地域志向科目「なら学+(プラス)」が開講中です


 地域志向科目の1つである「なら学+(プラス)」(教養教育科目)が開講中です。 この授業では、県内の他大学、自治体・企業から多彩なゲストスピーカーをお迎えし、様々な視点から奈良の課題や取り組みについて学ぶことによって、問題解決力、提案力を養い、奈良はもちろんのこと、地元に帰っても活躍できる未来の地域リーダーの育成を目指しています。
 今年度は全学部・全回生から179名の学生が受講しています。開講当初は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から遠隔方式(オンライン)のみで授業を実施していましたが、第6回授業からは人数制限を設けたうえで対面方式も取り入れ、学生が受講方法を選択できるようにしています。
 講義スケジュールは下記「1.」の通りです。1コマ90分の授業に、行政・民間双方からゲスト講師をお招きして、多面的なモノの見方を促し、また授業内で学生からの質問をテーマとして講師によるディスカッション行い、奈良の課題について様々な他者と学ぶ授業構成としています。 授業の雰囲気をつかんで頂くため、以下「2.」に第6回『伝統産業B(墨)・地場産業(靴下)への理解を深め、課題を探る』(11/17実施)の授業を紹介いたします。


1.令和2年度なら学+(プラス)授業スケジュール ※都合により、変更となる可能性があります

授業内容 担当教員(ゲスト講師)

1

ガイダンス なら学+(プラス)担当教員・やまと共創郷育センター

2

妖怪博士の『観光立国論』
〜井上円了は明治の奈良で「光」をみたか〜
奈良県立大学 ユーラシア研究センター

3

観光産業への理解を深め、課題を探る (公社)奈良市観光協会・(一社)飛鳥観光協会

4

伝統産業@(林業)への理解を深め、課題を探る 奈良県森林技術センター ・(株)イムラ

5

伝統産業A(薬業)への理解を深め、課題を探る 奈良県薬事研究センター・佐藤薬品工業(株)

6

伝統産業B(墨)・地場産業(靴下)への理解を深め、課題を探る (株)墨運堂・(株)キタイ

7

奈良特産品@(食)の歴史を知り世界に発信するための課題を探る (株)池利・名阪食品(株)

8

奈良の特産品A(柿)を通じた消費の創出、マーケティングを考える 奈良県農業研究開発センター・(合)ほうせき箱

9

奈良の現代産業に聞く (株)ATOUN・DMG森精機(株)

10

女性の多様な生き方・働き方を考える 奈良県女性活躍推進課・損害保険ジャパン(株)

11

これからの地域社会と科学と技術を探る 奈良工業高等専門学校

12

これからの地域社会と生活福祉を考える 奈良佐保短期大学・(福)奈良県社会福祉協議会

13

これからの地域社会と自治体の役割を考える 奈良県観光局・下市町

14

まとめ「課題発見・問題解決・提案力を養う」(1)
なら学+(プラス)受講者へのメッセージ
なら学+(プラス)担当教員・(一財)南都経済研究所

15

まとめ「課題発見・問題解決・提案力を養う」(2)
課題レポートの講評並びに振り返り
なら学+(プラス)担当教員・やまと共創郷育センター

2.授業紹介
「伝統産業B(墨)・地場産業(靴下)への理解を深め、課題を探る」(令和2年11月17日実施)

(1)授業概要

 奈良の伝統産業でもある「奈良墨」と生産量日本一の靴下産業を取りあげ、竃n運堂 松井社長様から、墨の歴史、墨の原料、墨の製造工程、墨の不思議、次世代に向けた取組みについて、また、潟Lタイ 喜夛社長様から会社概要、自社の取組、靴下業界の概要、奈良産地の現状と取組み、奈良靴下も課題とその進むべき方向についての講義を実施した。


(2)学生へのレポート課題と感想(抜粋)

課題@:「墨の需要は減少していますが、未来にどのような分野があると想像されますか?」
 指筆は指につけるという形状が役に立つだけでなく、筆のペン先が柔らかいからこそ上手く力を 入れられない方も弱い筆圧で筆記できるのかもしれないと思いました。もし握力が弱い方にとって筆は書きやすいなら、介護の分野や身体に障害のある方向けの筆記具として墨(筆ペン)は今後 も需要があるかもしれないと想像しました。
課題A:「情報過多の時代にあって、あなたなら奈良の靴下の良さや優位性をどのようにして消費者に伝えますか」
 高級ホテルや旅館でアメニティにして、泊まりのお客さんに持って帰ってもらう。それで認知度アップにつながり、気に入った人は2足目以降も買ってくれるようになると思います。


(3)授業を担当いただいた講師からの意見・感想・メッセージ等

(株)墨運堂 松井社長様から
 墨は我々日本人の DNA に染み込んでいるのではと感じています。現在の主たる筆記具ではありま せんが、芸術表現として書画の世界は確立されておりお稽古事や展覧会活動も盛んです。また昨今 では若い方の漫画やイラストなど書道以外の芸術分野での墨の使用、建築現場での墨の塗装、各種 プロダクツへの墨の塗装、園芸用品、精密機器への塗装などその用途が様々な方面へと拡大してお ります。これらはすべて奈良時代より脈々と受け継いできた墨造りの技術を継承してきたことの賜 物であると考えます。墨運堂は伝統産業としての和墨の技術の伝承、日本人の書く・描く文化の新 しい可能性を追求し、新たな価値・魅力を創造し日本文化へ貢献してまいります。学生の皆様にお かれましてもまだまだ日本の伝統文化・産業は奥が深く魅力的なものも多数ありますので、ぜひこ の機会にたくさん学んでいただき新しい視点で応援いただければ幸いです。
(株)キタイ 喜夛社長様から
 日本の靴下産業についてご理解いただけましたでしょうか?皆さんからいただきましたご意見の中で最も多かったのはSNSを利用した情報発信でした。情報過多の中で、情報の客観的裏付けは大切です。最新技術によって製品の機能を客観的データに置き換えて表現することができれば、靴下の機能性に定性的評価を加えることも可能ではないかと考えます。今後、最新のデバイスと解析技術をもって製品の機能性評価基準が確立されることを願っております。そして靴下の履き心地評価標準により奈良の靴下を指名買いされる日が来ることを願っております。


(4)授業成果(担当教員前川コメント)

 奈良の伝統産業を代表して「墨」に関して創業215年の(株)墨運堂10代目松井社長から、また、奈良の代表的な地場産業である「靴下」業界を代表して日本靴下工業組合連合会理事長でもある(株)キタイ喜夛社長をお招きしてそれぞれ講義をいただいた。業種は異なるものの経営者として自社製品への自信、会社のある奈良への思い、業界としての進むべき将来へのベクトルは共通しており、外部社会との接触の少ない学生にとって収穫の多い授業となった。

授業風景
   
 
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