稲葉カヨ氏武田医学賞受賞記念祝賀会開催当日の概観
      

  平成28年3月5日(土)、早春を忍ばせる暖かい日差しのもと、稲葉カヨ氏武田医学賞受賞記念祝賀会が奈

良女子大学同窓会佐保会・一般社団法人佐保会の共催で行われた。祝賀会は、次のように午前の部の講

演会と午後の部の懇親会の2部構成となった。


第1部:記念講演会

     演 題 「免疫の始動 −樹状細胞とともに歩んだ道− 」
     日 時  平成28年3月5日(土) 10:30−12:00
     場 所  佐保会館2F大ホール
     受講者  140名以上


  佐保会会員の稲葉カヨ氏(京都大学副学長・理事)の武田医学賞受賞記念講演会は、齊藤祝賀会実行委

員(以下委員と記す。)の司会のもと開始された。講演会に先立ち、疋田一般社団法人佐保会理事長、今岡

奈良女子大学学長の挨拶があった。その後、壇上に立たれた稲葉カヨ氏は「免疫の始動 −樹状細胞とと

もに歩んだ道− 」というテーマで、情熱をこめて講演された。本講演の要旨は、次の通りである。

  稲葉カヨ氏は奈良女子大学理学部生物学科植物学専攻を卒業後、在学中に受講した当時の京都大学教

授村松繁氏の講義に刺激を受けて、京都大学大学院理学研究科動物学専攻に進学し、免疫生物学への道

を歩むこととなった。

  私たちの体には細菌などの病原体から体を守る「免疫」の機構が備わっている。細菌やウィルス等の病原

体に対して、ナチュラルキラー細胞やマクロファージが病原体を退治する。このしくみを「自然免疫」という。

その後、ヘルパーT細胞から指令を受けたB細胞が、感染した病原体に対して特異的な抗体を産生し、私た

ちの体は「一度かかったら、二度かかりにくい」という抵抗力を持つようになる。これを「獲得免疫」という。自

然免疫で得た病原体の情報をヘルパーT細胞に伝える(抗原提示)のは、長らくマクロファージであると信じら

れてきた。稲葉カヨ氏は、ロックフェラー大学のラルフ・スタインマン博士(2011年ノーベル生理学・医学賞受

賞)との共同研究により、樹状細胞こそが抗原提示をする細胞であり、自然免疫と獲得免疫の橋渡しをする

細胞であることを証明した。また、回収の難しかった樹状細胞を培養により増殖させる方法を確立したことに

より、樹状細胞を癌治療などに用いる道が拓かれ、臨床的にも期待されている。これらの研究成果により、

稲葉カヨ氏は2014年には「ロレアル・ユネスコ女性科学賞」を受賞した。

  聴衆は、樹状細胞の機能について興味をひかれるとともに、稲葉カヨ氏の実験スケジュールに驚き、実験

が面白くてたまらないという気持ちが溢れ出た笑顔に深く感動した。近年は京都大学で副学長の激務の中

におられる。最後に示された「ま、いいか」の言葉。しなやかに、嫋やかに、そしてたくましい稲葉カヨ氏の精

神に会場は魅了された。


第2部:懇親会

     日 時  平成28年3月5日(土) 13:00−16:00
     場 所  大学会館食堂(生協食堂)
     参加者  84名


  懇親会には佐保会員を中心に、一部大学関係者、佐保会関係者あわせて84名が参加した。会は、清水委

員の司会のもと、祝賀会に相応しい華やいだ雰囲気の中でスタートした。最初に川ア実行委員長の挨拶、

そして井上奈良女子大学副学長の祝辞があった。次に、稲葉氏の奈良女子大学在学中の恩師でもある和

田先生による乾杯の挨拶と発声を合図に、生協の特別メニューによる会食へと移行した。おいしい料理の

数々を楽しみ、お互いの再会を喜び合う人、近くの人と親しく談笑する人と和やかなムードで会食が進んだ。

続いて、奈良女子大学音楽部によるコーラスがあった。全国コンクールで優勝をした若さ溢れる美しい歌声

で、途中、手拍子をしたり、一緒に奈良女高師校歌を合唱したり、参加者全員で歌の輪を広げた。圧巻は、

野口委員のコーディネートによる稲葉氏を囲んでのトークイベントであった。ここでは稲葉氏のお人柄、学生

時代の話などが披露され、稲葉氏を一層身近に感じることができた。最後に、参加者全員から稲葉氏に花

束と記念品を贈呈した。花束をお贈りしたのは、稲葉氏の後を追い岡崎市の研究所で研究をする若い佐保

会員亀水さん、記念品は、稲葉氏と同じ京都支部所属の中井委員であった。同窓生稲葉氏の快挙をお互い

に喜び合った楽しいひと時もあっという間に過ぎ、高津委員による閉会の辞で懇親会は盛会のうちに終了

した。