奈良女子大学文学部<まほろば>叢書を創刊しました

 

 奈良女子大学文学部では、研究の活性化と研究成果の社会への広報を目的として、このたび「奈良女子大学文学部<まほろば>叢書」を創刊することとなりました。
その第1号として、『大学の現場で震災を考える』が4月初めに、かもがわ出版より発刊されます。これは、昨年6月、文学部で開催した「東日本大震災ウィークin奈良女子大学文学部、授業の中で震災を考える」に参加した授業をもとに編集されたものです。
「<まほろば>叢書」は、今後さまざまなテーマについて、年に2冊のペースで刊行される予定です。

 

『大学の現場で震災を考える―文学部の試み―』(かもがわ出版)

 教育・研究機関としての大学に、とりわけ文学部という社会・文化・言語・人間に関わる教育・研究を行う場所においてできることは、この東日本大震災について講義の中で学生たちと共に思考することではないだろうか。
 文学と震災が接点がないようであることなども他の震災本とは異なる内容となっています。難しそうなテーマではありますが、高校生にも読んでもらいたいため、できるだけ分かり易く書いた1冊です。

  【目次】
   はじめに 「<震災>ウィーク」の企画について     文学部長 三野 博司
   T 共感の遠近法
      「共感の遠近法」と「罪なき罪悪感」                柳澤 有吾
      震災から見つめなおす人間と社会                天ヶ瀬正博
      震災とフランス文学                         三野 博司
   U 歴史に見るフクシマ
      戦後日本政治と原子力――ヒロシマからフクシマへの必然 小路田泰直
      震災と娯楽――文化に何ができるのか             鈴木 康史
      日本古代の震災記事                        舘野 和己
   V 脱原発は可能か
      東日本大震災で、日本の社会は変わるのか          栗岡 幹英
      震災と現代スポーツ――記号化するスポーツと地域社会   甲斐 健人

     


奈良女子大学文学部<まほろば叢書>の発刊にあたって

全地球を覆う市場と情報のシステムが至るところで綻び始めている時代にあって、「文学的知」はどのように行く手を照らす光となりうるだろうか。いかなる知であれ、その成果はけっして声高にではなく、明朗にして涼やかなる声で、発信されることをみずから望んでいる。いにしえより国の<まほろば>であった古都奈良の学府から、わたしたちは新しい声をあげたいと思う。人間のいとなみとその歴史について、また社会と言語にかかわる事象をめぐって、わたしたちはたゆみない考究と思索の実践、その交換と伝授につとめてきた。深い学理と精密な論証を必要としながらも、同時に人間的な肌のぬくもりや息づかいをたいせつにしたいと願う知の研鑽こそが、わたしたち文学部が追求しているものである。そうした現場からうまれた、ささやかなしかし力の結集である成果をお届けしたい。

2012年2月
文 学 部 長   三 野 博 司    

 

         
 
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