森本 恵子 女性健康医科学研究室
Morimoto Keiko laboratory
専門分野
健康科学、環境生理学、食欲・食嗜好の科学、代謝・内分泌学、循環器内科学
研究内容

1)女性における精神性ストレス時の循環調節反応に対する女性ホルモンの影響
2)女性の脂肪嗜好性に対する女性ホルモンの作用とそのメカニズム
3)精神性ストレス時の昇圧反応に対するエストロゲンの抑制作用とそのメカニズム
4)エストロゲンの糖代謝・脂質代謝に及ぼす作用とそのメカニズム

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研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介


研究の背景と特色
  精神性ストレスや高脂肪食による肥満はどちらも動脈硬化のリスクファクターである。女性ホルモンであるエストロゲンは抗動脈硬化作用があるが、その作用機序として精神性ストレス性高血圧と高脂肪食誘発性肥満の抑制作用に着目し、そのメカニズムの解明に力を注いでいる。研究の特色は、ヒトで現象を確認し、モデル動物でメカニズムを検討する点である。これによって、生涯にわたるホルモン変動を考慮した女性の健康増進に寄与するライフスタイルを示すことによって、社会に貢献できると考えている。
 
1)女性における精神性ストレス時の循環調節反応に対する女性ホルモンの影響
 現代社会に生きる女性の健康増進を考える時、女性の社会進出を背景にした精神性ストレスの増加に起因する心血管疾患などの健康障害は大きな問題であり、女性のストレス抵抗性を高めるライフスタイルのあり方を探る研究が求められている。しかし、これまで、精神性ストレス負荷時の循環調節における性差や、女性ホルモンであるエストロゲンの影響を調べた研究は少ない。
 我々の研究室では、ヒトを対象として精神性ストレス負荷による循環反応、特に血管収縮反応における性差、月経周期や閉経の影響について検討している。血管エコー検査を用いて、ストレス時の血管調節機構に及ぼす閉経の影響を検討した結果、中年女性では、閉経後に血管内皮機能が低下し、精神性ストレス時の上腕動脈収縮反応増加により血流量低下が起こることが分かった。これらの研究は、女性のストレス管理や閉経女性の健康増進に対して基礎データを提供するのみならず、男女の性差を配慮した生活習慣病の予防対策や健康寿命の延長に貢献できるのではないかと考えている。
 
2)女性の脂肪嗜好性に対する女性ホルモンの作用とそのメカニズム
 飽食の時代と言われる現代社会では、日常の食生活で高脂肪食が増えている。本来、脂肪はヒトにとって重要なエネルギー源であり、“ごちそう”には高脂肪食が多い。しかし、ヒトはなぜ高脂肪食を好むのか、脂肪摂取はどのように調節されているのか、肥満は脂肪摂取の調節障害なのか、と言った単純な疑問に対する明快な答えは未だない。女性ホルモンのエストロゲンには抗肥満作用がある。我々は、エストロゲンの抗肥満作用の機序のひとつとして高脂肪食摂取の抑制作用があるのではないかと考え、そのメカニズムの解明を目指している。まず、若年女性と閉経前後の中年女性を対象に脂肪嗜好性に影響を与える要因を調べている。さらに、雌性ラットにおいて高脂肪食投与下でのエネルギー摂取量、摂食関連ホルモン、脂肪酸受容体、摂食関連脳部位などを検討し、脂肪嗜好性に対するエストロゲンの調節作用について検討している。
 
3)精神性ストレス時の昇圧反応に対するエストロゲンの抑制作用とそのメカニズム
 これまで、精神性ストレス時の昇圧反応におけるエストロゲンの抑制作用とそのメカニズムに関する研究はほとんどなかった。我々の研究室では、雌性ラットを用いて閉経モデルを作成し、このモデルでは精神性ストレスによる昇圧反応が増大するが、エストロゲン補充によって抑制されることを見出した。最近、@エストロゲンがストレス時に腎交感神経-レニン・アンギオテンシン系の亢進を抑制すること、A末梢抵抗血管のβ2受容体を介した血管拡張を促進することによって、ストレス性昇圧反応を緩和することを解明している。
 
4)エストロゲンの糖代謝・脂質代謝に及ぼす作用とそのメカニズム
 エストロゲンの抗動脈硬化作用のメカニズムのひとつとして、糖代謝や脂質代謝を改善する作用が考えられる。特に、閉経モデルラットに対するエストロゲン補充はインスリン感受性を改善するが、その機序として骨格筋・脂肪・肝臓の細胞のインスリン情報伝達を活性化することが考えられる。現在、インスリン情報伝達に関与するシグナル分子に対するエストロゲン作用について研究を進めている。


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主な著書
メンタルヘルスを学ぶ---精神医学・内科学・心理学の視点から

村井俊哉,森本恵子,石井信子編著. ミネルヴァ書房, 2015
スタンダード生理学(第3版):第15章 性差

文光堂, 2013
ストレス科学辞典

財団法人パブリックヘルスリサーチセンター, 2011
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研究論文
1.Estrogen replacement attenuates stress-induced pressor responses through vasorelaxation via β2-adrenoceptor in peripheral arteries of ovariectomized rats.

Tazumi S, Omoto S, Nagatomo Y, Kawahara M, Yokota N, Kawakami M, Takamata A, Morimoto K.
Am J Physiol-Heart Circ Physiol. 314: H213-H223. 2018
2.S-equol exerts estradiol-like anorectic action with minimal stimulation of estrogen receptor-α in ovariectomized rat.

NishimuraY, Mabuchi K, Takano A, Hara Y, Negishi H, Morimoto K, Ueno T, Uchiyama S, Takamata A.
Frontiers in Endocrinology. 8: 281. 2017
3.摂食調節における性差と性ホルモンの役割「食欲と食嗜好のサイエンス」

鷹股亮,森本恵子.
実験医学(羊土社)35巻6号 pp. 945-950, 2017(総説)
4.Effects of estrogen replacement on stress-induced cardiovascular responses via renin-angiotensin system in ovariectomized rats.

Tazumi S, Yokota N, Kawakami M, Omoto S, Takamata A, Morimoto K.
Am J Physiol-Regul Integr Comp Physiol. 311(5):R898-R905. 2016
5.Mental stress induces sustained elevation of blood pressure and lipid peroxidation in postmenopausal women.

Morimoto K, Morikawa M, Kimura H, Ishii N, Takamata A, Hara Y, Uji M, Yoshida K.
Life Sci. 82:92-107. 2008
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担当科目
学部 大学院(博士前期) 大学院(博士後期)
【専門科目】
生活内科学
ストレスの科学実習
生活保健学
心身健康学概論T
生活健康学概論
心身健康学研究演習T&U
心身健康学卒業演習T&U
心身医学特論
生活医学演習
生活健康論U
ストレス適応論
ストレス適応論演習
【全学共通科目】



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奈良女子大学 生活健康学専攻 Copyright © Department of Environmental Health, Nara Women's University.