奈良女子大学附属中等教育学校  2010年度公開研究会

リテラシーを基盤とするリベラルアーツの育成をめざして
        −SSH カリキュラムの深化−


 2月18日(金)午後から19日(土)にかけて、2010年度の公開研究会が奈良女子大学と共催で行われました。

 160名近くの参加者を迎えて、「リテラシーを基盤とするリベラルアーツの育成をめざして−SSHカリキュラムの深化−」のテーマのもと、初日の公開授業・研究協議から、2日目の全体会、分科会、SSHポスターセッション、そして全体講演会へと熱い議論がかわされました。お忙しいなかお越しいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

 また次年度は、11月中の開催を予定していますので、ぜひまたお越しください。


公開授業、研究協議、研究発表
数学 数学的リテラシーの観点からリベラルアーツをいかに捉えるか
理科 ESDとリベラルアーツを考える
国語 言語活動からとらえる古典の世界
社会 日本史・世界史の枠組みを超え、現代世界を考える
英語 中等教育 導入期段階の英語教育のあり方を考える
創作科(家庭) こどもの心の発達を考える -絵本づくりを通して-
創作科(科学と技術) 学校設定科目 『科学と技術』の実践と検証


全体会 分科会 公開講演会 SSHポスターセッション
  (1) 学長挨拶

  (2) U期SSHの概要について
   (1) SSH国際交流プログラム  

   (2) 理数系クラブの指導   

   (3) 中高一貫の新カリキュラム
国際化社会の中での教養教育はどうあるべきか
京都大学総長 松本 紘 氏



数学科公開授業

     数学的リテラシーの観点からリベラルアーツをいかに捉えるか

科目:「解析V」  5年D組       授業者:横 弥直浩
授業テーマ:身近なものに微分・積分の考えを生かす

【授業概要】
 「解析V」は、5 年(高校 2 年)における解析関係分野を学習する。研究授業では、学年の最後の時期なので、「微分・積分の考え」を扱う。私たちの周りには変化する事象がたくさんある。変化を記述し、それを解析する1つの方法が微分法・積分法である。
身近な事象から問題を発見し、微分・積分の考えを使って生徒が問題を解決する。SSH 研究としては「数学的リテラシーの育成」の観点から、生徒が問題を数学化し解決したものを振り返って吟味する。そのような力を育てたい。




理科公開授業

     ESDとリベラルアーツを考える

科目:「生物T」 5年A、C組生物選択者  授業者:矢野 幸洋
授業テーマ:光合成と環境

【授業概要】
 森林をつくる植物は多様であり、主に光要因によって植物は影響を受けている。その一つの例として陽生植物と陰生植物をとりあげ、実験・観察によってそれらの特性を理解させる。それをもとに、光要因によってすみわける生物の共存や森林内の多様性などを考える手がかりとしたい。
 この授業を受けて、さらに森林内の移り変わり(遷移)を学ばせ、森を守り育てるためにはどんな視点が重要で、何をすべきかを考えさせる展開を考えている。  


国語科公開授業

    言語活動からとらえる古典の世界

科目:「古典」(5年B組)        授業者:新田 由美子
授業テーマ : 「新釈」『大鏡』の人々−言語活動から迫る人間像
【授業概要】
 この授業は、古典教材を脚本化するプロセスをとおして、そこに活きた人間像を具体的に イメージさせることを目的に構成した。生徒の感性や理解に訴えて解釈しようとする今回の 授業は、時代考証や言語学的枠組みには沿わないものとなるおそれも孕むが、教材としての 古典に対するアプローチのしかたの、ひとつの提案になればとの思いから出発するものであ る。鑑賞と解釈のあり方にも関わるが、古典に見られる「人間像」を生徒たちが主体的に追 求する授業に取り組みたい。   


社会科公開授業

     日本史・世界史の枠組みを超え、現代世界を考える

科目:「現代史」(4 年C組)        授業者:笠井 智代
授業テーマ:「ポスト冷戦」の世界

【授業概要】
 2 年社会科・歴史的分野から継続するかたちで、3・4 年で実施している現代史。日本史と 世界史を融合し、自分たちの生きる世界の「立ち位置」を見通すことをめざしている。 ペレストロイカから東欧革命、ソ連の崩壊を経て、世界の構造はどのように変わったのか。「自 由」と「平等」の両立する世界は存在するのか。現在の東アジア情勢も含む、今の世界で起 こるさまざまな出来事をどう捉えるかを、(具体的な像を描くのが難しい「○○主義」という 概念と格闘しつつ)生徒とともに考えていきたい。  


英語科公開授業

     中等教育 導入期段階の英語教育のあり方を考える

科目:「Introductory English」(1 年B組)    授業者:平田 健治
授業テーマ:Introductory Englishにおける基礎力の育成

【授業概要】
  今回の公開授業は、本校の2−2−2 制カリキュラムの最初期、基礎力の定着を図る段階(1・ 2 年)である。 この段階では、英語らしい発音を身につけ、英語の論理やその基本的な構造を 学ぶとともに、既習の語彙や構文 を用いて、身近なものを表現することが求められている。 同時に、知的欲求が大きく伸長する時期でもあり、彼 らの知的好奇に見合った教材を提供す ることも肝要である。 6 年一貫カリキュラム見据えた上で、しっかりとし た基礎力や英語(授 業)に臨む姿勢を身につけさせたい。教師と生徒がどのように協同して授業を作り上げてい くべきかを探りたい。  


創作科(家庭)公開授業

     こどもの心の発達を考える―絵本づくりを通して―

科目:「家 庭」(4 年A組)      授業者:永曽 義子
授業テーマ:布絵本発表会

【授業概要】
  4 年生のこれまでの授業では、「人の一生と家庭生活」の中で、自分がどのように生まれ育 ってきたのかを振り返りながら、乳幼児の特徴について学習した後、グループで子どもの遊 び道具(布絵本等)を製作した。これらを持って附属幼稚園もしくは近隣の極楽坊保育園を 訪問し、子どもたちとの交流を図る予定である。本時は、生徒たちが製作した布絵本等の発 表会の時間である。絵本つくりを通して、生徒たちの乳幼児に対する思いや子どもにとって の遊びの意義、絵本の役割などについて考え、近年注目されている脳科学の観点からも、子 どもの心身の発達と絵本を通してのふれあいとの関連について考えてみたい。 


創作科(科学と技術)公開授業

     学校設定科目『科学と技術』の実践と検証

科目:「科学と技術」(4 年選択者)        授業者:吉川 裕之
ゲスト:成田 英夫(独立行政法人産業技術総合研究所メタンハイドレート研究センターセンター長)
授業テーマ:サイエンスカフェ〜未来を創る新エネルギー〜

【授業概要】
 最先端の研究者をゲストとして迎え、研究者と本校生徒、そして参加者が、コーヒーカップ片手に、気軽に最先端の科学と技術を語り合う、新しい授業スタイル(「サイエンスカフェ」)を高校生自らがコーディネートする形式で実施する。テーマは、「未来を創る新エネルギー」。
 メタンハイドレートとは何かについてゲストから話題提供いただいた後、今後の活用の可能性について語り合う。
   


全体会

   
学長挨拶

奈良女子大学の野口誠之学長より、全体会冒頭にご挨拶をいただきました。




   U期SSHの概要について        SSH主任  米田 隆恒 

 U期めのSSH・・・これまでのリテラシー研究の成果をふまえ、リベラルアーツ(21 世紀に求められる教養)の育成を中等教育段階でいかに実践するべきかをテーマとして研究を始めました。また、コアSSH として「海外の理数教育重点校との連携」の指定も受け、8 月にASTY Camp を実施しました。これらについて、SSH主任が概要説明を行いました。


分科会

   分科会(1) : SSH国際交流プログラム       SSH国際交流担当教員 

 今年度、本校はコアSSH の指定を受け、国際連携をとおして中高生の理数の才能を育成する指導方法の研究を目的とした様々な国際交流プログラムを実施しました。
 8 月には、サイエンスキャンプ「ASTY Camp」を実施し、本校・韓国・台湾の中3・高1 計56 名が、ワークショップなどを通して、数学や科学の世界を探究する取り組みを行いました。裾野を広げる国際交流を目指し、本校の参加者については選抜を行わず、さらには理科・数学科・英語科の教員が協力して運営を行うというこれまでにない国際交流を試みています。11 月には、教員研修として本校教員が韓国の先進的な教育機関で研修を実施し、2 月には韓国の教員を本校に招いて協働研究を行う予定です。
 理想と現実、成果と課題など、これらの実践から得られたものは多様な側面を持っています。この分科会では、本校の実践報告をふまえて、「国際連携において可能であることは何なのか」、「生徒や教師にとって実りある国際連携とは何か」ということを意見交換を中心に協議しました。



    分科会(2) : 理数系クラブの指導         サイエンス研究会担当教員 

 理数系クラブは、日頃の授業では実現しにくい次のような特徴をもつ学習の場、創造の場であるといえます。
   ・時間をかけて、一つのテーマを追究し、自分の中に智恵を築き上げていくこと
   ・さまざまな能力を持つ先輩後輩と互いに影響し合えること
   ・自分の成果を発表できる場があること
 ここで創造とは、新しいことを生み出していくというよりも、生徒の内面に築き上げられていく智恵と考えます。この分科会では、理数系クラブをより良く育てることを目的として、本校の事例を紹介し、各校での取り組みや困っていることについて意見交換しました。



    分科会(3) : 中高一貫の新カリキュラム    教育課程委員会

 2012 年度より中学校で全面実施となる新学習指導要領の趣旨も踏まえて、本校は昨年度までに中高一貫の新しいカリキュラムを作成し、本年度より順次実施しています。この分科会では、SSH研究のバックボーンとなる本校の新カリキュラム構成の視点と方法を以下の4点を中心に紹介し、意見交流しました。
 1)生徒の発達段階を踏まえた2−2−2 制カリキュラムの構成
 2)ユネスコのWHE(世界遺産教育)・ESD(持続発展教育)の理念を軸とした総合学習の再編
 3)小人数授業・習熟度別授業・ティームティーチングなどのありかた
 4)ガイダンス・カウンセリング機能


公開講演会

    国際化社会の中での教養教育はどうあるべきか        京都大学総長   松本 紘 氏 

 自信と矜恃を持つ日本人がいきいきと世界で活躍する必要のある時代がそこまできている今、新しい時代に対応できるような教養教育、人格的にも社会のリーダーとなれるような人材を育てるために、国際社会の中で日本人の果たすべき役割とは何か、期待される役割とは何かについて語っていただきました。


SSHポスターセッション
    

 本校のSSH指定に伴い成立したサイエンス研究会は、発足から6年目を迎えています。現在では、1 年生から6年生までの約80名が、数学・物理・化学・生物・地学の5つの班に分かれて、日々研究活動を行っています。発表当日は、これまでの成果や活動報告をポスター形式により発表し、参加された先生方からご質問やご意見、ご助言を多くいただきました。