学生の皆さんと保護者の皆様への学長からのメッセージ
−後期から積極的に対面授業を行うことについて−

 本学では8月に新型コロナ感染者の発生がありました。感染者ご自身の早期の回復をお祈りしています。幸いに濃厚接触者は陰性でしたので、感染拡大には至りませんでした。しかし、強い危機感をもって感染拡大の防止策として検査やチェック体制の拡充を検討しております。
 さて、日本全体では、あるいは世界全体で「新型コロナの感染拡大防止と経済活動の再開の両立」が重要な課題になっております。このことは大学の活動に置きかえますと「遠隔授業(オンラインとオンデマンド)か対面授業か」という問題になります。10月からの後期授業に向けて次のように方針を決めましたのでご理解とご協力をお願いいたします。
 前期の授業方針は「対面授業を取り入れながらも遠隔授業を原則」としていました。後期においてはこれを逆転させて「遠隔授業を取り入れながらも対面授業を原則」といたします。その理由は、大学教育では研究を通じて教育を行うフンボルト理念に勝るものはないからです。具体的にはゼミナール型実験室やミニゼミ「パサージュ」など、少人数で対話を重視した教育が最も重要であると考えますが、これを実行するためには「対面授業」が欠かせないのです。これは方針ですのでもちろん強制ではありません。
 幸い本学は小規模キャンパスであるため、入口管理ができます。体温の自動測定と入構者管理を常時行います。また、授業での3密を回避する工夫や生協食堂での食事の際の飛沫防止対策をさらに徹底します。これらは、学内で濃厚接触者を発生させない予防手段ですが、これに加えて万一感染者が発生した場合に、不安感を感じる接触者が迅速にPCR検査できるような対応を検討します。
 研究は未知の知識への挑戦です。既知の知識の習得を目的とした学習とは異なります。大学で身に付ける研究の方法は仮説検証のループを回すことですので、社会での企業活動で役に立つものです。このことは今後も変わりません。一方で企業活動が新型コロナ禍後に大きく変わることが予想されています。例えばテレワークの拡大などですが、学生の皆さん、今この時期に皆さんが活躍する未来社会がどう変わるのか自分で予想してください。このことは「厳密な知識」を探究する研究と並んで高い価値のある「健全な判断」をすることに繋がります。
 繰り返しになりますが、学生の皆さん、保護者の皆様、大学は新しい日常に向けて何ができるか知恵を絞っております。自ら一歩前進をしたいと考えています。ご理解とご協力をお願いいたします。

令和2年8月31日
 奈良女子大学長 今岡 春樹