令和2年新年互礼会を開催しました(1月6日)

 皆さま明けましておめでとうございます。これから年頭の挨拶として、昨年を振り返るとともに、今年の予定と希望を申します。
 平成31年そして元号が変わり令和元年は、第3期中期目標中期計画期間の4年目でした。第3期は、第2期までと運営費交付金の配分方法が変わりました。議員連盟のご努力で、2期までの1%削減はなくなりました。代わりに重点支援の枠組み@ABの各グループ内での競争で配分することになりました。第3期1年目から3年目までは、自ら設定した戦略指標の達成度によりグループ内の順位が決定し、それによって再配分額が決定していました。実際の影響が少なかった3年間でしたが、4年目の平成31年度で、この再配分方法が劇的に変化しました。それまで戦略指標による資源配分の原資は国立大学法人全体の運営費交付金の1%である100億円でした。平成31年度では戦略指標分は3倍の300億円とされました。さらに共通指標が導入され、配分原資は700億円とされました。原資の総額が10倍の1,000億円となりました。そして、配分率はプラスマイナス10%とされました。来年度令和2年度は、戦略指標が250億円、共通指標が850億円、合計1,100億円で、配分率はプラスマイナス15%ということが最近知らされてきました。
  共通指標ですが、今年度と微妙に変化しています。共通の評価指標に基づく相対評価による配分は、以下の3つのカテゴリの指標によります。
(1) 教育の成果に係る指標では、卒業・修了者の就職・進学等の状況等です。
(2) 研究の成果に係る指標では若手研究者比率と常勤教員当たり科学研究費獲得額・件数等です。
(3) 経営改革に係る指標では会計マネジメント改革状況と人事給与マネジメント改革状況等です。
 重点支援の枠組みAの15大学での争奪戦になります。戦略指標の評価、共通指標の評価が次年度の予算を決めますので、本学を含め各大学必死です。
 一方、法人化して後の3評価は残っています。法人評価、7年に一度の認証評価、それらの評価に必要な自己評価を行う必要があります。令和2年度は法人評価の4年目中間評価と認証評価の周り年です。対応をよろしくお願い致します。
 もう一つ重要なことがあります。第3期の4年目が終わろうとしていますので、第4期に向けた活動が始まりました。具体的には「徹底対話」と呼ばれるもので、第4期の学部学生定員の規模を決める作業の出発点と認識しています。この背景には18歳人口の減少があります。現在18歳人口が117万人います。昨年の出生数は86万人でした。今後18年間で30万人減少します。国立大学の総定員は10万人弱(9.6万人)です。その3倍の規模でマーケットが縮小します。
  大学教育は時間がかかります。修士課程までを考えますと6年です。卒業生が社会で評価されるのに最短で4年として、10年かかります。私は、第4期に仕掛けをして、それが成功したことが分る第5期に元気でいる。その姿を「生き残り」と想像しています。そうすると今が生き残りのラストチャンスです。
  私はここ2年以上をかけて、奈良教育大学との法人統合、そして本学での工学部設置の計画を立てて進んできました。今度の徹底対話での本学の武器は「女子大学の工学部」です。そして追い風としているのが「奈良カレッジズ」による奈良で学ぶ魅力アップと留学生増加による奈良で学ぶ魅力アップです。皆さんの積極的応援をよろしくお願いします。
 
一方で附属学校園の問題があります。18歳人口の減少の波は、附属学校園により早くやってきますので、問題は深刻です。魅力アップのためのチャレンジが必要です。第3期に残された時間は2年ですが、法人統合の国会審議の前にプランを作る必要がありますので1年の猶予しかありません。
 もう少し話すことがあります。まず新年俸制です。今年度中に制度を作り、4月からの新規採用教員は新年俸制を適用する。令和4年4月の第4期開始時には、原則全教員が新年俸制を適用するという方針で動いています。最大のポイントは基本給もボーナスに相当する業績給も完全に評価と一致させるということです。また、新年俸制導入は運営費交付金の配分に関係する共通指標の評価の一項目です。
 次に修学支援新制度です。新制度の導入で従来授業料免除を受けていた学生が受けられなくなるという事態が発生していました。年末の通知ではっきりしてきました。令和2年度以降の日本人入学者は配慮されません。私費留学生、大学院生、既に入学している学部学生は配慮されます。この修学支援新制度には適格大学という考え方があり、令和2年の4月からは事務局長を除いて、外部理事を2名採用することが必須となりました。そのことも大きな変化の一つです。
 もう一つ入試改革についてお話しします。ご存知の通り、「大学入試英語成績提供システム」の導入見送りがあり、国語・数学の記述式問題の実施を延長することとなりました。もともと、「生きる力」の確保、そして「確かな学力」を持つための考える力の涵養が必要であるとのことが出発点でした。そして、従来の大学入試にその元凶があり、それを正すことが正義だとされました。もはや「入学した大学」で人生が決まる時代ではないのですが、振出しに戻りました。大学が反省すべき点と改善すべき点が多々あると思います。
 
 最後に昨年良かったことを三つ述べて終わりにします。
 一つ目として、文科省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」に本学が選定されました。女性研究者が沢山活躍することは国の力の源です。二つ目として、本学創立110周年を祝うことが出来ました。また、なでしこ基金創立百十周年記念事業特定基金へ多額のご寄付を頂きました。ありがとうございます。三つ目ですが、お茶の水女子大学と結果としては同時にトランスジェンダー学生の受け入れが可能になりました。今後大学院生や留学生へ拡張していきます。
  長々とお話してきましたが、「変化の激しい時代です」しかも相当根の深い所に変化が表れています。例えば電子マネーです。アイデアは身近なスーパーのポイントですが、そのポイントが国の通貨よりも高く信用できれば、所持するのはその電子マネーになります。信用という根の深い所で変化が起きているのです。例えば変化のスピードが10倍の速さですと、100年つまり3世代で経験する変化が10年で訪れます。その変化に対応していくのが今の状況です。何もしないのでは何も生みません。挑戦して始めて成功や失敗があります。
 本学のチャレンジに対して重ねて皆様のご協力をお願いして、年頭の挨拶にいたします。

令和2年1月6日 奈良女子大学長 今岡春樹