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奈良女子大学文学部人間科学科「差異と交感の人間学」プロジェクト 第4クラスター「ロマン主義と新しい教育・新しい科学」主催 公開研究会開催のお知らせ

 

ケアの倫理と純粋贈与 一ケアのアマチュアリズムを讃えて一
「ケア」という言葉は、毎日のように目にしたり耳にする日常的な言葉に なっている。このケアをケアたらしめているものとは一体なにか。もちろん この問いへの答えは、発表全体での議論を通して為されるべきことであるが、 ここでは仮説的に提示しておこう。シンプルなケアの例を考えてみよう。
喉が渇いた人に、一杯のお茶を供するという例である。日常的な営みとも いえるが、ときとして最上のもてなしともなりうるし、場合によっては、その人に 生きる活力と喜びをもたらしたり、深い慰めと温かい癒しをもたらしもするだ ろう。 「一杯のお茶を供する」ことは真性のケアの一つであるといつてよい。 この人のためにして「あげる」、「与える」というところに、ケアの中心がある といえないだろうか。このときお茶を供された人が、「ありがとう」と感謝の言葉を口にする。それはお茶を差しだした人を嬉しくさせるだろう。それだけ でなく、この客人はさらに貨幣を差しだしたと考えてみよう。そうすると、その とき、場にそぐわない不作法な事態が出現することになるだろう。ケアの「与える」ことにたいして、貨幣で返礼することはできないのだ。友人の親切な .行いにたいしてお金を支払 うものがいないのと同じだ。誰もが知っているケアの この性格に、ケアを職業としている人たちが直面している問題の根があるのではないだろうか。
 発表では、「与える」という出来事に焦点をあて、贈与と交換という観点から、ケアが「与える」ものとはいったい何か、ケアにおける互酬性とはどのような 事なのか、またケアを職業とするときその報酬はどのように理解すればよいのか について考察し、「ケアの倫理」の新たな可能性を示したい。そしてケア本来の 過剰で豊穣な力を解放したい。
 
話題提供 :矢野 智司 (京都大学)
 
日時 :2013年3月7日 (木)15時~18時
場所 :奈良女子大学 コラボレーションセンター3F
Z306講義室 (放送大学が入つている建物です ご興味のある方はどなたでもぜひご参加 ください。)
 
矢野智司 :京都大学大学院教育学研究科教授。教育人間学。『自己変容という物 語』 (金子書房)『動物絵本をめぐる冒険』 (勁草書房)『意味が躍動する生とは 何か』 (世織書房)『贈与と交換の教育学一漱石、賢治と純粋贈与のレッスン』
(東京大学出版会)など著書多数。
問い合わせ先 :文学部人間科学科 辻 敦子 (内線:3333)

 

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