平成25年度奈良女子大学大学院学位記授与式 学長式辞

 

 博士前期課程149名、博士後期課程21名、合計170名の大学院修了生の皆さん、ご修了おめでとうございます。名誉教授の先生方、佐保会副理事長、佐保短期大学長、放送大学所長、育友会会長にはご臨席を賜りまことにありがとうございます。奈良女子大学の教職員一同は、ご来賓の方々と共に、皆さま、本日ご同伴されましたご家族の方々、また各地で本日のご修了をお喜びのご親族の方々に、心よりお祝いを申し上げます。
 「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を養うと共に、深く真理を探求して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」。これは、平成18年12月に改正された教育基本法における大学の役割です。昭和22年に施工された旧来の教育基本法にはこの項目はありませんでした。学校教育法では、大学院は「学術の深奥をきわめる」場所とされていますの
で、今から7年前に、大学が「奥の院」から現実に引き出された瞬間です。平成18年の12月に皆さんは何をしていましたか。高校生から大学生の間ですね。平成19年から日本では人口の減少が始まっていますので、「大学よ、奥にいないで、社会に出てこの危機に対処してくれ」というメッセージです。このメッセージの影響を強く受けたのが、皆さんの世代です。
  日本では現在50%の人が大学に進学します。男性が少し多いですが、男女比は大きくは違いません。大学院はまだ少数派です。男女25名ずつ同数の50人クラスで、大学院へ進学するのは男性2名、女性は1名です。真のエリートとしての活躍が期待されているわけです。 博士前期課程の修了者は、研究を主体的に行う方法を身につけたと思います。
 博士後期課程の修了者は、今後学者として大成できる可能性があるというレベルに到達しました。皆さんは今「学問」の入り口に入られました。学問は人類がもつ崇高な能力です。例えば、スポーツの分野でオリンピックに出場できることは大変名誉なことです。無論それには、高度で粘り強い鍛錬が必要です。学問の世界も同様で、高度で粘り強い鍛錬の後に、すばらしい成果が現れてきます。フランスの生化学者パスツールは「チャンスは準備したものに微笑む」といっています。皆さんの中から、本学の名誉となる傑出した人物が出てくれることを期待しています。
 修士は2年、博士は3年ですが、せっかく奈良という場所とご縁ができたのですから、是非学生時代の思い出を、奈良とリンクして記憶してください。皆さんはコンパクトな形になった学位記を授与される最初の学生です。消費税が5%から8%になる3月の修了生です。思い起こすと3・11の東日本大震災は丁度3年前でした。人間の力はか弱いものだと知りましたが、一方復興の活動を通じて人間の人を思う力は強力であることも知りました。
 学問の進歩は本来個人的な営みですが、近年は多くの人が協力して推進するタイプも増えてきました。価値のある論文を通じて社会に貢献すること、それが皆さんの使命です。そして学問のすばらしさを後輩に伝えていくことも重要です。
 最後になりますが、奈良女子大学大学院人間文化研究科において切磋琢磨された皆さまが、今後、知能・品格ともすばらしい指導者に成長されることを祈念してお祝いの言葉といたします。

平成26年3月24日 奈良女子大学長 今岡春樹



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