奈良女子大学

 

平成24年度入学宣誓式
 

平成24年度入学宣誓式を、下記のとおり挙行しました

(学部入学宣誓式)

 日時 平成24年4月4日(水)午前10時

 場所 本学講堂

 入学者数 文学部 188名

         (うち編入学者数 16名)

        理学部   205名

         (うち編入学者数 15名)

        生活環境学部 158名

         (うち編入学者数  7名)

 

           計      551名

 

 

(大学院入学宣誓式)

 日時 平成24年4月4日(水)午後1時30分

 場所 本学記念館講堂

 入学者数 大学院人間文化研究科

        博士前期課程 169名

        博士後期課程   24名

 

           計      193名

【学部入学宣誓式】  
   

 

<<学長式辞>>

 新入生の皆さん、奈良女子大学ご入学おめでとうございます。本日ご来賓の方々とともに、本学の役員、教職員一同は、皆さんの入学を心より歓迎致します。また、本日付き添ってこられたご家族の方々、あるいは遠くで皆さんの晴れの姿を思い描いておられるご家族・ご親族の方々にも、心よりお祝い申し上げます。

 今日から皆さんは、名実ともに、奈良女子大学生となりました。

 さて、皆さんは先ほど、本学音楽部の先輩達のコーラスを聴きましたね。あれは紹介にあったとおり、1909年に開校された奈良女子高等師範学校の校歌です。今から103年前の4月、第1期生77名が入学し、希望に満ちた学生生活を開始しました。当時は、「女性に学問や高等教育はいらない」という社会風潮のもとで、最高学府である既存の帝国大学は、女性の入学を認めていませんでした。後から創立された東北帝国大学が、初めて女性の入学を認めましたが、それを非難する教育行政機関や男尊女卑の社会からの強い逆風で、長続きしませんでした。従って、そのころ既に開校されていた東京女子高等師範学校(これは現在のお茶の水女子大学の前身ですが)それと奈良女子高等師範学校の2校のみが、当時の我が国における、女性のための最高の国立高等教育機関でありました。

 第二次世界大戦終戦後、我が国の民主化の中で新制大学が多く創立され、女性の大学進学にも路が開かれました。多くの先人のご尽力により、1949年5月に、奈良女子高等師範学校を基盤として、文学部、理家政学部を持つ、国立奈良女子大学が発足しました。その後、学部、大学院の拡充改組を重ね、今では、文学部、理学部、生活環境学部と、これら3学部を基盤とする大学院人間文化研究科(博士前期課程2年、博士後期課程3年)を擁する総合大学に発展してきました。本年度の入学者総数は、開校当時の約7倍の人数となりました。皆さんは今、そのどれかの学部に入学し、大学生活を送ることになります。

 皆さんは、これから様々なガイダンスを受け、自分で受講計画を立てなければなりません。自分で大学生活を設計しなければなりません。しかし、それは大学生の誰もが経験する自立への第一歩です。大学の授業内容は、高校に比べて急激に難しくなっていきます。うっかり遊び呆けていると、あとで悔やむことになります。常日頃の積み重ねを大切にしてください。
 本学では、皆さんに対して、受動的・消極的な勉強方法から抜け出し、自分の目標をもって、能動的・積極的に勉学や研究に臨むことを期待します。本学は女子大学ですから、実験や実習などでも、女子学生の皆さん自身が自分達で何でもやらなければなりません。しかし、それは、逆に、自分達が中心になって何でもできるということでもあります。そして、それらの経験の積み重ねが、将来、自立して社会で活躍できる実力と自信をつけてくれます。実際、本学に対する社会からの評価の高さは、毎年の高い就職率に現れています。女性の自立心を養う教育研究環境、それが奈良女子大学の特徴のひとつです


 そのような教育研究環境の中で、皆さんには、卒業までに必ず何かの専門的知識を身につけてほしいと思います。それが、将来社会で活躍するための基盤になります。一方、専門分野を越えて、芸術や科学を見渡せる幅広い視野を持つように努めてください。我が国では、高校までの教育において、受験勉強を効率的に行うため、「文系」と「理系」に生徒を分けてしまい、そのときの分類に自分自身が一生とらわれてしまうという、非常に特殊な教育環境の中にいます。しかし、人間の適正や興味を単純に2分割することはできません。人間はそれほど単純ではありません。そこで、文系の分野に入学した人は、理系の分野に目を開いてください。逆に、理系の分野に入学した人は、文系の世界に目を開いてください。専門外の分野を知ることは人間性の幅を広げてくれますし、専門外ですから、気楽に接すればよいのです。このことは、栄養バランスの良い食事をすることで、健全な身体が作られていくことに例えると分かりやすいと思います。

 また、グローバル化された世界の中で、国際的な視野を持つために、外国語も積極的に学んでください。外国語は単なる外国の言葉という意味だけではありません。その国の文化・歴史・習慣が反映されているものです。特に、実務的な国際共通語としての英語、あるいは道具としての英語は、理系・文系に関係なく学ぶことを強く勧めます。自分が理系と思っている人は、「英語は文系」と単純に思わないでください。実際、多くの理系の先生方や大学院生は、英語の論文を読み書きし、国際会議などで英語を使って発表をしたり、議論をしたりしています。外国語の勉強は若いときが一番効率的・効果的であることは言うまでもありません。チャンスを逃してはいけません。

 ところで、大学時代は、多くの人々との出会いの時でもあります。良き友人、先輩、尊敬できる先生方に巡り会う時代でもあります。独りの世界に閉じこもらず、クラスやサークル活動を通じて、多くの人たちと交流しましょう。友人の大切さは、よく分かっていると思いますが、近隣地域の友人に限られていた高校時代までとは異なり、様々な地域性を持つ同級生が、日本全国から、あるいは世界各地から、この入学式に出席しています。異なった国や地域で育った友人と知り合うことも楽しいことであり、自分の視野を広げてくれます。

 さて、季節はちょうど春、構内でも桜のつぼみがふくらみ始め、皆さんの入学を迎えています。皆さんは、式典が始まる前に、この舞台の緞帳をご覧になりましたね。この緞帳は、1983年に、この講堂が完成したとき、同窓会である佐保会から寄贈されたものですが、その原画は、文化勲章受章者で、奈良女子高等師範学校を総代で卒業された小倉遊亀画伯が、御年87歳の時に本学のために描いてくださったものです。画面中央の大きな桜の古木に、満開の桜の花が描かれたこの原画は、作者自身から「爛漫」と名付けられました。「春爛漫」の爛漫ですね。緞帳が初めて披露されたときに本学にお出でになった小倉先生は、最後に「この桜の花は皆さん達ですよ!」と、原画に込めた思いを熱く語ってくださいました。小倉先生がひとひらひとひらの花びらを描きながら、皆さんに送ってくださった熱い思いを、再度、十分に鑑賞し、堪能し、心に刻み込んでください。そして、卒業するときに、皆さん一人一人が、古き伝統を持つ奈良女子大学という古木に咲き誇る満開の花となるよう、有意義な大学生活を送ってくださることを期待しつつ、私の式辞と致します。

平成24年4月4日  奈良女子大学学長 野口 誠之



   
【大学院入学宣誓式】  
   

 

 <<学長式辞>>

 皆さん、奈良女子大学大学院ご入学おめでとうございます。本日ご来賓いただきました方々とともに、本学の役員、教職員一同は、皆さんの入学を心より歓迎致します。また、本日付き添ってこられたご家族の方々、あるいは遠くで皆さんの晴れの姿を思い描いておられるご家族・ご親族の方々にも、心よりお祝い申し上げます。

 さて、既にご承知の方も多いと思いますが、大学院の入学宣誓式を行うこの記念館講堂は、本学を象徴する建物であり、現在、国の重要文化財に指定されている由緒ある建物です。今から103年前の1909年4月、新しく開校された奈良女子高等師範学校に、第1期生77名が入学し、希望に満ちた学生生活を開始しました。そして、少人数から出発した奈良女子大学も、今では、文学部、理学部、生活環境学部と、これら3学部を基盤とする大学院人間文化研究科(博士前期課程2年、博士後期課程3年)を擁する総合大学に発展してきました。

 さて、21世紀は「知識基盤社会」と言われ、新しい知識・情報・技術が、政治・経済・文化をはじめ、社会のあらゆる領域での活動の基盤として、重要性を増してきます。特に国立大学は高度な基礎研究とそれに基づく高等教育による人材養成を通して、社会に貢献する役割を担っています。国立の女子大学である本学は、国立大学としての役割とともに、特に、高度な専門知識と能力を有する女性人材養成の拠点としての役割を持っており、男女共同参画社会の中で自立して活躍できる優秀な女性人材を数多く社会に送り出してきました
 本学の博士前期課程は、学部と直結し、より高度な専門教育を行います。これまでの学部時代とは異なり、一層、能動的・積極的に勉学に励むことを期待しています。修士論文を仕上げる過程で、研究や仕事とはどういうものかを実体験し、その経験を生かし、更に高度な研究を行うために博士後期課程に進学する、あるいは高度専門職業人として、社会に進出し、自立して活躍することを期待します。
 博士後期課程においては、高度な専門研究とともに、小規模大学を生かした学際領域や、文系・理系を融合した領域での応用研究など、幅広い分野で優秀な教員が教育研究に携わっています。博士後期課程の学生は研究者の卵です。場合によっては、研究者そのものです。目的意識をしっかり持ち、どのような大学院生活を送るかを、自ら考えてください。指導教員は皆さんを手助けするのであり、あくまでも皆さんが主体的に研究に取り組まなければなりません。狭い世界に閉じこもらず、視野を広げてください。

 大学院時代には、結婚・出産・育児や、家族の介護などを経験することもあるでしょう。本学では、女性のライフサイクルを考慮した、様々な支援を行っています。職業を持つ人や、育児や介護で時間が必要な人には、標準の在学期間を延長して在学できる長期履修制度があります。女性教員と大学院生がともに助け合う「女性研究者共助システム」もあります。在学中の様々な問題に対しては、独りで考え込まず、学生生活課や周りの女性教員に相談をしてみてください。
 また、大学院には、多くの留学生も入学されています。留学生の皆さんにとって、歴史も習慣も言葉も違う外国での生活には、大変な苦労があることと思います。私にも、研究者として外国で暮らした経験がありますので、よく分かります。しかし、せっかく日本に来て学ぼうとしたのですから、どうかその気持ちを忘れないで、勉強に、研究に励んでください。また、周りの人たちも、自分がその人の国に行ったらどうなるだろうかと考えて、できるだけ助け合ってください。助け合う気持ちは、日本文化・習慣の中でも際だった美徳の一つであると言われています。これまでの留学生の多くがそのことを実感し、指摘しています。

 さて、大学院においては、先人の業績をしっかり学ぶ必要がありますが、一方では、常に、自らの頭で考えることも非常に重要です。これを、中国古代の思想家「孔子」は、次のように述べています。
 「学んで思わざれば、即ち、くらし」
つまり「お勉強ばかりしてないで、自分の頭で考えなさい」と言うことです。しかし、
 「思いて学ばざれば、即ち、あやうし」
つまり、「自己流で考えているだけで、先人の業績を学ばなければ、独善に陥り、危ういことになる」つまり「独自性と独善性は違いますよ」と言うことですね。
 また、大学院での勉強や研究は、楽しいものばかりではありません。むしろ、大変で、苦しいときもあります。自分と専門分野が合わないのではないかと悩んだりすることもあるでしょう。しかし、大変さ、苦しさを乗り越えたとき、「研究は楽しい」「創造的な仕事は楽しい」と思えるときが必ず来ます。それがあるからこそ、大学教員を始め多くの研究者は研究が続けられるのです。そして、皆さんがそれを味わったとき、皆さんも研究者の仲間です!

 最後に、「少年老い易く学成り難し」という諺があります。大学院の在学期間は、あっという間に過ぎてしまいます。博士前期課程や博士後期課程を修了し、男女共同参画社会の中で、自立的に活躍できるためにも、皆さんの大学院生時代が有意義であることを祈りつつ、私の式辞といたします。

平成24年4月4日  奈良女子大学学長 野口 誠之

 

 
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