奈良女子大学理学部 数学科

数と形の不思議な旅(第2回)

奈良女子大学理学部 数学科
平成13年度公開講座

今年もまた、高校生以上の方を対象として数学に関係する簡単で身近な話題をサマースクールの形で紹介致します。

数学の研究者が何を面白いと感じ、どんなことを数学に関する身近な話題だと考えているのか、はたまた、彼らは数学をどのように取り扱うのか等について、暑い最中ではありますが冷房の効いた部屋で、直に話を聞いて何かを感じていただければと考えております。

興味を持たれた方は、どうぞご遠慮無くおいでください。
講演者一同楽しみにお待ちいたしております。

写真・報告のページ


●日程・場所など
◆日時 平成13年8月21日(火)、22日(水)
◆場所 奈良女子大学
◆参加資格 高校生・一般(男女問わず)
◆募集人員 50名
◆受講料 無料
◆交通アクセス こちらをご覧ください
●講演プログラム
8月21日
10:00--12:30 教授 富崎 松代 確率の話
14:00--16:30 助教授 片桐 民陽 視覚の幾何学
17:00--18:00   お茶の会
8月22日
10:00--12:30 助教授 武田 好史 符号と暗号のお話
14:00--16:30 講師 篠田 正人 写像を繰り返す

それぞれの講演のより詳しい内容は、後ろにまとめてありますのでご覧ください。
初日の講演終了後に講演者達と当教室の他の教師等を交えてのささやかなお
茶の会を設ける予定です。


正式のプログラム(pdf形式)

●応募方法
期間 平成13年7月1日から7月31日までに必着の事
方法 郵送の場合は、葉書に、住所氏名(ふりがな)、 学校名と学年高校生のみ)、及び「理学部数学科公開講座受講希望」と明記の上、下記の申込先にお送りください。
  電話またはファックスによる申込をする場合は、下記の申込先へ、「理学部数学科公開講座受講希望」の旨を伝えるとともに、 住所氏名学校名と学年高校生のみ)をご連絡下さい。ただし、電話による受け付けは、平日の10:00--17:00の間のみとさせていただきます。
e-mail による申込はご遠慮ください。なお、8月22日のお茶の会に出席を希望される方は準備の都合上「お茶の会出席希望」と明記してください。
申込先 〒630-8506 奈良市 北魚屋西町 奈良女子大学 理学部数学教室
数学教室 TEL:(0742)20-3369   FAX:(0742)20-3367
理学部事務 TEL:(0742)20-3428
●講演内容

正式の講演内容ドキュメントはpdf形式のものを見て下さい.

以下のものは,残念ながら,HPに載せるのが困難な記号などを省略しておりま
すので,あくまで概略であります.どうかご了承下さい.

富崎 松代 確率の話

1610年頃に発表されたガリレオの論文「サイコロ遊びについての考察」の中に,
友人からガリレオに宛てた次のような手紙が紹介されています.

  3個のサイコロを振ると,目の和が9である組み合わせは,(1,2,6),
(1,3,5), (1,4,4), (2,2,5), (2,3,4), (3,3,3) の6通り,目の和が10である
組み合わせは,(1,3,6), (1,4,5), (2,2,6), (2,3,5), (2,4,4), (3,3,4) の6通
り,共に同じであるのに,経験によると目の和が9となる場合よりも
目の和が10となる場合の方がよく出る. これはどうしてですか.

友人の質問に対するガリレオの答えは, 「目の和が9となる場合の数は25であり,
目の和が10となる場合の数は27である」です.皆さんも同じ答えを得ることが出来
ますか.
確率という概念は古くから知られています.現在でもよく用いられていますが,その
意味は曖昧です.一方で, 確率論は, 集団遺伝学とか, 通信とか, ファイナンスとか,
不確定な現象を解析するための数学の道具として使われています.公開講座で
は, 上記のような古くから知られている確率に関する話題を取り上げながら, 現
代的な確率論に繋がる話が出来ればと思っています.

片桐 民陽 視覚の幾何学

幾何学は、人間の感性の中でも特に、「視覚」を元に論理化され発達してきた学
問である、といわれています。

もし我々人間が、目の前にある風景をそのままキャンバスに留めたい、という欲
求に駆られたときには、いったいどのような手法を用いれば良いのでしょうか?
あるいは、少しいたずら心を持って,いわゆるだまし絵を描いてみよう、と感じた
ときにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、遠近法、あるいは、わざとそれを崩した絵画技法として,アナモルフォ
ーシスと呼ばれる歪み絵の描き方の数学的背景について、幾何学の中でも特に
位相幾何学と呼ばれる研究分野の手法用いた研究について触れたいと考えて
います。

武田 好史 符号と暗号のお話

 ここでいう符号とは+,−の符号(signature)ことではなく,電気通信に使われる
モールス符号などの符号(code)のことである.現代に生きる我々は,遠く離れた
惑星探査機から送られてきた木星や土星などの鮮明な画像を目にしたり,過去
に行われた音楽の演奏をCDなどによりノイズなしで楽しむことができる.これら
は,情報の伝達や保存の途中で紛れ込むノイズをできるだけ減らすことに主眼
を置いていた従来の考え方から,紛れ込んでしまったノイズを除去することに主
眼を置くことへの発想の転換によるところが大きい.そしてこのノイズ除去(誤り
訂正符号)という新しい考え方は,情報のデジタル化というもうひとつの流れとあ
いまって,上述のように今日の日常生活においてさまざまな形で我々にその恩
恵に与えている.一方,古代ローマの時代から軍事利用されてきた暗号も,近年
の公開鍵暗号やデジタル署名などのあたらしいタイプの暗号の登場により,や
はり今日のデジタル通信社会において非軍事的な新しい役割を担っており,そ
の重要性を改めて述べる必要はないであろう.このように近年実生活においても
その真価が認められたこれら符号暗号も,数学の立場から見ると抽象代数学,
特に有限体の理論の簡単な応用のひとつと捉えることができる.今回の講演で
は符号暗号を例に数学の抽象概念が如何に応用されているのかについて紹介
したい.

篠田 正人 写像を繰り返す

「ある数を2乗する」という操作を考えましょう。この操作を繰り返すと、

  1/2→1/4→1/16→1/256→・・・、
1→1→1→1→1→・・・、
2→4→16→256→・・・


と、あるものはどんどん小さく、あるものは変化せず、またあるものはどんどん大き
くなっていきます。このように、ある規則に従った操作を繰り返すとき対象物が「収
束する」「動かない」「発散する」のはそれぞれどのような場合か、またどのようなも
のに収束するか、などを調べてみることにします。
操作の対象として数、集合、グラフなど様々なものを扱います。例えば縮小写像の
繰り返しによってフラクタル集合が現れます。「テント写像」を繰り返すとカオス現象
と呼ばれるものを見出すことができます。「ライフゲーム」とはグラフにある変化則を
定めたときどのような初期状態だと消滅しないかを調べる問題です。こうした「規則」
と「結果」の因果関係の面白さをこの講義でお伝えできればと思っています。


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