奈良女子大学文学部附属小学校の情報教育

  
 

コンピュータルームの学習利用について


子どもの表現とマルチメディア

   

    

コンピュータルームの学習利用について

1.システムの状況

本校の情報教育は、平成8年度に アップルコピュータ株式会社製のコンピュータを22台導入して始められた。平成11年には、校内LANの整備を行い、児童用コンピュータも40台配備し、しごと学習のまとめや自由研究のまとめと発表用に活用してきた。次第に校内ネットワーク機器の整備を進め、平成17年度からWindows XP Professionalを搭載したコンピュータを導入した。
平成20年度からは、Windows Vista、平成25年からWindows 7を使用している。

2.学習対象学年

 基本的な方針としては、全学年が学習の道具としてコンピュータを活用することが望ましいと考えるが、教師の週時間との兼ね合いや教科の時数によって制約がある。 現状では、2年生からの活用となっている。

3.平成24年度の時間配当

上記の配当時間以外は、できる限り各学年とも積極的に活用をしていく方針である。 また、15グループの活用・音楽・家庭・造形の専科の学習でも使用を奨励していく。

4.学習内容

  

5.指導体制

  

  子どもの表現とマルチメディア

1、マルチメディアと学習環境

 最近のマルチメディアパソコンの進歩によって、子どもをとりまく学習環境も大きく変わりつつある。10数年前ではとても扱えなかった、映像・音声・文字情報が同時に扱え、しかも、子どもが実際に活用できる現状がもうきていることを考えると、マルチメディアは21世紀には、もう当たり前の学習環境としてコンピュータがその中心的な存在となることであろう。
本校の学習法では、子どもが主体的に学習を深化させていくのを教師が見守り励ましていく学習スタイルが多い。また、子どもの個別化や個性化に即した学習活動がなされていく過程が多い。このような、柔軟性を持つ学習課程になじんだマルチメディアシステムの環境づくりと、システムの導入が大切となる。
 もうひとつは、指導者がネットワークの管理やファイルの整理に時間を費やされないようなシステムの構成が必要である。学習活動の向上や質的な改善に費やすという本来の仕事ができない状況では、本当の意味でのマルチメディアの活用とは言えないであろう。
 さらに、マルチメディア環境では、ネットワーク環境が必須であるといえる。スタンドアローン(単体使用)では、子どもの同士のコミュニケーションが自由に行いにくい点や、画像データーの扱いの点で自由度が低下してしまうという問題がある。小学校ほど、画像データの活用が学習の中で生かされなければならないと考える。 子どもの表現活動が十分に行われ、その成果の発表が、マルチメディアネットワークを通して集団に生かされるシステムの環境整備が大切である。

2、マルチメディアと学習法の融合

 本校の学習法は、学習を生活と同義ととらえ、昭和23年9月に「しごと」「けいこ」「なかよし」3領域に組織構造化されている。狭義の教科の枠を総合的にとらえ、実際の生活や学習の中で合理的で柔軟な思考形態を重要視し、より自然な学習形態を確立したといってよいであろう。
 「しごと」学習では、子どもを自然・人間・社会の現実の姿に触れさせ、その真実を求めさせるとともに、人間の生き方・自己の生き方を考えさせる学習である。
「けいこ」学習では新しい文化の創造に働く基礎的な能力の育成に重点を置いている学習である。「なかよし」学習では社会人としての生き方と実践を育てる学習である。これらの3領域は、構造化されたものでもなく、ある程度便宜的に分類された領域であって、子どもの学習課題の追究や表現活動の中では、混ざりあい総合された学習活動となって現れてくる。そういう意味で、私たちは、3つの領域に学習内容を同化させてはいないと思う。
つまり、今いちど、「学習即ち生活であり、生活直ちに学習となる。」(学習研究誌・創刊の辞より)学習法の原点に立ち戻り、マルチメディア時代の到来と学習法について考えることが必要であろう。 近年のコンピュータソフトウエアの開発は、大変人間的な表現を可能にしたものとなってきていると思う。そういう意味で言うならコンピュータは
という捉え方が、常識的になっているのではないかとより思われる。、マルチメディア環境でのコンピュータの役割が、より人間的な生きた学習を可能にしたものに変身を遂げてきている。
このようなマルチメディアコンピュータの性格を考えると、教科や領域の枠をはずし、コンピュータリテラシー(コンピュータ教育)も含めて、総合科的な本当の意味での生活即学習が実現できる領域をもうけなければならないと思う。
 本校では、「しごと」学習がその総合学習の領域を全学年にカバーされており、新しい時代に対応できる教育構造が伝統的に受け継がれているところに、新メディアと学習法の融合が期待できるのではないだろうか。

3、コンピュータリテラシーと学習活動

  これまで、コンピュータ利用の理想的な面のみ論じてきた。しかし、実際に子どもたちが嬉々としてマルチメディアあるいは、コンピュータを使いこなすには、コンピュータそのものを使いこなす能力自体を身につけさせるという学習、いわゆる、コンピュータ教育についても考えなければならないであろう。一般的に、コンピュータの良さだけをとりあげて主張しても片手落ちと言えよう。私たちは能力的な力や技術的な問題については多くを語らない傾向があるように思われる。が、実際には、マルチメディア機器の活用には、機器自体の操作法を学んでいかなければならない。いかにマルチメディアを自分の表現に生かしていくか、という試行錯誤が子どもの内に芽生えてこなければ、学習法的マルチメディアの活用とは、言えないであろう。
 教師主導型での活用では、機器の利用が目的となり、マルチメディアの活用がショーで終わってしまうことが多い。肝に銘じて指導していきたいものである。そういう意味で、私どもは
   というように、あせらずじくりとコンピュータリテラシーの定着を、学習の道具として使う中で進めていきたいと考えている。

4、マルチメディアと表現力

本稿執筆段階では、コンピュータによる「しごと」学習がスタートしたばかりで、子どもの表現力に関わる成果というのはまだ評価できない段階である。 しかし、今まで実践してきた造形表現活動でのマルチメディアの活用では、子どもの新しく自然な表現力の発揮が盛んになってきている。特に、描画活動では、水彩絵の具使い方一つにしても得手・不得手の差が激しい場合も多い。視覚の発達した大人でも、正直言って大変なプレッシャーを感じる。ましてや、絵の具の扱いが苦手な子どもにとってはかなりのプレッシャーを感じることであろう。マルチメディアコンピュータの登場によて、「解放された表現力」と表現できようか、子どもが安心して描画活動に没頭する場面が多く現れてきた。 私は、こうしたデジタルデータによる描画活動と、実在のものを手にした表現活動を大きく分けて考えることもないし、「デジタルアートは偽物」「本物の表現は自分の手で」という論争には無関心である。描画活動を例に挙げたが、表現すること自体に優劣や違いなどないと考える。 そういう意味で、二一世紀を担う、子どもたちには、デジタルデータによる表現活動をどんどん経験させ、新しい発想を生み出したり、柔軟な創造力を発揮したり、新しい時代にあった価値観の創造へむかう力を育ませたいと考える。

5、マルチメディアとコンピュータグラフィックス

どんな学習領域に限らず、そのほとんどは教育的なメディアを使った学習が続けれれていると言てっもいいが、その多くは視覚メディアや映像メディアである。 そういう意味では、今まで実践してきたコンピュータグラフィックスに代表される造形的なマルチメディア活用が、子どもの世界に受け入れやすいことは理解できる。 「キッドピクス+コンパニオン」などのソフトウエアでは、低学年から高学年までの学習で使用でき、お絵かきソフトと呼ばれて人気が高い。音声・プレゼンテーション機能・他のソフトウエアとの相互使用など、これらの機能を使いこなすことによって、コンピュータの操作性に慣れたり、より工夫のある使い方を考えるなど、コンピュータリテラシーをより自然に身につけるための、学習方法として、また、マルチメディアの活用の導入段階としての学習に大変役立ってい。
 また、画像処理ソフトウエアを使った学習では、他の学習領域で生かされる画像データの扱いに慣れ、さらに効果的な活用方法を考えるなど、コンピュータグラフィックスの学習を通してマルチメディアの活用と新しい表現方法の思考力が高まっていくであろう。

6、マルチメディアとコミュニケーションの活性化

マルチメディアの教育利用での、もうひとつの重要な役割は、情報ネットワーク社会に対応できる、情報伝達能力の育成や情報の創造する力等の育成である。 通信ネットワークの発展により、教育活動に広く外からの情報の収集や、情報の発信が行われるようになってきている。急速に発展浸透するであろう情報ネットワーク社会に対応するとは などに要約できるであろう。こうしたコミュニケーションを中心とした学習は、平素の学習活動で行われているのであるが、外とのコミュニケーションとなるとマルチメディアを活用しなければならないし、国際化を具体的に反映できるインターネットでの国際交流などでは語学の問題もハードルとして存在する。 本校では、コンピュータルーム設置元年ということで、学校内のネットワークもこれからの課題であり、インターネットを使った学習研究もこれからの課題として残っている。情報化社会でのネットワーク環境とはいっても、ハードウエアとソフトウエアの環境整備なしには語れない。 私見ではあるが、先進的に情報ネットワークを使った学習研究を進めている学校はたくさん存在してはいるが、インターネットの接続一つにしても、担当されている教職員の努力は並大抵ではないであろう。 私も、手探りで始めた頃には、接続ができるまで0からの出発であった。何日も独学し、やっと接続できたことを考えると、また、世界の情報ネットワークの進歩に対応した教育現場のことをや、子どもの育ちの面から考えると、ハード・ソフトウエア環境に対応できる情報専任教員の育成をもっと急がなければならないと思う。 そうしたマルチメディア環境面での充実が全国的に整備されて、はじめて、本当の情報化時代の教育が発展するのである。

7、おわりに

今現在、コンピュータを使った学習で、とても表現力の育成が進んでいるとは言えない。基本操作やファイルの管理の仕方の学習で精一杯の実状である。そのため、子どもの表現とマルチメディアを十分に語っていないところについてお詫びをしておきたい。 内心、早く、子ども自身の発想で使いこなせるまで行きたいのであるが、自分自身のマルチメディア体験を考えても、子どもが理想的に学習に生かすまでには時間が必要かかるであろう。また、メディアキッズコンソーシアムヘの参加や、WWWホームページの開設、学校内ネットワークの充実等、取り組む課題が沢山控えている現状である。  機会があれば、助言指導を願いたい。