| (1) 目標 | (2)授業の流れ | (3)なぜMathematica か? |
| (4)ツールの使用方法 | (5)考察 | (6)生徒の感想と考察 |
ここで,kはf(x)=上の点(0,1)における接線の傾きであることを理解させる.そして, このことを利用して,k=1となるようなaの値が存在するかどうか,またそのときaのだいた いの値をMathematica で調べようということで実験に入る.
生徒が実験した結果は,以下の通りである.
Plot[{2^x,x+1},{x,-1,1}];
Plot[{2.5^x,x+1},{x,-0.1,0.3}];
Plot[{2.7^x,x+1},{x,-0.05,0.05}];
Plot[{2.71^x,x+1},{x,-0.05,0.05}];
Plot[{2.72^x,x+1},{x,-0.05,0.05}];
Plot[{2.72^x,x+1},{x,-0.01,0.01}];
これで,k=1となるようなaの値が存在することが直観的にわかり,しかもその値が
ほぼ2.72であることもわかった.そこで,eは
を満たす数なので,xが0に近いときは
であることを確認する.そして,eの値をより詳しく求めるにはどうすればよいかを 聞くと,生徒はMathematica で右のようなグラフを描いた.
Plot[(1+x)^(1/x),{x,-0.000001,0.000001}];
さらに,eの値を求めるのに,生徒はグラフを描くことを選んだが,場合によっては 数値計算を行って求めたいときがある.そのようなときもMathematica なら簡単にで きるので,ソフトを変える必要がない.
Table[{n,N[(1.+1./n)^n,100]},{n,10000,100000,10000}]//TableForm
10000 2.718145926824356
20000 2.718213874533063
30000 2.718236525151221
40000 2.718247850713177
50000 2.718254646133539
60000 2.718259176476247
70000 2.718262412417291
80000 2.718264839374622
90000 2.718266727074599
100000 2.718268237197528
上のようにTableという命令は簡単に計算を繰り返し,それを表の形で表示できる.
生徒は,Plot,Tableのたった2つの命令だけで,いろいろと数学する事ができる.Mathematica は非常に高機能な大工型ツールであるが,もっている機能をすべて使おうなどとは思わず,必要な機能だけを使えばよいのだ.
また,一般的にMathematicaの命令は数学的な意味とつながるので,生徒も使いやすい.グラフ電卓でわけのわからないボタンを押すのとは違う.Mathematica の命令を自分で入力するということは,コンピュータに数学をさせることである.したがって,まず自分で数学しなければならない.そして,Mathematica を使うことでさらに数学するのである.
SetOptions[Plot,AspectRatio->Automatic,
PlotStyle->{Thickness[.006],Thickness[.001]},
GridLines->Automatic];
この文のどこかでクリックしてenterを押すと,その後は生徒はPlotのオプションを気 にしなくてもよくなる.
また,,y=x+1よりyを消去して,=x+1.よって,-x-1が原点で接するよ うなaの値を求めればよい.このことから,次のようなグラフを描かせてもよかった と思っている.
Plot[2.7^x-x-1,{x,-.1,.1}];
Plot[2.7^x-x-1,{x,-.01,.01}];
Plot[2.7183^x-x-1,{x,-.001,.001}];
Plot[2.7183^x-x-1,{x,-.00001,.00001}];
高校3年生(1995年度)における1学期のMathematica を使った授業の代表的な感想は,以下の通りである.
@楽しむだけで内容が頭に残らないことがたまにある.一方,とても印象的で何年
たっても忘れないようになることもある.
A授業で各自が描いたグラフなどがプリントアウトできて各自のものになれば,復
習もできてめっちゃ良いのではと思う.
B昨日のように自分でプログラムをして(注:命令を自分で入力すること)グラフ
を描いたりするのが良く,単に数字を変えて実行するだけでは,あまり面白くな
い.
Cすぐ視覚化できると納得できる.桁数を変えたり,xの値を変えたり,範囲を変え
たりということで,具体的に何が変わるか,ということが,自分で計算する,プロ
ットするという手間が省けて考えられるので,考えがまとまりやすい.
Dアイデアが思い浮かばなかったり,こちら側から定義域を指定しないと,自分の
思い通りのグラフが得られない.
E計算はMathematica がやってくれるから,と思ったら,気軽にアイデアがでてい
い.
FMathematica を使うための予想を立てるのと,うまくほしい結果を出すために適切
な命令を下すのが難しいが,それさえすれば,非常に便利で数学が面白くなると思
う.
G使える人はとても楽しそうだけど,使えない私にはちょっとつまらない.やっぱ
り人間には手があるのだから,手を使うことがいちばん!!
(2)考察
感想の@は,コンピュータ利用の授業の問題点を端的に指摘してくれている.「コ
ンピュータを使うと,生徒は楽しむだろうが,学習したことが頭に残っているの
か? 本当に力はついているのか?」という,いわゆる数学教育からの指摘がよく
ある.これについては,「いままでよりは力はついている」と断言する自信はな
い.しかし,授業をする際には,
・必ずワークシートを用意して自分の手で学習内容を書き込む
・コンピュータを使う前に自分の手で計算させる
等の配慮は行っている.このようにした上で,生徒が楽しいといってくれれば,文
句はないと考えている.
感想のAは,これからの授業の改良点を示してくれている.MacintoshはLocalTalkを
装備しているので,この方向で検討していきたい.
感想のBは,生徒自身がMathematica を大工型ツールとして使いこなしたいと思って
いることを示している.教師がMathematica でプログラミングして,生徒に金槌型
ツールとして使用させることを嫌がっている.実際に生徒たちがMathematica に与え
ている命令は大したことはないのだが,それでも,コンピュータに自分が命令を与
えることで自分が数学していると感じているのだ.もちろん,そこまで思えないコ
ンピュータが苦手な生徒もいて,その生徒はGのような感想を書いていた.
感想のC〜Fは,まさにMathematica を用いる数学の特質を端的に表している.確かにMathematica は簡単な命令でグラフを描いてくれるし,複雑な計算もこなしてくれる.しかし,Mathematica を使うときには,生徒は数学しなければならない.つまり,
・何のグラフを,どの範囲で描くのか?
・どんな計算をさせるのか?
・そのグラフや計算結果から何を読みとるのか?
ということは,生徒に委ねられているのである.
このように,ある問題を解決するにはどうすればよいのかを数学的に考えるそし て,面倒な,あるいはこれまではしたくてもできなかったグラフの描画や計算が必 要であれば,それはMathematica に任せる.その結果をもとに,さらにMathematica を使って数学する.これを繰り返して,問題を解決する.その後,問題を拡張・一 般化したりして,自分なりの数学を作り出せれば最高である.この過程で,コンピ ュータは数学するときの強力な道具となるのである.