食物科学基礎実験(平成15年度) 担当: 植 野
TA: 中 岡
福 山
李 藤
微生物基礎編(微生物に親しもう)とネットワーク検索編
日程予定
1日目(6/2)講義(ガイダンス),器具の準備・洗浄
2日目(6/9)微生物の培地の調製,ネットワーク検索編開始
3日目(6/16)微生物の植菌,顕微鏡の準備・観察練習
4日目(6/23)微生物の形態観察(肉眼・顕微鏡観察)
5日目(6/30)ネットワーク検索
6日目(7/7)ネットワーク検索
7日目(7/14)実験室の片付け
【培地の調製】
細菌用培地
Glucose 0.5 % (w/v)
Peptone 1
Meat extract 1
Yeast extract 0.2
NaCl 0.5
(Agar:固体培養 2)
Tap water(水道水) 必要量
pH 7.0〜7.5に(NaOH又はHCl希釈液,BTB試験紙で確認)
酵母・カビ用培地
Glucose 5 % (w/v)
Peptone 0.5
Yeast extract 0.2
K2HPO4 0.4
KH2PO4 0.2
MgSO4・7H2O 0.02
(Agar:固体培養 2)
Tap water(水道水) 必要量
pH 5.6〜5.8に(NaOH又はHCl希釈液,MR試験紙で確認)
【調整操作】
1. 試薬を秤量し,培地を調製する.
2. 培地のpHを調整し(1N HClまたは1N NaOHで),試験管に分注する.寒天を入れた培地についてはオートクレーブ(5分間程度)もしくは湯煎することで寒天が溶解するので,その後,分注すること.
3. 綿栓もしくはアルミキャップをした後,オートクレーブによって20分間加圧蒸気殺菌する(オートクレーブは,120 °Cに到達した時点で内部は1.2気圧になり,20分間その状態を保持する.その後,徐々に温度を下げる.温度が安全なところまで下がるまで蓋を開けないように!)
4. 固定斜面培地(スラント)を調製する場合は,寒天が固まるまで斜面に静置しておく(図1).斜面培地を凝固した後,直立させると斜面の下部に凝縮水ができるが,これは菌の充分な生育増殖に重要な役目を持つ.シャーレでの固定培地を調製する場合は,寒天の上部に泡ができないようにする.バーナーであぶると泡は消える.
カビの観察には,スライド培養がよい(図3).でも,必ずしもスライド培養に限らない.固定培地(図2)で培養し,その後,成長したカビの部分を白金耳を使ってピックし,スライドガラスに移して観察してよい.
(スライド培養の例)
【準備】
1. シャーレにろ紙(直径9cmの円形),ホールグラス,カバーグラス,つまようじ(4本)を入れて,新聞紙に包んで乾熱殺菌する.
2. パスツールピペット,ピンセットを新聞紙に包んで乾熱殺菌する.
【操作法】
1. オートクレーブしたカビ培養用培地(2%寒天を含む)を,乾熱殺菌済みのパスツールピペットを用いて,乾熱殺菌したカバーグラス上に一滴落とす.
2. カバーグラス上で固まった平板培地に白金耳を使ってカビを植菌し,ピンセットでカバーガラスをつまんで逆さまにして,シャーレ中に図3のように組み立てたホールグラスの上にのせる.
3. シャーレ中のろ紙に蒸留水を注いで,ふたをする.
4. 28 °Cで静置培養する.
5. ホールグラスごと取り出して顕微鏡のステージに置き,培地の端からカバーグラス上に伸びた菌糸を検鏡する.
(注意)本実験は週1回であることより,微生物の培養には特に注意が必要となる.つまり,1週間培養し続けると,繁殖しすぎたり,シャーレ中の湿気がなくなり(乾燥すること)寒天培地が乾燥したり,雑菌が繁殖したり,などいろいろな現象を経験することになる.培養サンプルは毎日こまめにチェックすること.それ以上成長をさせたくない場合は,培養容器ごと低温にて保存できる.(各自のグループ名なり,個人名を記入して,他のサンプルと区別できるようにすること).
【使用微生物】
細菌
Escherichia coli No. 3301
Bacillus natto No. 0206
酵母
Saccharomyces cerevisiae No. 2001
Saccharomyces sake Kyokai No.7
Candida lipolytica No. 1063
カビ
Aspergillus oryzae
II. ネットワーク検索編(テキストはWeb上に用意するものを利用すること)
アドレス:http://www.nara-wu.ac.jp/life/food/mbio/class/index.html
忘れた場合は,応用微生物学研究室のon-campusのページにリンクされている
(http://www.nara-wu.ac.jp/life/food/mbio/on_campus.html)のでそこから入ること.
【目的】 Web上に公開されているデータベースを理解し,その機能を用いて情報検索の手法を会得することを目的とする.
III.レポート作成(A4サイズにて)
I.実験中の観察事項,その他の思いつき事項を記述する.
全体の考察もすること.
手法に関しては,実習の手引きに記載されていることは繰り返して書く必要はない.
ただし,変更したことなどがあれば記載すること.
II.与えられた課題のシークエンスに関して,調べたことをまとめる.ただし,Webのページを意味なく貼り付けたり,並べることは避けること.
【植野よりの忠告】学生実験は,将来自分がする研究活動に必要な基礎知識を身につける場である.実験の成果は,もちろん大切であるが,実験そのものには正解なるものはないと思うべし.自分が得た結果は事実である.その事実には,再現性があるのか,信頼性があるのか,その事実から何が導き出されるのか,などを問われていることを意識して欲しい.