松田 覚 健康医化学研究室
Matsuda Satoru laboratory
専門分野
健康医化学、分子生物学、分子生活習慣病論
研究内容
1)香辛料やハーブによる細胞内遺伝子発現の解析
2)食用油を用いた安全な遺伝子導入試薬の開発
3) Prion類似膜糖蛋白質Doppelの機能解析

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研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介


研究の背景と特色
 生活習慣病を主とした疾病と食生活との関連を分子生物学的視点から検討している。例えば、リンパ球等の各種細胞内の遺伝子発現は、食品成分の刺激によってどのような影響を受けるのか、従来の栄養学とは異なる新しい観点から遺伝子調節レベルでの食品成分の作用を研究している。また、遺伝子治療や細胞内現象を解析する際に重要な役割を果たす遺伝子導入技術を向上させるために、人体に安全な食用油を用いて遺伝子導入試薬の開発を行っている。その遺伝子導入技術を用いて、Prion類似膜糖蛋白質であるDoppelの機能について、生化学的な解析を行っている。
 以下に本研究室の代表的な研究内容を示す。
1)香辛料やハーブによる培養細胞内の遺伝子発現の解析
 日常摂取するハーブや香辛料・薬味などは、古来より薬理的な役割を担ってきた。例えば、強壮作用、食用増進・消化促進作用、抗がん作用や生理不順改善、不眠解消などである。しかし、健康維持や病気からの回復に用いる香辛料やハーブなどがどのようにして薬理的な作用を持つのか、そのメカニズムの詳細は明らかになっていない。本研究では、各種食材や香辛料、ハーブなどを用い、疾病などに深く関連する遺伝子の発現を誘導するのか、あるいは抑制するのかを、RT-PCR法やウエスタンブロッティング法を用いて検討している。例えば、ローズマリー、緑茶、セージ、七味、しょうが、みょうが、赤しそなど各種香辛料や食材の成分をエタノールで抽出し、ヒト培養細胞液中に添加した。一定時間培養後cDNAを作製し、各種培養細胞内での遺伝子発現変化を検討した。また、タンパク質発現変動の検討も行った。これまでに、例えばしょうがの成分を抽出したサンプルを添加した際、U937細胞におけるCNOT3遺伝子の発現上昇がRT-PCR法で確認された。セージの成分を抽出したサンプルを添加した場合、Jurkat細胞ではタンパク質分解酵素の内因性阻害因子であるTIMP-1(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase 1)の発現抑制が、RT-PCR法およびウエスタンブロッティング法により確認された。
2)食用油を用いた安全な遺伝子導入試薬の開発
 遺伝子導入技術の検討には、培養細胞が用いられる。近年では導入効率が比較的高いリポフェクション法が主流であるが、この方法で使用される既存の導入試薬は強い毒性が示唆されており、人への応用は難しい。本研究では、食用油をベースとしたリポフェクション試薬の開発や、その試薬の遺伝子導入効率を最大限に高めることのできる独自のプロトコールを考案したのち、市販の試薬との比較検討を行っている。具体的には、市販の食用油をベースとして、ヒト細胞に影響の少ない材料を用い、組成条件や各種材料の濃度などの検討を重ね、導入試薬を作製した。GFP発現プラスミドを種々のヒト培養細胞にトランスフェクトして48時間後に蛍光顕微鏡やウエスタンブロッティング法、フローサイトメトリーを用いて導入効率の比較検討を行い、より効率良く遺伝子を導入するプロトコールの確立を目指した。その結果、従来の遺伝子導入試薬と比較して導入効率の高い試薬を作製することができた。また遺伝子導入が困難とされていた浮遊細胞への遺伝子導入にも成功している。
3)Prion類似膜糖蛋白質Doppelの機能解析
 Prion蛋白質を発現させるprion遺伝子は、ほぼ全ての哺乳動物に保存されて存在し、中枢神経系や末梢神経組織を中心に発現が見られるが、その機能やプリオン病発病のメカニズムなど未解明な部分は多い。prion遺伝子の近傍には、Prion類似蛋白質をコードする遺伝子いわゆるDoppel遺伝子が発見されている。両者の相同性は高く、Doppelについては精巣やリンパ球に発現が認められているが、Prion同様、その機能やメカニズムなどは解明されていない部分が多い。そこでDoppelの機能について生化学的に解析し、先行研究より指摘されているDoppelとapoptosisとの関連を含め、Doppelが細胞へ及ぼす影響を明らかにすることを試みている。具体的には、Doppel蛋白質の構造上、蛋白質分解の原因となりうる部位を特定するため、Doppelの様々な欠損mutantを作製し、GFPを付加したGFP融合蛋白質として発現の解析を行った。また、このDoppel蛋白質の分解がユビキチンに関与しているのではないかという仮説を立て、ユビキチン・プロテアソーム系による蛋白質分解を阻害して発現の確認を行った。これまでの検討結果より、HSP70蛋白質が結合し、Doppel蛋白質のポリユビキチン化およびUPS分解に関与する可能性が示唆された。


研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介



主な著書
未来を拓く理数教育への挑戦 奈良女子大学附属中等教育学校 [→Amazon.co.jp]

松田覚,吉田信也(2010年)
図書出版 文理閣
恋愛食 賢い女子中高生のための素敵な食育 [→Amazon.co.jp]

松田覚(2006年)
久美出版
食up to date 食と健康/食と安全/食と環境 [→Amazon.co.jp]

松田覚(2005年)
金芳堂
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研究論文
Dicer functions in aquatic species.

Yasuko Kitagishi, Naoko Okumura, Hitomi Yoshida, Chika Tateishi, Yuri Nishimura, Satoru Matsuda.
J amino acids (2011) in press
Ethanol extracts of black pepper or turmeric down-regulated SIRT1 protein expression in Daudi culture cells.

Yuri Nishimura, Yasuko Kitagishi, Hitomi Yoshida, Naoko Okumura, Satoru Matsuda.
Molecular Medicine Reports (2011) in press
Turmeric and curcumin repressed presenilin1 protein expression in jurkat cells.

Hitomi Yoshida, Naoko Okumura, Yasuko Kitagishi, Yuri Nishimura, Satoru Matsuda.
Experimental and Therapeutic Medicine (2011) in press
Ethanol extract of Rosemary repressed PTEN expression in K562 culture cells.

Hitomi Yoshida, Naoko Okumura, Yasuko Kitagishi, Yuri Nishimura, Satoru Matsuda.
Int J appl Biol pharm Technol 2:316-322. (2011)
Ubiquitin and proteasomes are involved in the degradation of cytosolic Doppel protein.

Okumura N., Yoshida H., Nagata Y., Nishimura Y., Kitagishi Y., Matsuda S.
Int J Curr Res .5:38-40. (2010)
奈良近郊で販売された野菜などに含まれる硝酸態窒素量測定および簡便で効果的な除去法の検討 

井関詩緒、吉田仁美、奥村奈央子、松田覚  
日本家政学会誌 
61:813-817(2010)
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担当科目
学部 大学院(博士前期) 大学院(博士後期)
【専門科目】
分子生物学
病態医化学
食健康論
生活健康学基礎実験
生活健康学概論
健康医化学
健康医化学演習
分子生活習慣病論
分子生活習慣病論演習
【全学共通科目】
文章創作ゼミ
医学と健康
生活のアイデアと発明



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奈良女子大学 生活健康学専攻 Copyright © Department of Environmental Health, Nara Women's University.