予想し、その分子機構を明らかにすることが目標。

  3. ニューロンの突起伸長の仕組み:マウス遺伝子Neurensin-1,2はニューロンでだけ発現する突起伸長機能をもつ新しい遺伝子である。この遺伝子の機能解析を神経系の発生、再生、記憶学習と関連して解析している。

  4. 松果体の発生と分化:松果体と眼は姉妹器官である。進化の過程で松果体はさまざまな機能をもつ器官へと多様化した。発生過程の環境要因がこの多様性をもたらしたと考えて、その要因と関連する遺伝子の解析をおこなっている。

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個体集団生物学大講座 個体構造学 安田 恵子

哺乳類生殖腺の形態形成と機能
卵胞発育のしくみ
 哺乳類の卵巣の中で卵母細胞は「卵胞」というのユニットの中で発達します。卵胞の細胞は卵母細胞を取り囲んで、守り、育て、排卵へと導きますが、その後は自らは「黄体」に姿を変えて妊娠の維持に重要な役割を果たします。卵胞発育のしくみについてはまだ十分には分かっていません。 また、哺乳類では周期的に決まった数の卵が排卵されます。そのためには卵巣の中で卵胞を選別するしくみがあるといわれています。私達は卵胞発育、卵胞選別のしくみの解明に取り組んでいます。


ライディッヒ細胞の分化
 精巣では思春期になるとライディッヒ細胞が男性ホルモンを産生し、二次性徴を起こします。ライディッヒ細胞がどこから分化してくるのか、あるいはどんなシグナルがライディッヒ細胞の分化を起こすのかについては、まだほとんど分かっていないのです。私達はこのライディッヒ細胞の分化のしくみを知りたいと思っています。

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個体集団生物学大講座 個体機能学 渡邊 利雄

遺伝子操作マウスを用いた造血幹細胞、免疫細胞の分化・がん化メカニズムの研究
個体機能分野 渡邊は、
遺伝子から生物現象、特に私たち人間に係わる生命現象の理解(ライフサイエンス)に貢献したいと考えて、主にマウスの細胞と個体で研究をしています。
  1. 遺伝子の機能を、様々な遺伝子組み換え体を用いて、プラスチックのお皿の中で飼うことが出来る培養細胞に導入して、働きを詳しく解析します。
    これで、細胞のレベルでの働きを知ることが出来ます。
  2. 次に個々の細胞の機能がどのように個体としての私たちに影響を及ぼすのかについて、万能細胞であるマウスES細胞での遺伝子改変や、マウス受精卵へ遺伝子を導入したりして、遺伝子改変マウスを作ることにより解析します。
  3. 解析の対象は、自分たちが発見した新しい遺伝子からスタートし、個体で初めて解析できるもので、内容は以下のように多岐に渡っています。
    がんの発症メカニズム」、「免疫担当リンパ球の発生と分化、特にアレルギーとの関連」、「オスの不妊の原因― 精子形態形成のなぞ―」、「細胞内のタンパク質の宅配便機能の解析と個体での意義」


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個体集団生物学大講座 個体機能学 保 智己

脊椎動物における眼外光受容器官(松果体や脳深部光受容器官)に関する神経生物学的研究
 脊椎動物には光受容器官として、非常に発達した眼(側眼)があります。しかし、哺乳類以外の脊椎動物は側眼以外にも光受容器官を持っています。その代表格は松果体と呼ばれる内分泌器官で、この器官はメラトニン*1というホルモンを分泌しています。哺乳類以外の松果体は側眼と同様に視細胞(光受容細胞)を持っています。哺乳類以外の松果体は脳への出力としてはホルモンだけでなく、神経情報もあります。魚類や両生類では色の情報も脳に送っています。私の研究室ではこのような光感覚器官である松果体の光情報がどのような仕組みで脳へ伝わり、どのような機能をもっているのかを遺伝子レベルから個体レベルまで明らかにしようとしています。
*1:メラトニン:生殖腺の制御や体色変化などに関与していることは古くから知られていますが、最近の研究から睡眠誘導や活性酸素を除去する働きがあることが示されています。


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個体集団生物学大講座 環境生理学 酒井 敦

植物オルガネラの増殖・分化に関する生理・生化学的研究、植物個体の環境応答
1. 植物オルガネラの増殖、分化の制御機構と進化
 植物の細胞の中には、光合成を営む葉緑体(色素体)と、呼吸を営むミトコンドリアが存在します。これらはそれぞれ光合成機能および好気呼吸機能をもつバクテリアの細胞内共生によって誕生したと考えられており、それぞれ独自の遺伝子DNAをもちます。植物細胞の増殖/分化の過程で、これらの細胞小器官は遺伝子の複製や遺伝子発現を行いながら半自律的に増殖し、細胞のタイプごとに、また環境変化に応じて、様々な機能を営むように分化しています。私たちの研究室では、これら細胞小器官の増殖/分化がどのように調節されているのか、主に「細胞小器官遺伝子の複製制御」と「細胞小器官遺伝子の転写制御」の二つの観点から研究を進め、そのような制御機構がどのようにして作り上げられてきたのか(進化的背景)、また、植物の生存にとってどのように役立っているのか(適応的意味)、といった問題について考察しています。

2. 化学物質を介した植物個体間相互作用 ―他感作用―

 「ある植物が放出した化学物質によって、他の植物が何らかの作用を受ける現象」を「他感作用(アレロパシー)」といいます。自然界では阻害的な作用を与える例、すなわち「ある植物の周囲に他の植物が生えにくい現象」の観察例が多いようです。自分自身の周囲から他の植物を排除することは、植物が生きていくために必要な光や水、無機養分を獲得する上で有利に働くと考えられます。私たちの研究室では「他感作用が実際にはどのように、そしてどの程度、植物の生存に貢献しているのか」という生理/生態的な意義と、「他感作用をもたらす化学物質はどのようなメカニズムで他の植物の生育に影響を及ぼすのか」という生理/生化学的な機構の二つの観点から研究を進めています。

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個体集団生物学大講座 環境生理学 奈良 久美

維管束植物における根の光応答の分子メカニズムの研究
 光は植物にとって、光合成のエネルギー源であるとともに、環境を知るための大切な情報源です。地上部(葉や茎など)は光の影響を直接受け、光合成や生長速度を変化させることができます。一方、根の形態形成や生理も光環境に応じて変化します。

 例えば、光は根の細胞伸長を抑制し、根毛形成を促進します。また根による水の吸収と輸送は、地上部での水需要、すなわち光合成や生長(細胞の増殖・伸長等)と調和して行われます。

 私達の研究室では、土壌中の根が「地上の光環境の変化」及び「光によって引き起こされた地上部(葉や茎など)の変化」をどのような仕組みで受け取り、根の遺伝子発現や発達・生理の調節をしているのかに着目して研究を行っています。

 植物体の地上部に光が照射されると、図のように、一部の光は植物体内を伝わって根まで到達します。この光が遠赤色光の成分に富むことから、土壌中(特に地表面近く)の根は、日中は遠赤色光によって照らされていると考えています。

 この遠赤色光の役割を明らかにするために、cDNAマイクロアレイ解析を行い、シロイヌナズナの根の遠赤色光応答遺伝子を特定したところ、6つの水チャネルタンパク質 (アクアポリン:TIP1;1, TIP1;2, TIP2;1, TIP2;2, PIP1;2, PIP2;3) や感染特異的タンパク質(pathogenesis-related protein 1 : PR1)に類似するタンパク質 の遺伝子が含まれていました。

 現在は、これらの遺伝子の遠赤色光による発現調節の仕組みや根における機能を明らかにするための研究に取り組んでいます。

 また、シロイヌナズナの根毛形成促進突然変異体を用い、光による根毛形成誘導機構を明らかにするための研究も行っています。

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個体集団生物学大講座 集団機能学 和田 恵次

主として海域における動物の社会行動、個体群動態、群集構造に関する研究
 主に干潟に生息するカニ類や貝類を材料に、その生活史、個体群動態、社会行動、種間関係、さらに系統進化を扱った研究を行っている。現在進めているテーマは次の通り。
  1. スナガニ類、イワガニ類の社会行動の進化過程
  2. チゴガニのバリケード構築行動を生む要因
  3. コメツキガニ類におけるwaving displayの意義
  4. チゴガニの社会行動の地理的変異
  5. シオマネキのwaving displayの求愛意義
  6. 日本沿岸の潮間帯性カニ類における地域集団間の遺伝的分化
  7. 稀少カニ類、シオマネキの生活史と生息場所利用
  8. シオマネキ類の生息がマングローブの生育に与える影響
  9. ホンヤドカリの貝殻選好性とその地域間差異
  10. 汽水性稀少巻貝類の分布特性と生活史
主な著書

「原色検索日本海岸動物図鑑II」(保育社)(1995)(分担執筆)
「動物の自然史─現代分類学の多様な展開─」(北海道大学図書刊行会)(1995)(分担執筆)
「干潟の自然史─砂と泥に生きる動物たち─」(京都大学学術出版会)(2000)
「海洋ベントスの生態学」(東海大学出版会)(2003)(責任編集、分担執筆)
「生態学事典」(共立出版)(2003)(分担執筆)
「河川汽水域 その環境特性と生態系の保全・再生」(技報堂出版)(2008)(分担執筆)
「環境事典」(旬報社)(2008)(分担執筆)

研究室HP  http://www.nara-wu.ac.jp/rigaku/bio/pcecol/index.html

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個体集団生物学大講座 集団機能学 遊佐 陽一

貝類を中心とする淡水・海洋生物の生態と行動の研究、およびそれにもとづく有害種の防除法の開発
1.侵入種スクミリンゴガイの生態
  南米原産の淡水巻貝スクミリンゴガイは世界的な稲の有害動物で,世界と日本の侵略的外来種ワースト100の両方にリストされている唯一の淡水無脊椎動物です。この貝の生態を解明し,防除法の開発に役立てる研究を行っています。近年の主なテーマは以下の通りです。
  • 性比変動と性決定様式  
  • 捕食−被食関係と捕食者回避  
  • 生態系との関わり  
  • 繁殖行動

    2.フジツボ類の性表現
     フジツボ類には,雌雄同体,雌雄同体+矮雄,雌+矮雄という三つの性表現があり,種ごとにどの性表現をとるのか決まっています(ダーウィンの発見)。なぜこのように多様な性表現をもつのか調べています。

    3.エボシガイ類の自然史
     フジツボの仲間であるエボシガイ類には,潮間帯〜深海までの岩場・海表に漂う流木・他生物などさまざまな基盤を生活の場として,400種以上が知られています。甲殻類のくせに移動性を捨ててしまった彼らがどのような生活を送っているのか調べています。

    4.雌雄同体動物の繁殖生態

     アメフラシなど雌雄同体動物の繁殖を調べています。なぜ雌雄同体になるのか,雌雄同体特有の繁殖事情(オスとしてふるまう? メスとしてふるまう?),どのように配偶相手を選択するか,などを研究しています。

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個体集団生物学大講座 地球環境生物学 佐藤 宏明

群集および生態系レベルにおける生物多様性の構造・変動・保全に関する研究
(1)潜葉性蛾類の生態と分類
 幼虫期を葉に潜って摂食する昆虫を潜葉性昆虫と呼ぶ.中でも潜葉性蛾類は種数が膨大で,ゆうに数千種を越す.このうち私が研究対象としている潜葉性蛾類は,ムモンハモグリガ科、モグリチビガ科、ホソガ科の3科である.これらの蛾を中心として,寄主植物−蛾−寄生蜂という三者間の相互関係を研究している.加えて,これらの科の系統分類と種の記載もおこなっている。

(2)糞虫の生活史、行動、および種間関係
 80〜90年代はアフリカのタマオシコガネの行動生態学的研究をおもにおこなってきたが,最近は奈良県各地で糞虫の種構成,生活史,種間関係等を研究している.その中でも特に,植林地に新たに造成された放牧地を調査地とし,周囲の森林からどんな糞虫が侵入し、今後どのように糞虫群集が構造化されてゆくのかに興味を持ち,研究を進めている。

(3)大台ヶ原でのニホンジカの増加が生態系に及ぼす影響
 奈良県大台ヶ原では近年ニホンジカの個体数が増加し、樹皮剥ぎによる森林の衰退と,食被耐性のあるミヤコザサが広がっている.そこで大台ヶ原を管理する環境省は,ニホンジカの被害の拡大を防ぐために,2000年より森林の一部を柵で囲い始めた.この防鹿柵の設置は,ニホンジカの影響を排除した大規模な実験区をはからずも提供した.この機会をとらえニホンジカの被食について,以下の点に着目し,研究を進めている。
  • ミヤコザサの現存量に与える影響
  • ミヤコザサの生活史、とくに葉の展開に与える影響
  • ミヤコザサの葉の質にあたえる影響
  • ミヤコザサを寄主とする昆虫の種組成、多様性、生長量に与える影響

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