卒業研究に向けて

 子ども臨床学コースは、2008年度に新設され、まだ卒業生を輩出していません。
 ここでは、卒業研究・卒業論文の位置づけと、これまでの専攻でとりくまれた子ども臨床学領域の卒論の題目を紹介をします。

子ども臨床学における卒業研究・卒業論文の位置づけ

 卒業研究は、卒業時に提出する卒業論文のための研究です。卒論の提出と合格は、卒業要件となります。卒業論文は、子ども臨床学の修学の最終段階として、各自の関心や追究に基づき、学術を通した社会貢献を目指して、取り組まれます。

 子ども臨床学コースでは、卒業研究を進めるにあたって、コース担当教員のほか、総合心理学や身体コミュニケーション論など隣接領域の教員の指導を受けることができます。

 いずれの場合も、次の点を重視します。

1.子どもや社会の現実に根ざし、人々の生活や活動から問題を設定すること。または、生活や活動に還元可能な課題に取り組むこと。

2.基本的に、フィールドワークや観察や面接、実験、インタービューなど、対象と直接関わる手法を用いて、何らかの調査を行い、実証的な記述を行うこと。または、実際にオリジナルの音楽作品を製作し、その製作について論文を作成すること。

3.自らの卒業研究が、社会にいかなる点で資するのか、問うことを通して、子ども臨床学領域を研究することの意味を明確化し、提言の可能性を試みること。


旧専攻における子ども臨床学領域の卒業論文
これまで、子ども臨床学領域の卒業論文には、次のようなものがあります。( )内は年度です。

子どもの活動や問題解決に関すること

動物絵本における写実性が想像力に与える影響:子どもたちの物語作りを通して(2005)
5歳児における協同的問題解決の<合理性>:解決過程の変化に着目して(2005)
絵本の想起における子どもの被誘導性:大人の誘導に子どもはどのように反応するのか?(2004)
子どもは地図をどう描くのか:小学校1年生3学期・2年生2学期の36人のデータから(2004)
幼児はペット型ロボットとどうかかわるのか(2003)
幼稚園男児のいざこざに関する研究:あるクラスの9ヶ月間の縦断的観察から(2002)
「絵本の部屋」における幼児の活動の分析:一人で見るの、お友達と一緒に見るの?(2001)
遊び場面における幼児の自己主張のあり方(2001)


家族や仲間など人間関係に関すること

 家族関係
祖父母の孫に対する甘やかしについての基礎的研究(2006)
子育て中の母親の意識についての探索的研究(2006)
母親の語りからみる幼児と母親の力関係(2005)
生後1年間の母親としての発達:4人の初産女性の語りから(2004)
子育てにおける素朴な養育論の形成過程:母親の〈わかり方〉と問題解決に焦点を当てて(2002)
現代の母親の子育て意識:母であることに対する感情を軸に(2001)
親子関係は一方的な依存か?:大学生の「ギブ・アンド・テイク」の意識から(2001)
化粧の意味づけの違いにみる大学生の母娘関係(2004)


 仲間関係(幼児・児童・青年期前期)
4歳児クラスにおける子ども同士のいざこざについての研究(2003)
就学前女児の仲間関係:2つの時期におけるクラスメンバーの行動比較を通して(2002)
進学移行期における仲間関係の再形成過程:中学1年生の関係性の調節を中心に(2004)
中学生の葛藤場面における反応様式と対人関係のあり方について(2002)
中学生の友人関係における性差の特徴 (2001)


学校や授業など教育・保育のシステムに関すること

 保育場面
おやつを待つ時間のすごしかた:テーブルを囲む園児たちの行動分析(2004)
幼児の公の声を支える保育士の指導:みんなの前でお話して(2001)

 
就学移行期(小学1年生が学校になじむ過程)
小学1年生における“読むこと”を中心とした授業対話:多様な“読み”を通して(2005)
小学1年生における教室環境の学習資源化:日直活動の形成過程に着目して(2005)
小学校1年生における集団的コミュニケーション活動の生成:談話を「つなげる」ことをめぐって(2003)
子どもの環境移行に伴う課題の可視化と解決の過程:小学校入学期の変化を中心に(2002)

 
教科の学習
理科領域への興味と探索心についての研究:4校の高学年児童へのアンケート調査から(2003)
算数教授における理論呈示法と練習法の適切な組合わせ(2003)
小学校中学年における算数科談話への子どもの参加過程:発話の適切さの顕在化をめぐって(2003)
小学校4年生の音楽科授業における同期性・同型性の形成:「音を目で見る」活動を中心に(2006)
文学作品の教材化における教師による読みの選択と生徒との共有:高等学校現代文の授業を事例に(2006)

 
教師の指導や職業発達ほか
小学校教師のことばかけについての研究:1年生の算数・国語の授業観察から(2003)
教師による経験の成長資源化と職業観の変容:小学校教師のライフストーリーから(2004)

体育が苦手な人にとっての社会的環境の構成:得意な人の見方との比較から(2002)

生涯発達に関すること

 幼児期〜児童期
TVキャラクターの実在性に対する幼児の認識(2002)
子どもの信頼感と対人葛藤状況での反応スタイルの関連(2004)
子どもの異文化受容態度の発達的変化(2002)
子どもは人の成長をどうとらえているか:小学2年生と4年生へのインタビューから(2001)
外見からの年齢判断における小学生と大学生の違い(2004)

 
青年期
青年期女子における家族関係と心理的自立について(2006)
就職活動場面における大学生の自己形成のプロセス(2006)
女子大学生の食習慣の実態とその形成因(2006)
青年期における特定の個人に対する傾倒(2005)
女性大学生は自らの性をどのように生きているか:ジェンダー意識の統合に焦点をあてて(2004)
大学生女子における自分の身体との付き合い方に関する研究(2004)
転校という経験に対する意味づけはどう変容するのか:大学生のふりかえりから(2004)
占いが気になる心理:青年期における親和動機及び外的統制の観点から(2004)
現代青年の子ども観に関する研究:高校生・大学生に対するアンケート調査から(2002)
動物とのふれあいに求められるものとその要因:思春期におけるペット動物との関わり方から(2002)
同人活動に「はまる」ことの意味:自己の認識と開示に着目して(2003)

 
成人期〜老年期
若い成人期女性の「自己の問い直し」:「新たな移行期の語り」に注目して(2006)
成人期女性の錯綜的身体観:生殖医療受診経験者の語りをめぐって(2003)
老年期における「生き直し」の模索:定年退職を経験した合唱団員の語りから(2005)

発達障碍や特別支援、自立支援などに関すること

 発達障碍・自立支援
自閉症の人たちにとって仕事とは何か:本人・保護者・授産施設職員の視点を通して(2006)
アスペルガー症候群の子どものコミュニケーション:A君の一事例を通して(2005)
傷害事件の加害少年たちの事例から見た攻撃性の検討(2005)
児童養護施設入所児の用いる防衛機制:担当保育士へのインタビューから(2004)
精神障害者のセルフヘルプグループ参加における多元的意味:個と社会をつなぐ居場所としての価値づけ(2002)

 
子どもの自立(不登校・ひきこもりなど)
不登校の子どもの立ち直りに関わったと考えられる母親の変容過程について(2005)
子どもの不登校を体験したことによる親の価値観の変容(2005)
ひきこもりの心理に関する多角検討の試み:経験者からのレポートに基づいて(2004)
不登校児から見た不登校:不登校児たちの登校作品の分析から(2004)
小学生のいじめの認識:父母や友人はいじめにどう対処するのか(2001)
小学生の精神的健康と睡眠との関係(2001)


コミュニティや世代生成、ジェンダーなど共生に関すること

 コミュニティ
移行の物語における「沖縄」という紐帯:関西在住ウチナーンチュのライフストーリーから(2004)
供述の嘘を見抜く:浜松子ども虐待死事件から(2005)
学生寮における入寮行事の機能と意味:経験者の伝承をめぐる語りから(2004)
在日コリアン成人期女性のライフ・ストーリーに現れる自己の定位(2002)

 
ジェンダー・世代生成
不妊治療を経験した女性たちの語り:「子どもを持たない人生」という選択(2004)
性暴力被害からの<サバイブ>の過程:<サバイバー>の語りにみる社会的資源の活用に焦点をあてて(2006)
性的二分化を無化する性自認:<曖昧>という選択(2006)
職業的専門家の生活実践における理念の省察と活用:ジェンダー研究者のジェンダー実践の試み(2002)



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