令和4年度秋季大学院入学宣誓式を挙行しました(10月1日(土))









 

 皆様、奈良女子大学の大学院人間文化総合科学研究科にご入学おめでとうございます。大学の教職員一同は、皆さまのご入学を歓迎いたします。また、本日の皆さまのご入学をお喜びのご家族、ご親族の方々に心からお祝い申し上げます。入学者は博士前期課程6名、博士後期課程5名で、合計11名です。
 本年4月1日をもって新しい国立大学法人が発足しました。名前を奈良国立大学機構といいます。一人の理事長の下に二人の学長がいることになり、この法人の下に奈良女子大学と奈良教育大学が従来通りの形で置かれることになります。
 さて、学士課程の4年間は、多くの場合青春の迷い道にトラップされます。プライドとの格闘で、自分のプライドとうまく付き合う術を手に入れるまで時間がかかることがあります。博士前期課程、博士後期課程と進むにつれ、ちょうど霧が晴れるように自分の進む道が見えることがあります。皆さんは大学院に入学されたのですから、既にそのような経験をお持ちでしょう。自分の進む道が分かったとして、次に大切なのは学問上の業績になります。
 幸福を得るチャンスは人によらず平等に訪れますが、細菌学者パスツールの言葉で、「チャンスは準備をした者に微笑むと」言われます。私の尊敬する人で、既に亡くなったのですが、スポーツ用品や靴のメーカーで「アシックス」の創業者である鬼塚さんがいます。鬼塚さんが準備をするということはどういうことかを、次のように言っています。人は誰でも成功して幸せになりたいと願望する。それには、「善なる目標を立てなさい」といいます。利己的でない善なる目標は、使命感につながり、使命感は自己肯定につながる。これが、苦しいときの忍耐力となる。このような前向きの姿を貫くとき、チャンスが微笑むと教えています。「靴でお金を儲けよう」ではなく「世界にない、良い靴を作ろう」を目的にするわけです。
 研究の場合、「世界にない、良い研究をする」となります。そのような目標を持ち続けると、創造の喜び、発見の喜び、何物にも代えがたい歓喜が時に舞い降りるものです。皆さんの1人でも多くが、この研究の喜びを味わってくれることを願っています。
 さて、昨年度から大学院博士後期課程において、従前は考えられなかったことが起こっています。「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」というのが正式名称です。選考された博士後期課程の学生に、研究時間を与えるために生活費相当の支援金を渡すというのです。もう一つ「次世代研究者挑戦的研究プログラム」というのがあり、これも良く似たプログラムです。すでにチャレンジした方もいると思いますが、日本が博士育成の点で大きく変わる時代になりました。
 さて話は変わりますが、今年も昨年に続いて新型コロナウイルスの蔓延があり、今でも進行中です。授業の在り方が、対面が当たり前だったのですが、オンラインやオンデマンド授業が行われるようになりました。これら遠隔コミュニケーションは、遠くまで出かけなくても済むなど長所もありますが、友達など人間関係を築くのが難しいという欠点があります。研究では、他人の意見を聞くことが大切で、どうしても対面授業が大切になります。というのは大学では、特に大学院となればなおさらですが、学ぶ力よりも研究する力、さらに創造する力を発揮することが大切になります。皆さんは大学院生ですので、学力・研究力・創造力の違いを理解するようにしてください。これは榊理事長に教えていただいたことですが、学力とは、「整理された知見を効率よく吸収・消化する力」のことです。研究力とは、「現象の中に不思議を感じ、それを解き明かそうとする意欲や能力」のことです。創造力とは、「身の回りに働きかけ、新たなものを生み出す力」でチーム力も必要になります。学力・研究力・創造力を私は知のトライアスロンと呼んでいます。
 最後になります。日本の古都奈良の地には心をゆすぶる文化遺産がたくさんあります。まずは第74回の正倉院展をお勧めします。但し今年も前売りの日時指定券の予約が必要です。
 この古都奈良で、切磋琢磨され、知能・品格ともすばらしいリーダーに成長されることを祈念してお祝いの言葉としたいのですが、うれしい知らせがあったので一言追加します。NHK奈良放送局の局長が本学の出身者であることは知っていましたが、今日10月1日から4年間、奈良市の副市長に就任される方も本学出身者です。
 以上です。ご入学おめでとうございます。

令和4年10月1日 奈良女子大学長 今岡春樹