プレゼンする確率の学習
代数・幾何II 2009.3
きっかけ
SSHの発表会で、生徒たちがいきいきとポスターセッションをしているのが気に入った。サイエンス研究会の生徒たちだけでなく、みんなが経験するとよい場だと感じた。
人前での発表は、いろいろな教科や総合学習でやっているものの、発表者が恥ずかしがったりして、見ていて歯がゆい。
でも、このポスターセッションならホンノ数人に対してのプレゼンだから、それほど緊張することもなく、たいていの生徒なら、いい発表ができるのではないかと考えた。
計画(主なトピック)
- 確率の授業の前に、問題に挑戦!?
- サイコロを1万回振ろう(大数の法則を確かめる)
- ミャンマー語のテスト(反復試行の実験)
- 天気予報(条件付き確率)
- 悪魔のささやき(期待値が無限大?)
- 研究課題のプレゼンテーション!!
確率の授業の前に、問題に挑戦!?
授業計画
1時間目:問題を班(4人班を10班)に1つずつ提示し、解決する。次回のプレゼンに向けての準備
2時間目:班を2つにわけ、前半・後半のプレゼンを行う。評価シートを記入
3時間目:評価シートで振り返り、「よいポスター」を作成する

1時間目の様子
議論が始まる。わからない問題で思考を停止していた班も、実際にやってみることで解決への道を歩みだした。
生徒が挑戦した11の問い
- ある夜、タクシーがひき逃げをした。その街で営業して
いるタクシー会社はグリーン社とブルー社の2で、次のようなデータがある。
@ 街を走るタクシーの85%はグリーン社の緑の車で、残りの15%はブルー社の青い車である。
A 目撃者は「青のタクシーがひいた」と証言した。夜の事故という状況で目撃者の証言がどれくらい信頼できるか法廷でテストしたところ、2つの色を正しく識別できる確率は80%、間違える確率は20%だった
では、事故を起こしたタクシーがブルー社のタクシーである確率はいくらか。
- 1000人に1人の割合で感染する病気の検査をするとき、5%の人は感染していないのに陽性と判定される(偽陽性)。兆候や症状は何も見られないのに陽性と判定された人がいた場合、その人が本当に病気に感染している可能性は何%か。
- 2人の会話。2人とも女の子である確率は、それぞれいくらか。
@ 「子どもはいますか?」「ええ、2人」「女の子はいますか?」「ええ」
A 「子どもはいますか?」「ええ、2人で、6歳と10歳です」「上は女の子ですか?」「ええ」
B 「子どもはいますか?」「ええ、2人」翌日、女の子を一人連れているのを見かける「お嬢さんですか?」「ええ」
- テレビのゲーム・ショー。目の前に並んだ3つのドア。1つは車で当たり、2つはヤギではずれ。あなたは、あたりと思うドアを選ぶ。すると司会者が残りのドアのうち、ヤギのドアを開けてみせる。
「2番目のドアに選びなおしますか?」
さて、どうするのがよいか。
- A,Bの2人がじゃんけんをすると、1:1でAが勝つ。
じゃんけんを何回かして、先に3勝した方が賞金を受け取ることにした。勝負をするとA,A,Bと勝ったが、時間切れでこの勝負をやめなければならなかった。このとき、賞金3000円は、A,Bの2人でどのように分配すべきか。
注意:賭博罪(185条)賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。
- 3枚のカードがあり、1枚は両方とも赤、1枚は両方とも白、1枚は片面が赤でもう片面は白。この3枚のカードから1枚選んで置いたところ、上面は赤であった。このカードの下面も赤である確率はいくらか。
- 高校野球では、対戦相手をくじ引きで決める。しかし、その前に、くじ引きの順を決めるための予備抽選を行う。これは、必要な行為か。
- 4つのサイコロを振ったとき、4つとも6でない目が出る場合と、1つでも6の目が出る場合で、賭けをする。このとき、どちらに賭けるのが有利か。
- ○×問題が10問ある。何も考えずに、でたらめに答えたら、次の2つの場合、どちらが起こりやすいか。
@ 6問正解する
A 7問以上正解する
- 男女6人ずつのクラスがある。机は2つずつ並んでいる。くじ引きで席替えをしたところ、どの席も男女のペアになった。これは、不正行為があったといえるか。
- お祭りで、利き酒大会をしていて、下戸のお父さんが出場することになった。5種の酒を言い当てるのだが、全部外す確率は、50%よりも高いか低いか。
問題毎にプレゼンテーション

2時間目の様子
テーブルごとにプレゼンが始まる。意外な結果に、何度も首をひねったり、質問したり。短い時間だったので、すべてのプレゼンをみることはできなかったが、充実した時間を過ごした。中には、一見矛盾する質問をされてたじたじになる班もでた。
数学的な満足度とプレゼンの満足度の評価をして終わる。
「よいポスター」

生徒による投票で「よいポスター」に選ばれた3枚
前回の評価をもとに、自分たちの班の評価をまとめる。
さらに、「よいポスター」作りをする。これは、廊下に掲示するためのポスターで、前回と異なり、ポスターだけで読み手に分かってもらわなくてはならない。一体よいポスターとはなんだろうか。
最初のクラスでは、「よいポスター」とだけ提示した。あまりに工夫がないので、他の2クラスは、「タイトル・結論・文字の大きさと量」に注意するように促した。結果は、歴然としている。
サイコロを1万回振ろう

100個のサイコロを数える
大数の法則は、簡単な説明はするが、実感を伴いにくい。貴重な時間を割いて、なんと1時間サイコロを転がし、数え続けた。10班がそれぞれ1000回振る。
そして、考察。
- 最初の1回ずつ振っていくときは、確率の変わり方は1/10の位でかわっていたが、100回目ぐらいからは1/100の位が変わっていて、1/10の位が全く変化しなくなったので、多くのデータをとった方がいいのはわかった。1の目が出る確率と適当に選んだ6の目が出る確率は1/100の位が1ちがっただけで、0.166…=1/6に近かったので、サイコロの目が出る確率もだいたい同じだと考えられる。←この優秀な考察は、1人だけだった
- サイコロを振れば振るほど、確率は低くなっていき6分の1に近づいていく。人数的に1万回が限界だったけれど、10万回くらいやったら本当に6分の1になっていくと思う
- 大量に計算してて気い狂いそうになった。でも、10000の時のP(B)がまさかの5000になって、すごく興奮した。大数の法則が実感できてよかった
- 試行が多くなるごとに安定はしてくるが、1/6に近づいてはいなかった。最終的に0.02も違った(一番多い1と、少ない4)
- 100回までは確率の値が安定してなかったけど、1000回やったら安定していって、不思議だなあと思った。実験がいかに大変か身にしみて分かった
- 試行の回数が少ない間は、1回の結果の誤差の割合が大きくなるため、理論的に考えられる新の値から確率がかけ離れたものになりやすいが、試行の回数が増えるにつれてどんどん1回あたりの誤差が減っていくため、結果が理論値に近づく。理論値と実際の試行の誤差が試行の回数によってどんどん減っていくのをグラフなどで表すことができたら面白いんじゃないかなと思った。
- サイコロを振れば振るほど、確率は低くなっていき6分の1に近づいていく。人数的に1万回が限界だったけれど、10万回くらいやったら本当に6分の1になっていくと思う
- 本当に回数を増やしていくごとに、その真の割合に近づいていくというのは、面白いと思ったが、その真の割合にはならないんだろうなと思った
- 1〜3までの目が出る確率は、計算でやれば1/2(50%)なのに、実験だとだいたい47%くらいだった。目のところがくぼんでいるサイコロだったので、目の数によって面の重さが違うのかなと思った
- サイコロを振ってるときは楽しいけど、計算がめんどくさかった
- 10000個のデータが取れる機会はめったにないので、楽しい機会だった
ミャンマー語のテスト

真剣にテストを受ける人あり、すべて同じものをマークするものあり
ミャンマー語のテストを実施。50問二択。試験前に結果を予想させた。誰もミャンマー語を知らないのに、0点や50点を予想する班がいる。生徒って、そういう感覚なんだ。

試験の結果。色はクラスの違い
1問1問が独立試行であることを抑えて、反復試行の考え方を求めた。感想などを書いて、ワークシートを提出してもらうと、「あのテストは、独立試行でない」という意見がいくつかあった。文字を観察して、この問題がこっちなら、あの問題はこっちと、いうように、考えて選択していたらしい。だから、試験時間がかかったのだ。なるほど。
天気予報
工事中
課題研究のプレゼンテーション!!
計画
- 課題を見つける(宿題)
- 研究方法を考える(宿題)
- 研究する(1,2時間+α)
- ポスターを作る(よいポスターを意識して作る)
- プレゼンの練習(4人班で、プレ・プレゼンテーション)
- 本番!(2時間)
課題を見つけることは非常に難しい。前にやった11の課題の中のいくつかは私自身が考えたが、解けそうな問題でなければならない。生徒には、その見分けはつかない。ポーカーや麻雀、ババ抜きなど面白い題材は見つけられても、それは解決できる課題なのだろうか。
自由に考えさせるだけでは、座礁してしまう船もでそうなので、「往復書簡」を使って、課題研究のやり取りをした。中には、確率を求められるものの「それがどうしたの?」としか言えない課題とか、「全然確率と関係ない」というものまで。私は、大変無謀なことをしているのかとちょっぴり後悔した。
でも、それがいいんだと思った。「確率ってなんだろう」って、考える場がここにある。授業でやっている問題は解決できる問題だけど、身の回りの問題は一筋縄ではいかないことがわかるだろう。解決するにも、ちょっと数を少なくしたり、具体的に考えたりすることが、「数学的リテラシー」的にも大事だなあと気づく。

研究風景。多くの生徒は、紙面とにらめっこ。実験する生徒もいる。

発表風景。1発表5分から10分程度。間違いが発覚することもあり。
ポスター作品はこちら
発表を終えて
初の試み。どうなる事かと少し心配したが、思った以上に生徒のいきいきとした発表が印象的であった。生徒の感想がすべてを物語るであろう。
- 時間が足りなかった。ほとんどの人が期待値のところで疑問が残ったみたいだが、目標にしていた結論については理解してもらえた。結論を言った時の反応が良かったので、良かった。・・<略>・・。他の人の発表は、課題が面白いものや、とてもわかりやすく説明する人がいて、とても勉強になった。また、やりたい。ちなみに期待値の出し方を家でもずっと考えていたので、テスト勉強がおろそかになってしまった。
- 自分の知りたいことが知れてよかった。同じような問題でもわかりやすいものもわかりにくいものもあった。説明する力も必要だと思った。ポスター作りではどのように書いたらわかりやすいかとか考えることが意外に多くて苦労した。でも、結構満足している。他の人の発表も聞いてみたかったし、多くの人に見てもらいたかった。時間が少ないのが残念だった。結構身近に多くの確率があると分かった。あと、数学的な考えと現実では違ってくるのもあった。
- 説明しながら、「ちょっと単純すぎたかな・・・」と思った。最初はうまく発表できなかったけど、2回目、3回目からどう言ったらみんなが理解しやすいか分かってきて、うまくできるようになったと思う。こういう機会があるのはすごく面白くていいと思いました。みんなの発表も、テーマも面白かった。
- 最初にしたプレゼンがあまりうまくいかず、説明方法が悪かったと反省して、2回目以降は、「重要な部分をゆっくり、きちっと。そうでない部分は省いてしまうくらいの勢いで」やったので、その後はうまくいった。説明ばかりだと、わからなくなっても泊めてもらいづらいし、発言しにくいので、1つ重要なことを言ったあとには、聞いている側に、理解できたかの確認をすることも大切なことだと思った。
- 相手に思ったように伝えるのが難しかった。最初は練習したように読んでいただけだったので、理解してもらえないのかなという部分もあったけど、回を重ねるごとに、ここは丁寧に説明した方がいいのかという部分が分かって、説明できたので、とても楽しかった。聞いている人に、意見や突っ込みを入れられたのが、きちんと聞いてもらえているということが伝わってきてうれしかった。
- 途中でまりが意に気づいて、発表というか議論になってしまった。結局結論は出なかったのだけど、「どこが間違っているんだろう・・」と数人で議論するのは、なかなか面白いなあと思った。確実にちょっとずつちょっとずつ答えに近づいているような気がするのに、なかなか答えがつかめないのが楽しい。<略>確率を考えるのには、日々の生活での感覚も大切だなあと思う。
- 説明自体はまあまあうまくできたが、少し早くなったかもしれない。3買うぐらい発表して、相手は違っていたが、同じことを何回も説明するという経験はあまりなく、少し変な気分だった。でもよい経験になった。他人の発表を見てると、感心するものも多く、面白かった。僕と同じテーマの人も何人かいてたようなので、少し驚いた。発表を通して、確率というのは身近に多く存在するということを知った。発表をしたり、聞いたりして、良い経験になったと思う。
他の感想は、言葉足らずで、語る力が不足しているなと感じました。「語る力」を付けるにはどうすればよいかというのが、次の私のテーマになりそうです。
この課題は、(とりあえず)次の5つの価値があるようです。
- 同じ発表を何度も重ねることで、よい発表に改善する機会がもてた
- 他の人は知らない課題なので、聞く方も興味を持って聞くことができた
- 少人数なので、それほど緊張することなく、発表する・議論する・質問する楽しみを感じることができた
- 1人1課題で、確率を身近に感じることができた
- 確率について、各自が正面から取り組むことができた(与えられた問題を解くのではなく)