平成30年9月卒業式並びに学位記授与式を挙行しました

 

 学部卒業生4名、大学院博士前期修了生15名、大学院博士後期修了生3名、合計22名の皆さん、ご卒業、ご修了おめでとうございます。本日ご同伴されましたご家族の方々、また各地で本日のご卒業・ご修了をお喜びのご親族の皆様にお祝いを申し上げます。
 ご卒業・ご修了は、皆様の人生において幾つかある節目の一つです。節目に当たって一つお願いがあります。ご両親あるいは皆さんを支援して頂いた方に感謝の言葉を伝えてください。「ありがとうございました、おかげで卒業・修了することができました。」この言葉は、頂いた経済的支援についてだけでなく、無事でいて欲しいとの祈りに対しての返礼になります。昨今の自然災害を見るたびに、無事であることのありがたさを感じます。きちんと、口に出して伝えてください。
 卒業されて、さらに進学される方もあると思いますが、多くの方は社会に出られることになると思います。社会に出られるときの心得を先輩としてお伝えしたいと思います。現代社会はストレス社会です。ストレスとうまく付き合う方法をマスターしてください。ストレスをためない方法の秘訣は「お礼とお詫びは早めに」というものです。ただし、注意が必要なのはお詫びです。相手がかっとなっているときは逆効果です。
 このような技法はともかく、今の時代は世界的に「イノベーション」が重要視されています。皆さんご自身がその中央に立つ場合もあり、またマネージメントする場合もあると思います。ここで、イノベーション人材としての3要件をお伝えします。(1)広く深い根底からの知識を持つ。これは、人類が到達している知のフロンティアがどこにありその突破を妨げているバリアが何かを、広い範囲で知っていることです。(2)問題設定能力が高い。これは、解いたときに大きな意味を持つような問題として問題を設定できることです。(3)異なる分野の人とコミュニケーションができる。これは、自分が考えていることの本質を他の専門の人に分からせ、またこの逆に聴いて分かる能力です。一度自己分析をしてみてください。知識・設問・対話の三つです。
 イノベーションの話題が出ましたので、現在進行中の第4次産業革命の話をします。第1次と第2次はエネルギーに関するもので、人類がエネルギーを手に入れ、そして自在に取り扱うことができた、ことを言います。第3次と第4次は情報に関するもので、人類が情報を手に入れ、そして自在に取り扱うことができる、ことを言います。第1次から第4次を象徴する職業があります。順にノッカー・アッパー、工学部教授、プログラマー、データサイエンテスト、です。ノッカー・アッパーは産業革命で工場ができ、出勤という制度が出来たことで必要になった仕事で、朝起し屋さんです。目覚まし時計が普及するまで続いた仕事です。工学部の教授というのも面白いですね。理学という学問はあっても、工学という学問はそれまではなかったということです。最新のデータサイエンテストについては、この仕事の基礎は統計学になります。統計学は長らく日本の大学入試に出題されませんでした。出題されるようになったのは、平成27年度入試からです。この話でお伝えしたかったのは、時代によって重要なことは違うということ、そしてその変化が大変激しくなっていることです。イノベーションと一言で言っても、時代の流れを捕まえることが、大変重要です。
 さて、ありがとうございましたという挨拶に加えてもう一つお願いがあります。同窓会である「佐保会」と生涯付き合ってください。多くの先輩リーダーを見ることで、その生き方に影響されます。そして時がたつと、皆さんが後輩に影響を与えるようになります。その縦の繋がりを大切にすることが貴女たちの人生を豊かにすることを保証します。私は大学の将来像として、大学は青春時代のトレーニングセンターから一生涯のコミュニティセンターに移行していくと予想しています。本学ほど同窓会が充実している大学を他に知りません。是非大切にしてください。
  最後になりますが、私たち教職員は皆さんの成長と活躍が大きな喜びです。この奈良の地で学んだことを、全国に、あるいは母国に持ち帰って伝えてください。皆さんの前にある社会人生活あるいはさらなる学生生活が実り多いことを祈念してお祝いの言葉とします。

平成30年9月28日 奈良女子大学長 今岡春樹