自然科学領域

外来種スクミリンゴガイの総合的管理技術の開発

遊佐 陽一(ゆさ よういち) / 吉田 和弘(よしだ かずひろ)

研究概要

世界および日本の侵略的外来種ワースト100リストに掲載されているスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の個体群管理とイネの食害回避の研究をしています。
具体的には、1)スクミリンゴガイのさまざまな捕食者を明らかにし、河川や池、水路などでは捕食者相が本種の密度低減に役立っていることを明らかにしました。また、2)好適な環境の保全によって豊かな捕食者相を保ち、さらに活性化させることで本種の個体群を管理する可能性について検討しています。3)最近では農水省のプロジェクトで、高い誘引効果が長期間持続する誘引餌を見出し、それを利用した箱型トラップを企業と開発しました。
温暖化などのために、国内外でスクミリンゴガイによるイネの食害が今後も増加することが予測されるため、本種の総合的管理技術(IPM)確立に向けた研究を推進しています。

アピールポイント

・スクミリンゴガイの捕食者については、コイや合鴨、スッポンなど個々の種の利用だけでなく、自然水路の環境保全や人工水路における水深の維持など適切な環境管理によって、捕食者相を維持・活性化し、外来種の管理に役立てるという新たな試みを進めています。
・米ぬか、コイの餌という誘引力の高い餌に加え、米こうじを入れることによって1週間程度効果が持続するミックス餌を開発しました(農水省のスクミリンゴガイ被害防止マニュアルに掲載)。今後、さらに誘引性や持続力の高い餌の開発を行い、それを用いた貝の誘引や稲の被害回避につなげていきます。
・逃亡防水装置付き箱型トラップは、「スクミッチ」という名称で、大栄工業株式会社から発売されています(実用新案取得済み)。これとミックス餌を用いて、水田の貝を減らすことに成功しています。現在、さらに誘引効果が高く、維持管理の楽なトラップの開発を進めています。
・その他、卵の孵化、越冬率、イネの被害リスク評価、生態系への影響評価など、スクミリンゴガイとイネの特性に基づいた技術開発や影響評価を行っています。

図1 スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)
図2 (左)ジャンボタニシ誘引用ミックス餌。コイの餌・米ぬか・米こうじ各10gを軽く混ぜ、お茶パックなどに入れて利用する(右)開発したトラップ
図3 圃場におけるミックス餌を入れたトラップのスクミリンゴガイ捕獲数(吉田ら、2021. 関西病虫害研究会報より)
掲載日:2022/11/10 更新日:2022/11/10