ひをるなる、 むくづけきこと、 ○人のおもひは (世本のろひごとは)、 をふ物 にやあらん (世本おはぬ物にやあらん十字アリ)、 今こそ見めとぞ、 いひける (世本いふなる) 第九十二 昔、 ほり川の、 おほいまうちぎみと申、 いまそかりけり、 [頭注 世本傍注 ほり川の、 おほゐまうち君 昭宣公基経 貞観十四 年八月廿一日右大臣左大将 〈三十七〉] 四十の賀、 九でうの家にて、 せられける、 (世本日トアリテ屏風二字ナシ) 屏風に、 中将 なりける、 おきな [頭注 おきな 業平十九歳任中将不審] 〈古今賀〉さくら花ちりかひく○も○れ○ [朱まかへ] おひらくの こんといふなるみちまか○ [朱と] ふか○に○ (イ○まて) [朱まとふやに清古] [朱かふかに一本] 第九十三 むかし、 お○ほ○ [朱を] き [朱をとゝ]、 お○ほ○い○ま○う○ち○ぎ○み○と、 きこゆるおはしけり、 [頭注 世本傍注 おほきおほいまうち君 忠仁公、 天安元年、 二月十九日、 太政大臣〈五十五〉四月九日、 従 一位、 二年、 十一月、 摂政 清和外祖] つかうまつる、 おとこ、 なが月ばかりに、 さくらの (世本梅の)、 つ くりたるえだに、 きじを、 つけて、 奉るとて 〈古今〉わかたのむ君かためにとおる花は ときしもわかぬものにそありける [頭注 わかたのむ君か―― 此歌古今集、 太政大臣歌 云々] と、 よみ〈ン〉で、 たてまつりたりければ、 いとかしこく○、 お○か○し○ がり給ひて、 使に、 ろく、 たまへり (世本けり二字アリ) 第九十四 昔、 右近のむまばの、 ひをりの日、 むかひにた○ち○ (世○本○たてたり) ける、 車に、 女のかほの、 したすだれより、 ほのかに、 見え○け○ [朱ゆ] れ ば、 中将なる、 人の (世本なりける男の)、 よみ〈ン〉でやる (世本やりける) 〈古今〉見すもあらす見もせぬ人の恋しき [朱く清古] は あやなくけふやなかめくらさん 返し、 をんな 〈古今〉しるしらぬなにかあやなくわきていはむ おもひのみこそしるへ [朱か一本] なりけれ (世本此文アリ のちは、 たれと、 しりにけり) 第九十五 むかし、 男、 こうろうでん (後涼殿) [朱弘徽殿] のはざまを、 わたり [朱たり] ければ、 ある やむごとなき、 人の、 御〈ン〉つぼねより、 わすれ草を、 しのぶ