平成21年度卒業式並びに学位記授与式
 

平成21年度卒業式並びに学位記授与式が、下記のとおり挙行されました


(学部卒業式)

 日時 平成22年3月24日(水) 午前10時

 場所 本学講堂

 卒業者数 文学部 174名

        理学部   179名

        生活環境学部 158名

           計      511名

 


(大学院学位記授与式)

 日時 平成22年3月24日(水) 午前11時30分

 場所 本学記念館講堂

 修了者数 大学院人間文化研究科

        博士前期課程 166名

        博士後期課程   32名

           計      198名

 

   

学部卒業式における学長式辞は、以下のとおりです。


≪学長式辞≫

 皆さん、希望に満ちて、本学に入学したあの頃を、憶えていますね。

 あれ以来、様々な研鑽と経験を積み、所定の単位を修得し、本日ここにめでたく卒業の日を迎えられました。ご来賓の名誉教授の先生方と共に、本学の役員、教職員一同は、皆さんの卒業を心よりお祝い申し上げます。また、本日付き添ってこられた家族の方々、あるいは遠くで、皆さんの晴れの姿を思い描いておられるご家族・ご親族の方々にも、お祝いを申し上げます。
 奈良女子大学は、1909年5月に開校した奈良女子高等師範学校を前身とし、1949年、新制の国立大学として発足しました。従って、本年度は、奈良女子高等師範学校の誕生から百周年、奈良女子大学誕生から60周年という節目の年に当たります。昨年5月には、盛大な祝賀会が行われましたが、この会場にはそれに参加した人も多くいると思います。

 皆さんは、この記念すべき年に本学を卒業されることになります。

 さて、卒業式は、学校制度の中での、ひとつの課程を終えた事を確認し、記念する場でありますが、これは、終点ではありません。これまで研鑽を積んできたことの、ひとつの区切りに過ぎません。そして、明日からは、新しい世界に入っていくことになります。
 本日は、卒業後、直ちに実社会に出ていく人や、更に大学院に進み勉学を続ける人など、様々な進路を持つ人たちが一堂に会していますが、確実に言えることは、皆さん全員が、いつかは実社会に進出していくということです。実際、この百年の間に、多くの先輩が社会に進出し、活躍してきました。皆さんも、遅かれ早かれ、その戦列に加わり、社会の多方面において活躍してくれることを確信しています。

 皆さんは、今、新しい世界への期待と同時に、未知の世界に対する不安も持っていることでしょう。経験のないことに不安をもつことは当たり前のことです。誰でもそうです。しかし、皆さんは、奈良女子大学で育った学生です。
 本学には、若い女性の集団独特の華やかさの根底に、「質実剛健」とでも呼ぶのがふさわしい「しっかりとした、芯の硬い」堅実な学風が根付いていると思っています。本学では、女子高等師範学校以来、伝統的に、「何でも女子がやる」、あるいは「やらねばならない」、という教育環境を提供してきました。時代とともにその形は変わっても、基盤は変わっていません。そして、自分たちがなんでもやる事を日常的に経験する内に、それが自然に身についているはずです。それが社会に進出してから、真価を発揮します。

どうか自信を持ってください!

 新しい門出に際し、皆さんには、前向き思考プラス思考で人生を送ることを勧めます。プラス思考の一例として、「全ての経験は、人生にとって役に立つ」という考え方があります。
 皆さんは、これから様々な経験を積み重ねるでしょう。中には「全く無駄で時間の浪費だった」と思いたくなるような経験もあるでしょう。しかし、そういうときに「無駄なことだと分かっただけでも、今後の役にたつ」と考え直す思考法です。そうすると心が落ち着き、次への意欲もわいてきます。また、「自分は運が悪い」と思うよりも、「自分は運がいい、運が強い」と思うことや、「不幸なことを列挙する」よりも、「幸せなことを列挙する」など、いろんなプラス思考の方法があります。これからの様々な経験の中から、自分なりのプラス思考を見つけ出してください。そして、このプラス思考を武器に、少し難しいことに挑戦してください。今できることだけをやっていては、現状維持のみで、進歩はありません。「一歩前に踏み出すこと」が大切です。「難しそうだ」あるいは「出来るかどうか分からない」という仕事や課題に果敢に挑戦してください。そして、難しいと思っていたことをやり遂げることで、更なる自信が生まれ、それが次の進歩の基盤になるのです。皆さんにはその潜在能力が十分にあります。

 さて、男女平等を謳う日本国憲法が発布されてから、約50年経った1999年に、ようやく「男女共同参画社会基本法」が制定されました。今年で、ちょうど10年経ちます。男女が、それぞれの特性を活かしつつ、共同で社会を形成していくという、当たり前と思われることも、女性がいったん社会に出てみると、目に見えない壁、ガラスの天井と呼ばれるものにぶつかると言われています。しかし、それらは、女性の皆さんの活躍で、徐々に減少していきます。

 皆さんは「啐啄同時」という言葉をご存じでしょうか?

 鶏の卵が孵化する時、卵の中で雛が殻をつつく音を「そつ)」といい、母鶏が外から殻をつつくことを「啄(たく)」といいます。この両方の動作が同時に行われることで、うまく卵から雛が出てくることができます。「男女共同参画社会基本法」は、母鶏が外から殻を破ろうとする試みにたとえられますが、その時、同時に、卵の中の雛も自ら殻を破る努力、即ち、皆さんが社会に出て、古い殻を打ち破ろうと努力する事が必要です。そして、その努力を支援する社会環境が徐々に形成されつつあります。皆さんの努力は必ず報われると信じて、活躍してください。

 ところで、皆さんは先ほどまで、この舞台の緞帳をご覧になっていたことと思います。この緞帳は、1983年にこの講堂が完成したとき、本学の同窓会である佐保会から寄贈されたものですが、その原画は、文化勲章受章者で、奈良女子高等師範学校を総代で卒業された小倉遊亀画伯が、御年87歳の時、本学のために描いてくださったものです。画面中央の大きな桜の古木に、満開の桜の花が描かれたこの原画は、作者自身から「爛漫」と名付けられました。「春爛漫」の爛漫ですね。緞帳が初めて披露されたときに本学にお出でになった小倉先生は、集まった学生達に「この桜の花は皆さん達ですよ!」と、原画に込めた思いを熱く語ってくださいました。小倉先生が、ひとひらひとひらの花びらを描きながら、皆さんに送ってくださった熱い思いを、卒業に際し、あらためて心に刻み込んでください。

 最後に、先ほど述べたことを、もう一度繰り返します

 「プラス思考を武器に、一歩前に踏み出しましょう!」

 これを、卒業に際しての励ましと、はなむけの言葉として皆さんに贈ります。これからの新しい世界で、皆さんが生き生きと活躍する事を期待しつつ、本日のお祝いの言葉と致します。

 

平成22年3月24日  奈良女子大学学長 野口 誠之

 

 
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