奈良地域関連 電子画像集 学術情報センター
阪本龍門文庫善本電子画像集  古写本の部


古 事 記
小 画 像
大 画 像

目録番号103
書名古事記
写刊別
冊数3冊
書写(刊行)年代寛永15年
資料サイズ縦27.1僉濂20.0
備考袋綴 後装表紙

 『古事記』はその序文より和銅5年(712年)に成立したと見られるものである。平安時代に遡りうる写本が現存しないことから偽書説も存するものの、上代特殊仮名遣いなどの内部徴証および太安万侶の墓誌銘などの傍証から、現在のところ偽書とは考えられていない。

 『古事記』の写本は約40本あり、もっとも古いと考えられている真福寺本および伊勢系の3本からなる真福寺本系統と、兼永自筆本を祖とする卜部本系統の二つに大別できる。 当該写本は茶色表紙袋綴で、上・中・下の3巻からなる。本文は1面10行15字詰であり、傍訓、返り点、送り仮名および朱筆の傍線(地名)、中線(神名・人名)、若干の追筆補入がある。各冊のおわりに、

(上・中巻)古事記三冊令氏庸遂書功了(但、中巻は庸字の脇に「縄ニ改」)
寛永十五歳次戊寅九月日
(下巻)古事記三冊令氏庸謄写了
寛永十五歳次戊寅九月日一校了
との奥書があり、これにより氏庸本、寛永(15年)写本と呼ばれるが、氏庸(氏縄)たる人物については不明である。
 また当該写本の裏見返しに川瀬一馬氏が、「本書ハ卜部家本の系統伝本にして猪熊家本と密接なる関係あり。田中氏日野角坊文庫旧蔵なり」と記すように、卜部本系に属し、中でも猪熊本と近しい関係にあるものと考えられる。

 山田孝雄氏は猪熊本の複製本(昭和11年〜12年 古典保存会)の解説で、猪熊本を室町時代のものとし、「三巻完備せる本としては真福寺本に次ぐ」と位置づけたが、川瀬氏(『龍門文庫善本書目』昭和57年)は猪熊本の書写は寛永頃を遡り得ないとし、当該写本について「同系統の伝本として本書の方がその書写年次が明らかで且つ伝承が明白なる点に於いて、古事記の伝本研究上貴重なる資料といふべきである」と、当該写本を猪熊本以上に高く評価している。

 ただし諸本関係としては猪熊本の方が当該写本に先行するものと見るのが有力であり、鎌田純一氏(「古事記諸本概説」『校本古事記』昭和40年)は当該写本について、「猪熊本系であることは確かであるが、頭書音注などそれに比して少なく、またその独自の特色からして、直接の親子関係とはみなし難い」としている。
 また植松茂氏(「卜部系古事記諸本系統の研究」『校本古事記』昭和40年)も、各写本の単独異文などをくわしく調査し、当該写本を猪熊本系と位置づけたうえで、当該写本の「祖本が猪熊本と並ぶ位置にあるか、或いは猪熊本から出てゐるかといふ点に疑問が残る」としており、当該写本は猪熊本、あるいは猪熊本の兄弟にあたる本の写本をさらに書写したものと見ておくのが穏当であろう。


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