(8月29日 午前)

 *お知らせ*
 質的研究法講習会A「『供述分析』の方法」およびC「子どもの観察と日誌的観察」は、
 まだ定員に余裕がありますので、当日参加を受け付けます。

 当日参加を希望される方は、第1日目の9時30分までに、
 大会参加受付とゼミナール参加受付の両方をおすませください。

 9時30分より前に定員に達した場合は、その時点で受付を終了いたしますので、
 ご了承ください。

ゼミナール一覧
質的研究法講習会
A.「供述分析」の手法
B.会話分析からライフストーリー研究へ
C.子どもの観察と日誌的観察
フィールド講習
D.奈良でナラティヴ・プラクティス

A〜C 9:45〜12:00
D    9:25集合、9:30開始


なお、当日の受付は、9時からとなっております。
プログラム開始時間の前後には、受付が混雑することが予想されますので、
時間 にゆとりをもってお越しくださいますよう、お願い申し上げます。


質的研究法講習会

A.「供述分析」の手法 (N301) (定員:約100名)

講 師:浜田寿美男(奈良女子大学)

 日本の刑事裁判における供述分析は、多くの場合、供述調書という文書のかたちでまとめられたものをテキストにして、それを分析対象にせざるをえないという制約下にあります。しかしその制約を前提にしたうえで、分析を徹底すれば、そこにけっこう面白い世界が広がっていることに気づきます。それにまた現実の事件で、この供述分析の手法を用いた心理学鑑定が求められることが少なくありません。おそらくは今後裁判員制度が実施されるなかで、その需要はさらに高まるものと思います。今回は、電車内痴漢事件の被害者調書を読み解くことで、その面白さの一端を知っていただければと思います。もっともこの「面白さ」は単純ではありません。面白くて、やがて哀しき、というところでしょうか。



B.会話分析からライフストーリー研究へ (N202) (定員:約100名)

講 師:山田富秋(松山大学)

 この講習会では、いまでは質的分析の一手法として確立した感がある「会話分析(Conversation Analysis)」について、まったくの初心者にもわかるように、会話分析の基本的な考え方を紹介したいと思います。すなわち、発話順番取得システムからスタートして、隣接対の概念を紹介し、物語の組織化まで解説します。その後、会話分析とフィールドワークを組み合わせた制度的状況の会話分析について、具体的な研究を通して概説します。 講習会の後半では、アクティヴ・インタビューの概念に基づきながら、会話の方法に焦点を置いた会話分析と、会話において語られる内容、つまり物語(ナラティヴ)に焦点を置いたライフストーリー研究を、どのようにしたら架橋できるのかについて探求しようと考えています。

参考文献:好井裕明・西阪仰・山田富秋編『会話分析への招待』世界思想社
       J.ホルスタイン・J.グブリアム共著『アクティヴ・インタビュー』せりか書房



C.子どもの観察と日誌的観察 (N303) (定員:約80名)

講 師:麻生 武(奈良女子大学)

 私はこれまでに3つの形で観察を行ってきました。一つ目は、息子の日誌的観察です。二つ目は、プレイルームの中でのやりとりの記録です。三つ目は、幼稚園園長として遭遇した園児達の観察記録です。いずれも肉眼による参与観察によって記録したものです。ダーウィンは、観察にはそれをリードする理論が必要だと語っています。しかし、私の観察には、具体的な理論が先行して在るわけではありません。後に観察文を読み返し、分析することで、何かを発見しあわよくば理論を作り出せることを意図した観察です。それは発見のための観察です。ダーウィンもビーグル号にのってガラパゴス諸島の観察を行っていたときには自然淘汰という大きな理論はまだ持ち得ていなかったことは間違いありません。後から発見するために観察する。しかもそれを参与観察で行う。そのようなことは果たして可能なのでしょうか。私は、観察文はナラティヴだととらえています。観察とは、世界、私の前に私に先立ってあり私の前に開かれてくる世界を、他者に追体験可能な世界として描くことです。そこでは、「私」と「他者」とが、共有し合える「共同化された世界」を「構築」することが目指されているわけです。ナラティヴを共有し合うために、独特の「観察ナラティヴ」という語り方があるのではないのでしようか。まだ答えはありません。参与観察を行っている方、また参与観察法によって研究しようとされている方などのお集まり頂き、観察とは何か、学問の根幹についてご一緒に考えることができればと願っています。



フィールド講習

D.奈良でナラティヴ・プラクティス (集合場所 N101) (定員:約40名)

講 師:武藤康弘(奈良女子大学)
企画者(引率):森岡正芳(神戸大学)

 会場の奈良女子大学近辺はそのまま神話的古代です。いうまでもないことですが、フィールド研究、現場心理学を志す私たちはまずは自分の体で、現場の空気を感じ取り、その体験が自分の言葉として定着するまでくり返しその場に足を運ぶことが求められます。空間の実践は同時に人と人、人と環境をつなぐ営みです。奈良という場所は奥深い。多様な時間が交叉し沈潜しています。奈良の祭儀に詳しい気鋭の文化人類学・民俗学者武藤康弘氏にエスコート願い、この土地との語り合いを深めたいと思います。