衣環境学領域

温かさ・冷たさを伝える技術

佐藤 克成(さとう かつなり)

研究概要

温かさと冷たさを人に感じさせる、温度感覚を再現する装置を開発しています。人の温度感覚は刺激位置の判別能力が低いことに着目し、温かいと冷たいそれぞれの刺激用の素子を並置した装置を提案しています。さらに、人は温度変化を敏感に知覚する特性を利用し、絶対的な温度ではなく温度変化量を制御する手法を提案しています。これら提案手法により、従来よりも小型・軽量に実装でき、消費電力が少なく、そして応答性の高い装置を実現しました。
本技術を活用し、温度だけでなく振動や圧の感覚を再現する触感モジュールの開発にも取り組みました。触感モジュールの開発は、JST ACCEL「身体性メディア」プロジェクトとして、東京大学、慶應義塾大学、電気通信大学、アルプスアルパイン株式会社、日本メクトロン株式会社と共同で行いました。

アピールポイント

触感を再現する装置は、ゲーム機やスマートフォンといった電子機器類、およびアミューズメントパークなどで実用化されています。近年では、バーチャルリアリティ用の感覚フィードバック装置としての活用が進んでいます。これら従来の触感再現装置は、主に振動によって触感を表現しています。それに対し提案技術では、振動だけでなく温度の感覚を加えることで、再現される触感の種類を増加させることができます。温度の感覚を再現する装置は提案技術以外にも存在しています。それらに対するこの研究の最大の特徴は、小型・軽量に実装できることです。例えば、指先に振動と温度の感覚を再現する触感モジュールでは、大きさは14mm×27mm×8mm、重さは約7gfで実現しています。従来の技術では、放熱のための機構が必要であり、体積も重量も4倍以上必要でした。そのような大型で重い装置は用途が限られてしまいます。小型・軽量な温度感覚の再現装置が実現されることで、触感再現以外の分野における活用も期待できます。例えば、モバイル・ウェアラブル端末における情報フィードバックが考えられます。従来は音や振動により行われていますが、これらに代わる、音も振動も生じない静かな情報フィードバック手法として活用できます。他には健康機器が考えられます。身体の一部に対する温冷刺激を行うことで、その部位の血流を促進する効果が期待できます。

温刺激と冷刺激を並置した構成による刺激方法
温度と振動の感覚を再現する触感モジュール
触感モジュールによる温度感覚再現
特 許
特願2016-140982、特願2016-230443、特願2017-193840、特願2018-038441、など
掲載日:2021/03/31 更新日:2021/03/31