SSHサイエンス基礎講座1「日本古代を科学する」開催される
〜考古学・古代史学・仏教思想史研究の第一人者3名の夢の競演〜
 5月31日(土)午後、SSHサイエンス基礎講座1「日本古代を科学する」が本校多目的ホールで開かれ、考古学・古代史学・仏教思想史研究の第一人者である、新納泉 氏(岡山大学)吉川真司 氏(京都大学)西山厚 氏(奈良国立博物館)の三氏による講演とシンポジウムが行われました。あいにくの雨模様でしたが、生徒、保護者、教職員を中心に150名近い参加者が、三氏三様の学識豊かな講演に聞き入りました。

 講演会は、本校副校長勝山の「今日は金メダリストが3人そろいました」との挨拶で幕を開けました。

 最初に新納氏が、「考古学が語る真理とは−教科書の背後に隠された真理の追究‐」と題して講演されました。氏は、古墳時代の教科書記述の変化の背後にどのような学問的追究があったのかを、いわゆる「天皇陵」古墳についての理解の変遷や円筒埴輪の編年、また自らたずさわった「三角縁神獣鏡」研究の深化の過程からわかりやすく話され、遺物や遺跡を正確にとらえることの大切さ、歴史は決まりきった暗記ものではないことを強調されました。

 続いて吉川氏は、「歩いて考える古代史」と題し、奈良時代に作られた「東大寺山堺四至図」を読み取りながら、羂索堂(現三月堂)と大仏殿等の東大寺における新旧関係、水源と閼伽井等の話を例に、古代の人々の生活と精神世界を明らかにされました。最後に当時の「人家」の記載の場所が本校の校地であったという意外な発見で会場もどよめきましたが、氏は、現在見える景観や風景の背後に歴史があるというものの見方が大切なことを述べられました。

 最後に西山氏は、「日本古代の仏教思想」のテーマで、興福寺の阿修羅像の差し上げた手の意味、また東大寺の大仏づくりの背後にある思想、そして鑑真和上の渡日の意味(これは「なぞ」の状態で終わりましたが・・・)、「縁起」「慈悲」「回向」等を独特の語り口で紹介されました。氏は、「物の背後にある心こそが大切である。そこに私は興味がある。」「古いものほどいいものに思えるのはなぜか。」と現代の私たちの生活への問いかけもしておられました。

 講演のあとは、奈良文化財研究所の山本崇氏の司会で「シンポジウム」へ移りました。シンポジウムでは、「モノ」をキーワードにしつつ、互いの講演内容に立ち入りながらの三氏のコメント、そして学生へのメッセージが述べられました。また、文系理系と分けて考えるのではなく、両者を融合した発想が大切との指摘もありました。

 その後のフロアーからの質問では、「卑弥呼の金印は箸墓にあるのでしょうか?」といったものから、中学生の「絵図を見ると人家は2ヶ所しかないが、本当にそれだけだったんでしょうか」といった素朴で鋭い質問にいたるまで、司会の山本氏も含め各氏が丁寧に答えてくださり、最後は参加者の大きな拍手で講演会を閉じました。


 以下は参観者の感想です。

 「ちょっとした言葉にも注目して教科書を読んでみるとおもしろいかなと感じました。地図を見るのは正直言うと好きではなかったんですが、実際現地へ行ってみると、行かなければわからない何かがわかると思うので、機会があれば歩いてみたいなあと思いました。仏教のお話は難しかったはずなのに、とてもおもしろくて興味を持ちました。歴史的事実を頭につめこむだけだとつらいと思うのですが、背景にあるものを考えて、楽しく歴史を勉強したいと思うことができました。」(5年生徒)

 「自分が今いる場所の下に遺跡があったり、身近にある寺、仏教の考えの奥を知れたり、あるいは教科書は学問研究のうわずみに過ぎなかったりしているから、もう少し視点を広げて、その下を見ればさまざまな興味の対象が広がっていることを実感できた。それを考えたうえで進路選択をしていきたいと思う。」(6年生徒)

 「どれだけ小さなものでも、何かヒントになり無関係にはならない。ものには関係のないものはなく、形のあるものもないものも必ずさまざまな関係をするということが、あまりにも単純なことであるがすばらしいことだと思った。」(1年生徒)「教科書ができるまでにさまざまな研究があることに驚きました。新しい研究の結果により、教科書や歴史ががらりと変わるのであれば、歴史を学ぶうえで、歴史を丸暗記するよりも、それにいたる思考力を鍛えることが大切だと思いました。世界中の人が、仏教を知り、よいなと思うことが本当に世界を救うのではないかと思いました。見えないものを感じとれるようになりたいです。」(5年生徒)

 「東大寺山堺四至図のいろいろな視点から、山を描く構図がおもしろかった。昔の人も頭をしぼって考えて描いた結果がこうなったんだろうなあ。無機質に感じていた宗教や歴史に人の思いが通っていることがわかっておもしろかった。(光明皇后の宝物の寄付、鑑真の来日)3先生ともに好奇心というか知るということに対して貪欲だなと思った。あと、西山先生の人柄や思考がすごくおもしろかった。講演に本当に参加できた気持ちになれた。」 (4年生徒)

 「本当にすばらしく充実した講座でした。ありがとうございました。盛りだくさんな内容で、頭の中をいろんなことが渦巻いています。先生方のお話を聞きながら、

  • 昨年の正倉院展での感動(工芸品、書、衣類等)当時の人々の息づかいを感じました。
  • 佐保川の水生昆虫を子供が小学生だった頃の夏休みの自由研究でたどり、佐保小から春日山原生林のうぐいす滝までたどったこと。
  • やはり子供の小学生のときに参加した市民講座で「奈良の歴史」を現地をたどって歩いたこと。古墳の丘に登ったこと などなど思い出していました。「形の背後には心がある。・・・論理がある。」知の遊び、探検のひとときをありがとうございました。」(保護者)
 「今回はテーマが奈良であり、科学に縁遠い私のような保護者にも非常に身近な講座で大変面白かったです。同じ保護者の先生方のお話で、今後もどんどん生徒だけではなくわれわれ保護者にも科学や学問に触れる機会をいただければいいなと感じます。SSHというと、理科系に偏るものと思って、私のような文科系の人間には違う世界の感がありましたが、今回のテーマのような科学であれば、どんどん参加させていただきたいので、開催のご苦労は少なくないとは思いますが、広い分野でのSSH活動をお願いします。」(保護者)

 講演会に協力していただいた先生方をはじめ関係者の皆さまありがとうございました。