平城京跡出土の墨から膠のコラーゲンを検出しました (3/1)
 

 

 本学と独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所(所長 松村恵司、以下奈文研)は、平城京跡出土の墨から膠(にかわ)のコラーゲンを検出しました。これは、本学古代学学術研究センター(センター長 舘野和己)及び古代史・環境史プロテオミクス研究創成事業本部(代表 中澤隆)と、奈文研・考古第一研究室(室長 小池伸彦)による連携研究協定に基づく共同研究の成果です。

 今回分析した資料は、平城京左京二条二坊の南を走る、二条大路の南路肩に掘られた濠状遺構から出土した墨の小片です。年代は8世紀前半〜中頃のものです。地下水に浸った状態で発掘されました。墨はこの時代から現代に至るまで煤を膠で固めて作っています。膠の成分はコラーゲンというタンパク質で、アミノ酸の並び方が原料の動物ごとに異なる遺伝子によって決まっているため、その並び方を調べることで原料動物の区別ができます。コラーゲンは水に溶ける上に腐りやすいので、到底残っていないと思われましたが、約10 mm3の墨のかけらを生化学的に処理した後、質量分析装置で測定を行った結果、多くの微生物由来のタンパク質の中からコラーゲンの断片が検出できました。

 コラーゲン断片の質量分析の結果から、膠の原料動物はおそらくウシであると考えられます。この結果は膠の製法についての正倉院文書の記述と一致していました。このように1300年前の水に浸かった墨の中にコラーゲンがわずかながらも残っていたことから、墨で書かれた古文書はもちろんのこと、遺跡から出土した木簡や墨書土器などからも膠のコラーゲンが検出できると期待が膨らみます。さらに仏像のような文化財の接着剤に使われた膠など、古代文化に関わりの深い「膠」を指標とした歴史研究を進めています。

   
 
         
         
 
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