2重デュワー瓶を用いて、外側には液体窒素(77K)、内側には液体ヘリウム(4K)を入れる。
小さな容器に入れた水銀を内側のデュワーに挿入すると、みるみるうちに水銀は固まっていく。そこに、ひもにつながった扁平なネオジウム磁石を近づけると...

「浮いた!」
「水銀は今、超伝導状態になってる!」
ネオジウム磁石が浮いています。つまり、水銀のマイスナー効果です。参加者からも思わず歓声が沸きました。歴史的な実験を目の前にして、感動です。

 今から約100年前、オランダの物理学者カメルリン・オンネスが発見したのが、この水銀の超伝導状態です。ここから、今や物理学の重要な一角を担う”低温物理学”が本格的にスタートしました。
水銀の超伝導状態
〜100年前、オランダのオンネスが発見した歴史的実験〜
SPP in 奈良教育大学
「超伝導体の物理学」
○オンネスと低温物理学
 低温物理学の開拓者の一人とされるカメルリン・オンネス(Heike Kamerlingh Onnes 1853-1926)は、オランダのフローニンゲンに生まれ、フローニンゲン大学でまなんだ。1908年、はじめて液体ヘリウムをつくることに成功し、その沸点が4.2Kであることを確認した。また、この液体ヘリウムを利用して、極低温におけるさまざまな物質の性質を研究した。特に、水銀の電気抵抗がヘリウム温度付近でゼロ近くまで減少する超伝導現象を発見した。これらのパイオニア的な業績に対して、1913年にノーベル物理学賞が授与された。
 オンネスに刺激され、多くの科学者が極低温下における物質の性質を研究するようになった。その結果、超伝導は水銀だけの固有な現象ではなく、さまざまな物質で確認され、超伝導状態になる温度、つまり相転移温度は、物質によって異なることが分かった。
 しかし、なぜこのような現象が起こるのか、という問いに対する理論的な説明がなされるのは、現象の発見からずっと後のことである。1957年、アメリカのクーパーらによってBCS理論が発表された。この理論の中核は、電子クーパー対の形成による超伝導の説明であるが、詳しいことは他にゆずろう。クーパーらは、この業績によって、1972年、ノーベル物理学賞が授与された。
 ところが、1986年、このBCS理論で説明できない超伝導が発見された。それは、希土類元素を含むセラミックス(組成としては茶碗に近い)の超伝導である。これはなんと液体窒素(77K)程度の温度で相転移が起こるのである。これらの物質を高温超伝導体という。BCS理論が想定する相転移温度は、数K程度であり、高温超伝導体の80Kや90Kといった相転移温度を説明することは極めて難しい。送電に関して、高温超伝導体はエネルギー問題と密接に絡む技術でもあるため、その後、日本やアメリカ、ヨーロッパを中心に精力的に超伝導の研究が行われている。その結果、相転移温度は徐々に上がり続け、現在の最高温度の相転移温度は、100K程度である。しかし、国際的な努力にもかかわらず、高温超伝導体を説明するはっきりとした理論は未だ謎である。
 
<用語説明>
 ・超伝導状態 ・・・電気抵抗が0になり、強い反磁性を示す状態
 ・相転移 ・・・ここでは、物質が通常の状態から超伝導状態になること
 ・相転移温度(臨界温度) ・・・相転移が起きる物質の温度

 Topics - 2003年度SPP
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