史料十・95  昭和十四年度 大陸旅行ニ関スル書類 教務課

 

報告者 : (教師4名の氏名省略)

昭和14年9月30日付け、日田権一校長宛。

報告目次 : 一、参加生徒  二、出発前の行事  三、日程  四、見学事項  

        五、生徒事務分担  六、健康状態  七、一般感想  八、会計報告  九、生徒旅行記三冊

・旅行の手配は、南満洲鉄道株式会社大阪鮮満案内所(大阪市東区堺筋安土町)

14年8月18日付けの「文・理・家事科第四学年満鮮修学旅行案」(引率教員から校長宛)

・引率教員 5名(上記報告者)

参加生徒 : 第二十八期生文科24名中17名、理科22名中13名、家事科47名中37名。 即ち、全科生徒93名中、参加者67名、不参加者26名(うち朝鮮人・中国人が6名)。

参加者  

文科17名 : (氏名省略)

理科13名 : (氏名省略)

家事科37名 : (氏名省略)

 不参加者 

  文科7名:  (氏名省略)

  理科9名:  (氏名省略)

家事科10名:  (氏名省略)

 

日 程

8月21日(月)

07:00寄宿寮発、07:50奈良駅発、京都〜米原〜13:26敦賀着、敦賀気比神社参拝、16:13敦賀出帆(はるびん丸)

 

822日(火)

終日船中、船中宿泊。

 

8月23日(水)

03:30起床、05:00朝食 06:00清津上陸、清津神社参拝、清津港見学、08:00商工会議所で佐保会員が茶菓を接待。 08:20清津駅発 20:53牡丹江駅着

宿泊:文科理科は周防旅館、家事科24名は立花屋旅館、家事科13名は笑福旅館。

 

8月24日(木)

05:00起床、06:55牡丹江駅発、19:00ハルビン駅着。モストワヤ街の名古屋旅館宿泊。

 

8月25日(金)

10:00旅館発、バスに分乗。10:40 満洲開拓青年義勇隊哈爾浜特別訓練所・満蒙開拓哈爾浜訓練所を見学、16:00まで。名古屋旅館宿泊。

「訓練所見学は、満蒙開拓事業の計画と実施に関する大体の概念を得し点に於て、また日満共同一如の精神的自覚をうながされし点に於て、得るところ極めて多かりき。」

 

8月26日(土)

08:30旅館発。哈爾浜市内外見学。バス3台に分乗。建国記念碑。帝国領事館、哈爾浜神社(下車)、中央寺院、忠霊塔(下車)、志士の碑(下車)、小林向後二烈士の碑(下車)、孔子廟(下車)、極楽寺、露人墓地(下車)、ロバート高地より市街展望(下車)、伝家甸、松花江沿岸、埠頭公園、ヨットクラブ附近、キタイスカヤ。11:00旅館着。12:40哈爾浜駅着。18.39新京駅着。日本橋通り6丁目の旭旅館宿泊。「設備、待遇、食事すべてよろしからず。次回の旅行に於てはかかる旅館を選定せざるを可とす。」

 

8月27日(日)

08:10旅館発。08.25関東局着。関東局視学官大貫正より満洲に於ける日本人教育の方針等を聞く。

09.10関東局発。バス3台に分乗して新京市内外を見学。関東軍司令部、忠霊塔(下車)、児玉公園、寛城子戦跡(下車)、南広場、旧国務院、仮皇居遥拝(下車)、清真寺(下車)、満人場内、大同広場、満洲中央銀行、新京特別市公署、大同公園、経済部、民生部、専売総局、建設中の動物園概観、中央観照台、南嶺戦跡記念碑(下車)、大同学院、大陸科学院、総合法院、交通部、国務院、其他の官衙外観。

 

8月28日(月)

08:15大連着。バス3台に分乗して大連市内外見学。山の茶屋にて大連俯瞰(下車)。忠霊塔参拝(下車)、大連神社、遺骨大仏、資源館(下車)、星ヶ浦(下車)、露天市場(下車)、支那芝居瞥見、東和長油坊(下車)、碧山荘(下車)、大連埠頭(下車)。16:00旅館着。18:00扶桑仙館にて佐保会員より支那料理の接待。信濃町の錦水旅館宿泊。旅館は「設備、待遇、食事等すべてよろし。

 

829日(火)

07:10旅館発。07:45大連駅発。09:12旅順駅着。戦跡見学。白玉山骨祠、表忠塔、記念館(下車)、東雞冠山北保塁、松樹山保塁、水師営会見所、二〇三高地、博物館。17:10旅館着。錦水旅館宿泊。

 

830日(水)

03:00起床。04:00旅館発。05:10大連駅発。13.08奉天駅着。15:03撫順駅着。バス3台に分乗。15:35露天掘着。17:45撫順駅発。18:55奉天駅着。江ノ島町の温泉ホテル宿泊。「設備待遇甚だ不良。次回の旅行に於てはかかる旅館の選定は避くべきなり。」

 

8月31日(木)

09:00旅館発。バス3台に分乗して奉天市内外を見学。忠霊塔(下車)、博物館(下車)、北陵(下車)、同善堂(下車)、北大営、奉天城内。13:00旅館着。17:30旅館発。瀋陽大飯店で佐保会員より支那料理の饗応。温泉ホテル宿泊。

 

9月1日(金)

08:00朝食。09.45奉天駅発。17:02安東駅着。宿泊は、家事科は元宝旅館、文科と理科は日の出旅館。いずれも設備、待遇等極めて良好。

 

92日(土)

0700朝食。08:40安東駅発。14:40平壌駅着。平壌府内見学。平壌神宮、七星門、博物館、乙密台、玄武門、永明寺、浮碧楼、大同江船上で佐保会員より茶菓接待。宿泊は幸町の朝日旅館。「設備、待遇良なり。」

 

9月3日(日)

11:20平壌駅発 20:30京城駅着 三重旅館宿泊。「設備などはあまりよろしからず」。

 

9月4日(月)

08:30旅館発、京城府内見学、南大門、朝鮮神宮(下車)、博文寺(下車)、東大門、経学院(下車)、昌慶苑(下車)、同秘苑、総督府(下車)、徳寿宮李王家博物館(下車)、15:10朝鮮ホテル着、佐保会員33名による饗応を受ける。三重旅館宿泊。

 

95日(火)

07:10旅館発。07:55京城駅発。16:16大邱着、乗り換え。18:48慶州着。柴田旅館宿泊。

「柴田旅館は静かにして気持よく、待遇又中々よし。一同頗る満足せり。」

 

9月6日(水)

08:50旅館発。慶州古蹟見学。太宗武烈王陵(下車)、五陵、鮑石亭、鶏林(下車)、瞻星台、月城、石氷庫(下車)、雁鴨池、臨海殿、皇龍寺址、芬皇寺(下車)、博物館。11:50旅館着。13:00旅館発、バス3台分乗。13:30仏国寺着、仏国寺見学、14:08仏国寺発。15:00石窟庵着、石窟庵見学。19:10仏国寺駅発、21:56釜山駅着、23:30金剛丸出帆。船中宿泊。

「金剛丸は冷房装置あり、ハルビン丸に比してはるかに感じよし。但しボーイの待遇甚だよろしからず」。

 

97日(木)

07:15下関着。08:30下関駅発。19:25大阪駅着、20:00天王寺駅着。21:57奈良駅着。

22:30帰校。途中下車、職員生徒ともにあり。奈良駅に校長以下教授15名の出迎えあり。

 

見学より得たる収穫(←教師から)

イ 満洲の全体的把握

 文献的知解による満洲の実地的検証以外に、更にひろき立場にたちて、日本人として、学生として、女高師生徒として、情意的に深き理解を得たるが如し。この理解は言説的表現をはなれて、旅行生の心意に深く残存するものにして、満洲国に対する親近性などは、その心意の表面に現れたるものといふべし。空間的距離を精神的に近め得たるは今回旅行の大なる収穫といひ得べし。

 新興(建国)途上の満洲と日本との関係

満洲国はまさに建国の途上にあり、建設・完成を急ぎつゝある国なり。こは今回の旅行中到る処に目撃したる事実なり。この新建設、新整備に当つて、如何に日本人の力が参与しあるか、また今後とも如何にその参与が必要なるか、それを如実に目撃し得たり。満洲国は日本人の力、ことにその精神力の参与なくして国となり得ざる国といふべし。こゝに日満一体の真義は存す。この真義を発揮せんとする信念と自覚が、在満邦人の心中に横溢せるをまざまざと見て多大の感動を受けたり。満蒙開拓哈爾浜訓練所に於て示されたる「満蒙開拓青少年義勇軍綱領」

  我等義勇軍ハ天祖ノ宏謨ヲ奉ジ心ヲ一ニシテ追進シ身ヲ満洲建国ノ聖業ニ捧ゲ神明ニ誓テ天皇陛下ノ大御心ニ*ヒ奉ランコトヲ期ス

の精神は、実は在満邦人の等しく抱ける精神なることを察知し得たり。

ハ 満洲建国に捧げられたる先人の犠牲的努力に対する感謝感激の念 

これはいたるところに仰ぐ忠霊塔に得たるはもとより、ハルビン郊外志士の碑、小林向後二烈士の碑、旅順の戦跡、さては新京に於ける寛城子・南嶺の戦跡、奉天城門等に見る先陣の犠牲の血の痕に接して今更の如く感謝の念感激の念にたへず、我々も亦銃後国民としての至誠奉公を思はざるを得ざりき。ことに牡丹江より哈爾浜までは国境戦に傷ける傷病兵士と同車し、又現に国境に向つて送らるゝ軍事自動車を満載したる貨車と行きちがひ等して一入この感を深くしたり

ニ 地理的収穫

1 清津港の大観

2 車窓より見たる地理的景観

3 北満と南満との比較対照

4 各都市の地理的特色、ことにその時代的発展相

5 満人鮮人の生活様相の瞥見

ホ 歴史的収穫

朝鮮見学は予期以上の収穫を収め得たりと信ず。ことに平壌、京城、慶州に於ける博物館見学は、内鮮交渉に於ける古代文化史料に豊富に接し得る点に於て逸すべからざるものなり。特に楽浪出土品、木槨、磚槨等に就いては小泉教授令弟平壌博物館長たるの便を以て十二分に見学し得たり。慶州は土地自体がすでに博物館にして、歴史的、考古学的興趣に富めり。その他奉天の満洲国々立博物館、旅順博物館の新彊省出土のミイラ、中部アジアの土俗資料の如き、いづれも貴重なる歴史上の参考品たるを失はず。とまれ古代朝鮮と日本との関係の認識に於ける効果は朝鮮経営に於て没すべからざるものなり。

ヘ 講話より得たる感銘

1 ハルビン丸船中の満洲移住協会参事鈴木虎雄氏の満洲移民・青少年義勇軍に関する講話。

2 哈爾浜訓練所に於ける諏訪氏並びに飯島所長の講話。

3 新京関東局に於ける関東局視学官大貫正氏の満洲国に於ける日本人教育の方針と現状講話。

4 旅順戦跡案内者の感激的講話。

5 慶州博物館長大阪金太郎氏の慶州に関する講話。かゝる現地講話は印象極めて深ければ、旅行中の計画としてなほ多くを予定するを可とす。

 

 少数の生徒の健康に異状が見られた原因として、

1.疲労

2.旅館の惣菜。@海老フライ等の信用できぬもの A蒲鉾類を生のままつけてある場合 Bよせ煮の如き、先客の残り物をまはせるやの感ありしもの C厨に於て既に蝿類のたかれるもの(旅館の設備は便所を一見して明なり)

 

満鮮旅行一般ニ関スル感想(教師による)

一、          清津ヨリ牡丹江、牡丹江ヨリ哈爾浜迄ノ二日ニ亘ル旅ハ一見単調ノ如ク見エレド、豆満江流域ノ鮮満国境地帯ノ対照的ナ地勢、北満ト南満トノ森林ト平野等、全ク異ル風物ニ接スル事ニ依リテ満洲ニ対スル認識ヲ正シクスル事ガ出来ル。殊ニ牡丹江附近ニ於テハ緊迫セル国境地帯ノ軍事行動ノ反映サレテ居ルヲ感ジタ。要スルニ有益ナ旅デアツタ。然シ北海汽船ニ依ツテ清津ヨリ旅ヲ始メルノ必要ナク、釜山ヨリ朝鮮ノ見学ヲ先ニシ図門ヨリ哈爾浜ニ至リ大連ヨリ神戸ニ帰ルモ一法デアル。

二、          今回ノ旅行ハ酷暑ニ戦ツタ旅デアツタ。ハルピン市ニ於テ朝十時頃マデ涼味ヲ感ジタノミデアル。其ノ上各地デ水道飢饉ニ出会ヒ、赤痢ト腸チブスノ流行中デアツタ。故ニ新京ヨリ帰校スルニ至ル迄五名又ハ三名ノ患者ヲ同道スルニ至ツタ。主トシテ酷暑ト疲労トニ依ルモノデアル。旅行ノ期日トシテハ九月一日頃ヨリ始メルヲ善シトス。最モ五月モ適当ナル時デアロウ。

三、          敦賀清津間ノ航海ハ極メテ平穏デアツタ。船客ハ満員ニシテ、三等船客ハ船室ノ狭隘ト炎熱トニ苦シミ、一般ノ船客ハ労働者、職業婦人ヲ主トスルヲ以テ、其ノ睡眠ノ姿勢ハ正視スルニ堪ヘズ、船内ニ乗込ノ移動警察員モ風紀上生徒ノタメニ心配スル由ヲ明言シタ程デアツタ。関釜連絡船ハ北海汽船ニ比較シテ稍善良ナル設備ヲ有スルモ三等船室ハ極メテ狭隘ニシテ、船員ノ生徒ニ対スル態度ハ不遜ヲ極メタ。要スルニ船ハ生徒ハ二等船客トスル必要アルヲ認ム。汽船ハ交通機関ト旅館トヲ兼備スルモノト見ルベキデアル。

四、          鉄道ハ満洲鉄道モ朝鮮鉄道モ共ニ三等車ノ設備宜シク内地ノ鉄道旅行ヨリモ愉快デアル。殊ニ生徒ノタメニ一両ヲ連結シ、一般ノ乗客ヨリモ三十分早ク改札シ入場ヲ許ス故ニ極メテ気楽ニ乗車シ得ル。故ニ団体ハ早ク停車場ニ到着シ速カニ鉄道案内所ノ団体掛ニ通告スルヲ要ス。鉄道案内ハ駅弁ノ買込其他一切ノ相談ト世話ニ応ジ極メテ親切デアル。乗車時間ノ部分的変更モ絶対ニ不可能ナラズ、前日ニ申込メバ、鉄道案内ニ於テ便宜取計フヤウデアル。

昼食ハ宿泊セル旅館ヨリノ弁当、駅弁当共ニ衛生的ニモ栄養上ヨリ見ルモ完全トハ認メ難キ点アリ、列車食堂ニテ調理直後ノ物ガ安全ト考ヘラレル。列車食堂ハ乗車ノ時ニ申込メバ一般食堂ノ時間ノ中間ニ団体ノタメニ食物ヲ準備スル。大体五十銭見当デアル。

五、          鮮満旅行案内所ヨリ紹介スル旅館ハ善悪不統一ノヤウデアル。要スルニ旅館ノ現状ヲ知ラズ単ニ其ノ名声ノミニ依リ機械的ニ交渉決定スルヤウデアル。奉天市ノ温泉旅館ノ如キハ其ノ適例デアル。現在満洲ニ於テハ住宅ト旅館トノ欠乏甚シク、従テ旅館営業者ニ於テモ改良改善ノ意思ヲ有セズ。奉天市温泉旅館、新京旭旅館ハ絶対ニ避クベキデアル。案内所紹介ノ他ノ旅館ハ大体ニ於テ適当ト考ヘラル。然シ各地ノ佐保会員ニ依頼シ旅館トノ下交渉ヲ行ヒ、旅館ヲ指定シテ旅行案ノ作成ヲ鮮満旅行案内所ニ依頼スルヲヨシトス。

六、          鮮満旅行案内所ハJapan Tourist Bureau ノ一部デアツテ一悉ノ旅行計画ト交渉トヲ無手数料デ引受ケルカラ此レヲ利用スル事ガ最モ便利デアル。旅行先各地ノ案内所員ハ完全ナ連絡ニ依リ旅行一切の世話ヲシテ呉レル、例ヘバ遊覧バスノ準備、名所案内等案内所ヲ離レテハ効果的ナ見学ハ困難デアル。特ニ大連ヤ奉天等ノ案内所員ハ最モ要領ヲ得タ説明振デアツタ。故ニ旅館ノミヲ指定シテ其他一切ノ旅行計画ヲ案内所ニ依頼スル事ガ最モヨカロウト考ヘル。

七、          旅装ヲ洋服ニシタ事ハ効果的デアツタ。旅行携帯品ハ少量ニシテ一個ニ纏メエルヲ必要トスル。各地ノ旅館デ一昼夜デ洗濯物ヲ仕上ゲルカラ着替モ二枚位デ足ルト思フ。土産品モ買ハヌ事ヲ原則トスル必要ガアル。此レハ手荷物ヲ旅館カラ駅ニ運搬スル時自動車賃ヲ七円くらい要求スル場合ガアル、各自ガ手荷物ヲ運ビ得ルヤウニスベキデアル。生徒ガ輸入禁制品例ヘバ外国製ノ煙草ヲ買ハズ又親族等ヨリ自宅ヘ持帰リヲ依頼サレヌヤウニスベキデアル。此レハ税関ニテ問題ヲ起シ、万一脱税シテ途中デ発見サレル場合ニハ一行ノ行動ハ停止サレ、学校ノ名誉迄モ害スル事モアル。生徒ノ靴モハイヒールハ旅行ニハ適セズ。合外套ト洋傘ト両方必要トスル。今回ハ大連一日、奉天二日、安東一日、大雨ニ出会ヒ、其ノ結果感冒患者ヲ出シタ。

八、          旅行団員名簿ヲ要求サレル場合ガアル。汽船ニハ移動警察憲兵等ガ乗込ミ、列車ニハ移動警察、憲兵、警乗兵、警備兵等ガ乗込ンデ居ル。此レ等ノ者ガ交代スル毎ニ名簿ヲ要求シ旅行日程ト旅行目的トヲ尋ネル。故ニ名簿ニ日程大略ヲ附シタモノヲ二十部以上準備スル必要ガアル。列車乗込員ノ中ニハ何等連絡ナク又学校ノ性質モ知ラズ其態度モ極メテ不遜ナル者モアリ不愉快ナルコト甚ダシ。彼等ニ応対スル必要上引率教官ノ官等位階等モ名簿ニ明記シ、文部省ノ旅行許可書ノ写等モ添ヘテ置クガヨイト思フ。奉天カラ安東ヘノ途中ニ列車乗込ノ警乗長(日本人デ陸軍上等兵位)ガ生徒ノ旅行日記全部ノ提出ヲ要求シタ。旅行日記ノ如キモノヲ提出サセル事ノ権利ヲ彼等ガ有スルカ否カハ別問題トシテ、全生徒ガ提出セザル時ハ生徒ノ手荷物ヲ検査シ其レニ要スル時間ノタメニ一行ノ行動ニ故障ヲ生ズルモ其ノ責ヲ負ハヌト広言シタ。彼等ノ態度ヲ語ル一例デアル。最モ中ニハ親切ナ者モアリ、一行ノタメニ沿線ノ風物ノ説明ノ労ヲ取ツタ者モアツタ。