戸田幹人先生 最終講義のご案内


(2021 2/21)


謹啓

春寒の候、皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

さてこのたび本年3月末をもちまして自然科学系物理学領域の戸田幹人教授が定年退職を迎えられることとなりました。つきましては下記のとおり戸田先生の最終講義を開催致します。


戸田先生は1980年東京大学の工学部をご卒業され、1987年京都大学理学研究科において理学博士の学位を取得され、同研究科の助手にご着任されました。その後、2000年に奈良女子大学理学部物理科学科に助教授として赴任され、200741日に准教授となられたのち、20191月に教授にご昇任されました。奈良女子大学ではこの間、統計力学分野を中心に多数の授業をご担当され、物理領域長をはじめ多くの委員を務めご尽力されてこられました。複雑系の物理学研究室、および現在の非平衡ダイナミクス研究室において、4回生の卒業研究38名、修士課程13名、博士課程2名の学生をご指導され、卒業生も活躍されております。

戸田先生のご専門は、物性基礎論および統計物理学で、非線形動力学とカオス(特に量子系のカオス)、さらに多自由度力学系としての化学反応や生体高分子の理論的研究に取り組んでこられました。戸田先生の研究スタイルの特徴は、非常に多岐にわたる境界領域の問題を積極的に吸収し、物理学の新しい局面を自ら開いておられることです。奈良女子大学に赴任された当初から、分子系を多自由度力学系とみなした動力学的化学反応論やタンパク質の分子動力学計算で得られた数値データに対するWaveletを用いた時系列解析の研究も精力的に行ってこられました。これは、生命現象の解明に物理学の力学系や統計物理学の手法を持ち込み、その成功によって物理学を発展させようという試みです。

また、戸田先生の学生時代からの関心テーマであり、著名な業績を残してこられた量子カオス分野の研究も共同研究者の方々と続けられておられます。量子動力学によって形成される量子絡み合いの統計的普遍性に着目し、それを利用して統計力学を基礎づけるという野心的な研究に現在取り組んでおられます。その研究の副産物として新しいランダム行列理論の構築もおこなっています。研究を進める中で、多変数超幾何関数パンルベ方程式の関係など、新たな数学が活躍する肥沃な研究対象であることが分かってきました。

 さらに、最近では、研究室の学生を巻き込み、インターネット上のテキスト分析を行う社会物理学分野の研究や雨粒の成長といった地球物理学分野(気象学)の研究も進めておられます。位置とスケールの情報をもったWaveletを利用してその成長過程を記述しようという統計物理学的なアプローチの研究であり、さまざまな自然科学分野に活躍の場を広げる21 世紀の物理学のあり方を感じさせる研究ばかりです。


 引き続きご活躍されることと存じますが、ご退職の区切りに記念として最終講義を下記のように開催致します。本来であれば直接お会いできる場を設けるべきところですが、新型コロナウィルス感染対策のため構内への入構等が制限されている状況を踏まえ、最終講義はオンラインでの開催とさせて頂きます。また記念祝賀会を行うことができませんので、記念品代を募り、その贈呈を持って祝賀会に代えさせて頂きたいと思います。ご多忙のことと存じますがよろしくお願い致します。


(2021 3/30)

戸田幹人先生 最終講義(オンライン開催)

2021年3月28() 1630分〜18


最終講義の動画(約460MB, mp4)をダウンロードしてご覧頂けます。




(社会連携センター 森田さん撮影)

                                

                      北海道大学電子科学研究所 小松崎 民樹

                      北海道大学電子科学研究所  寺本 央

                          神奈川大学工学部  窪谷 浩人

                          大分大学理工学部  高見 利也

                          株式会社シナモン  小路口 暁

                      東京大学大学院理学系研究科 冨士 香奈


奈良女子大学研究院自然科学系物理学領域一同

世話人代表 狐崎 創



連絡先  〒630-8506 奈良市北魚屋西町  

      奈良女子大学理学部数物科学科 非平衡ダイナミクス研究室

  メールアドレス: proftoda_sympo@ki-rin.phys.nara-wu.ac.jp