根岸 裕子 健康栄養学研究室
Negishi Hiroko laboratory
研究内容
1)葛蔓からのイソフラボノイド抽出
2)メタボリックシンドロームモデルラットにおける病態発症・進展および予防について
3)肥満およびインスリン抵抗性による排卵障害について
4)脳卒中発症のメカニズムについての一考察

[→研究者総覧はこちら]
研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介


研究の背景と特色
 わが国だけではなく多くの国々において、少子高齢化社会を迎え、要介護高齢者の増加が大きな社会問題となっている。そこで、生活の質、QOLを考える上で、生活習慣病の一次予防は重要な課題である。
 そこで、私たちは、疾患モデル動物を用い、ヒトと酷似した病態で、循環器疾患およびその危険因子について検討を行い、これら疾患の一次予防、特に食について着目している。以下、研究について概説する。
1)葛蔓からのイソフラボノイド抽出
 クズ(葛;Pueraria lobata)は、奈良県の特産物として知られ、秋の七草の一つにも数えられる多年草であり、日本人にもなじみが深い植物である。葛は、日本各地及び東〜東南アジアに広く分布するマメ科の蔓性植物で、生育期には一日で1mも伸びると言われ、その旺盛な繁殖力から、近年は雑草として問題となっており、また、他の樹木などに巻きつき生育の障害となっている。通常廃棄される葛蔓にも種々の栄養分や機能性成分を多く含むことが知られており、その機能性に注目している。その微量栄養素の一つとしてイソフラボノイドがある。大豆に含まれることが広く知られているイソフラボノイドであるが、葛特有なものとしてイソフラボン配糖体であるプエラリンが知られている。そこで、当研究室ではその機能性を明らかにするため、葛蔓粉末よりイソフラボノイド抽出を行っている。
2)メタボリックシンドロームモデルラットにおける病態発症・進展および予防について
 メタボリックシンドロームモデルラット(SP・ZF)を用い、生活習慣病へのUCP2の関与について検討を行った。その結果、血中遊離脂肪酸が高値であることや高血糖、あるいは脳虚血などにより、UCP2発現が過剰に亢進され、活性酸素の産生が促進されていることから、UCP2は活性酸素を介し、あるいは直接生活習慣病に関連する臓器障害保護作用に関与している可能性が示唆された。このことから、脱共役タンパク質と活性酸素に注目し、生活習慣病一次予防、特に罹患後のQOLに大きな影響を与える臓器保護作用を持つ、食品あるいはその成分などを探索し、さらに検討を行い、健康に良い食品の科学的根拠を示し、人々の健康に寄与していきたいと考える。
3)肥満およびインスリン抵抗性による排卵障害について
 近年不妊で悩む人は世界中で増加傾向にある。不妊の原因は様々だが、肥満・インスリン抵抗性を呈する女性の体内でのホルモンバランスの崩れがその一例として挙げられる。
私たちは肥満・インスリン抵抗性に起因するホルモン分泌異常が原因の排卵障害・不妊に葛蔓抽出物が与える影響を検討している。不妊を呈す、メタボリックシンドロームモデルラットにおいて、インスリンによって抑制される性ホルモン結合グロブリンやインスリンと類似した性質を持つIGF-1タンパク発現量について、葛蔓抽出物による影響がみられたことから、葛蔓に含まれるイソフラボノイドを負荷することでインスリン感受性が上昇し、インスリン抵抗性が減弱する可能性が示唆された。今後、植物中の微量栄養素による不妊改善の可能性について興味が持たれる。
4)脳卒中発症のメカニズムについての一考察
 これまでの研究より、ペルオキシソーム増殖活性化レセプター(PPAR)αのリガンドとして働くクロフィブラート負荷により、高血圧を改善することなく脳卒中モデルラットの脳卒中発症・進展を抑制することが確認されている。そこで、脱共役タンパク質に注目し、脳卒中発症のメカニズムについて検討を行っている。脳卒中モデルラットにおいて、PPARαの活性化が起こると、UCP2の働きが正常化し、ATP産生を促し、その結果、エネルギー供給が促進される。またUCP2の正常化により活性酸素産生が抑制されることが示唆された。以上のことより、脳卒中による脳神経細胞損傷を保護する可能性が推察された。


研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介



主な著書
紅茶の保険機能と文化 [→Amazon.co.jp]

根岸裕子、池田克己
4章 紅茶の保険機能 5 血圧上昇抑制効果
佐野満昭 斎藤由美 編著 アイ・ケイコーポレーション2008, 116-122
茶の効能と応用開発 [→Amazon.co.jp]

根岸裕子、家森幸男
第二章 茶の生理活性 7 高血圧予防
監修 伊勢村 護 シーエムシー出版 2006, 87-94
[ →すべての著書を見る ]



研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介



担当科目
学部 大学院(博士前期)
【専門科目】
栄養学実験
人体生理学実習
生活健康学概論
栄養生理論
栄養生理論演習



研究の背景と特色 主な著書 研究論文 担当科目 研究者紹介
奈良女子大学 生活健康学専攻 Copyright © Department of Environmental Health, Nara Women's University.